最近出た本の中から


常日頃、政治学系の本がブログ界隈で紹介される機会は相対的に少ないと感じているので、優れた新刊などは出来るだけ採り上げたいと思っています。簡単な書評や紹介を書ければいいと思っているのですが、ブログに揚げるとなると何だか多少なりともエネルギーが必要で、なかなかできていない現状です。ツイッターだけで書いてもいいのかもしれませんが、それでは代替できない機能と言うか意義がブログにはあると思いますので、羅列的にでも書いておこう、と。いうわけで、幾つか挙げておきます。

  • 秋吉貴雄/伊藤修一郎/北山俊哉『公共政策学の基礎』有斐閣

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

これは買っただけで、まだきちんと読めていませんが。秋吉先生([twitter:@TakaoAkiyoshi])らによる公共政策学のテキストです。公共政策・政策科学についての入門書は、宮川公男『政策科学入門』をはじめとして既に幾つか存在しますが、本書は新たなスタンダード・テキストになっていくのではないでしょうか。


政策科学入門

政策科学入門


なお、北山先生は間もなく単著を出版予定のようです。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641049895

市民社会とは何か?基本概念の系譜 (平凡社新書)

市民社会とは何か?基本概念の系譜 (平凡社新書)

ツイッターで何度か触れました。市民社会の概念史として、こちらも一種教科書的に読むことができるでしょうが、中身は相当濃いです。幾つもの言語間での翻訳を経て、あるいはそれぞれの時代状況を反映して、概念の指示/意味内容が変容していく過程の探索に触れれば、思想史研究の深みを体感できるかもしれません。また、本書後半部における、戦後日本の市民社会派についての厳しい総括と現代の市民社会論への批判的な眼差しは、いずれも重要なものであると思います。

日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書)

日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書)

出たばかりの本で、ざっと通読したところです。戦後の国会が今のような制度として生まれた経緯から、その後の運用や制度変更、改革論議などを様々な角度・データから論じ、直近の政治状況に至るまで、一貫して国会の制度的特徴とその帰結に着目して検討を加えています。また、英米仏独を中心とする欧米諸国の議会制度についての記述も豊富で、比較の視点を交えながら、あるべき国会改革案の可能性を積極的に提示しています。昨年前半に出版された竹中治堅『参議院とは何か』*1と併せて、現代日本政治を考える上で必読でしょう。


参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)

  • 齋藤純一/杉田敦編集代表「政治の発見」シリーズ、風行社

政治の発見 第4巻 つながる (政治の発見 第 4巻)

政治の発見 第4巻 つながる (政治の発見 第 4巻)

政治の発見 第5巻 語る (政治の発見 第 5巻)

政治の発見 第5巻 語る (政治の発見 第 5巻)

政治の発見 第1巻 生きる (政治の発見 第 1巻)

政治の発見 第1巻 生きる (政治の発見 第 1巻)

政治の発見 第8巻 越える (政治の発見 第 8巻)

政治の発見 第8巻 越える (政治の発見 第 8巻)

政治の発見 第3巻 支える (政治の発見 第 3巻)

政治の発見 第3巻 支える (政治の発見 第 3巻)


最後に、風行社の「政治の発見」シリーズ全8巻が続々刊行中です。
http://www.fuko.co.jp/catalog/ShinYokoku_hakken.html


政治思想・政治哲学系の若手〜中堅の方々が中心的な書き手になっていると思うのですが、政治学以外の分野から参加している執筆者もいらっしゃいます。今のところ田村哲樹先生([twitter:@ttya70])が編者の『語る』しか読めていないのですが、いずれの巻も大変面白そうな論文が含まれているので、早くチェックしたいなーと思っておる次第です。なお、ツイッターにいらっしゃる方では、犬塚元先生([twitter:@inuzukah])や、五野井郁夫先生([twitter:@gonoi])なども参加されています(他にもいらっしゃいます)。


以上、4点。ご紹介でした。

*1:参考までに、書評リンクを貼っておきます。http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=682