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10年前のラノベが好きだったあなたに現在のラノベをオススメする

要するに「昔のラノベと今のラノベで何となく似た要素がある作品を比較して紹介しちゃおう」という記事です。

『涼宮ハルヒの憂鬱』 vs 『いでおろーぐ!』

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

行動力に溢れたヒロイン、その彼女を補佐する主人公、無愛想でぺったんこな少女、ふわふわした美少女、なんだか胡散臭いイケメンと、彼らが所属するよく分からない部活動、そしてヒロインに秘められた能力は世界の危機にまで直結する。『いでおろーぐ』を一巻だけでも読んでいただければ、きっとあなたは「ハルヒだコレー!」と叫ぶだろう
もちろん、パクリに堕しているわけではない。敢えて言おう。『いでおろーぐ』は「新世代のハルヒ」なのである。

『いでおろーぐ』をひとことで説明すると、学生運動をパロディにしたラブコメである。恋愛至上主義の撲滅を掲げるヒロインと、その思想に賛同する仲間たちが、世のリア充に対してアジったりテロったりするという展開だ。
『ハルヒ』の場合、ハルヒの能力が突拍子もない事態を巻き起こすことに面白さがある一方で、その解決に奔走する長門や小泉といったサブキャラばかりが目立って、肝心のハルヒの影が薄くなってしまうことがあった。
しかし『いでおろーぐ』は、「恋愛に反対する二人がどう見ても恋愛している」というおかしみを、しっかりと中心に据えていることで、あくまで二人を主役とした極上のラブコメ空間を保つことに成功しているのである。

破壊的なコメディに叙情的なラブストーリー、それを裏打ちする確かな実力。かつて『ハルヒ』に夢中になった人たちにも、きっと満足していただけると思う。他ならぬ私がその実例である。
(ちなみに『いでおろーぐ』は二巻以降からシリーズとしての体裁が整ってくるので一気に読んだほうが良いと思う)

『フルメタル・パニック!』 vs 『エイルン・ラストコード』

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J)

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J)

『フルメタ』の魅力といえば、細かなミリタリー描写もさりながら、戦場を知り尽くした優秀な軍人が、平和な日本に置かれるとたちまち非常識なトラブルメイカーになってしまうという、そのギャップの面白さが挙げられるだろう。

対して、かつて放映されていたアニメのキャラクター「エイルン=バザット」が、愛機とする人型ロボットと共に「現実」の世界にやってくる、というのが『エイルン』のあらすじである。アニメの世界からやってきたエイルンが、常識を知らないせいで派手な騒動を巻き起こすのは、まさに『フルメタ』を彷彿とさせる。
一方で、エイルンがやってきた世界は、実は「平和な日本」ではない。謎の怪物の侵略により人類の生存圏が脅かされている日本なのである。「戦場」で捨て駒のように扱われ、戦いに疲弊していた少年少女たちを、ヒーローたるエイルンはむしろ「日常」に引き戻し、鍛え直し、そして新たな希望を与えるのである。
さらに、この「アニメからやってきた」という設定にはもう一つのメリットがある。エイルンがどんなに超つよくて超かっこよくても、「アニメのヒーロー」だからそれは当然なのだという、圧倒的な説得力である。

リアルに寄っている『フルメタ』に対して、『エイルン』はファンタジー色の強い作品だが、新旧のロボットラノベとして読み比べてみてはいかがだろうか。

『Dクラッカーズ』 vs 『ヒマワリ』

ヤンキー×ドラッグ×スタンドバトル、なんていう要素を組み合わせたライトノベルが二つもあっていいのか? いいんです!
というわけで『ヒマワリ』は、引きこもりを極めつつある少女が、薬をキメて超能力バトルを繰り広げていたカラーギャングたちの抗争に巻き込まれ、それらをステゴロでぶちのめすというあらすじ。
まあ、主人公のヒマワリちゃんが可愛くて可愛くてしゃーねーんですね。ジャージ、眼鏡、暴力!

『ヒマワリ』の作者は林トモアキ。実のところデビュー時期はあざの耕平と大して変わらないわけで、いまさら新旧対決というわけでもないが、ケレン味のある作風にコアな人気は共通している気がする。
『Dクラ』と違うのは、『ヒマワリ』はコメディ要素が強いという点だが、そこは林トモアキのこと、一枚めくればエグい設定が詰め込まれており、このあたりは成田良悟などを思い浮かべる人もいるかもしれない。

林トモアキ作品は、複数のシリーズで設定やキャラクターが共通していることも、その特徴のひとつである。『ヒマワリ』を気に入ったなら『おりがみ』『マスラヲ』『レイセン』、あるいは『ミスマルカ興国物語』をどうぞ。

『火の国、風の国物語』 vs 『我が驍勇にふるえよ天地』

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

『火風』と言えば、現在の戦記ファンタジー、あるいは最強主人公ブームのさきがけといっても過言ではない名作である。どんなに周到な策略も、強大な魔法も、ひたすら腕力で押し切るアレスの圧倒的な強さに、かつての我々は唖然とする他なかったのである。

そしていま、怨念と復讐の血溜まりから生まれた新たな「天下無双」がひとり、それが『我が驍勇にふるえよ天地』のレオナートである。腐敗した帝国を舞台に、かつて薄汚い策略により第二の故郷を失った皇子がのし上がっていく様が描かれる。

『火風』はいちおうダブル主人公ながら「赤の悪魔憑き」アレスの強さと脆さをとことんフィーチャーした作品だったが、『我が驍勇』の場合はむしろ「吸血皇子」レオナートのその周囲に目が向けられる。いにしえの騎士物語か、それとも演義小説か、美しき天才軍師、剛弓必中の狩人、抜け目のない傭兵隊長、最強の女戦士……数多の英雄豪傑たちが現れ、ときに戦いながらも、やがてレオナートの幕下へと集っていく。
彼らの活躍が生き生きと描かれるたびに、それを率いるレオナートの強さもまた際立つのである。

『ディバイデッド・フロント』 vs 『東京侵域』

『デバフロ』は、ガンパレやマブラヴオルタなどと同じ異種侵略系の作品であり、隔離された戦場に送りこまれて、怪物との死闘を繰り広げる少年たちを描いた往年の傑作である。
『東京侵域』もまた異種侵略の系譜に連なる作品だ。謎の障壁によって外界から隔離され、怪物たちが跋扈して廃墟と化した東京の内側に、少年と少女は大切な人たちを取り返すために侵入せんとするのだ。

一応は主人公たちが学生兵めいた自衛隊員として扱われる『デバフロ』に対し、『東京侵域』の主人公たちは完全なるアウトローである。ただでさえ東京に巣食う怪物たちは会敵すら自殺行為となるほどの凶悪な存在であるのに、加えて犯罪者じみたタチの悪いハンターや、政府機関の戦闘員とも、彼らは戦っていかねばならない。
東京内部のひりつくような緊張感、ひとつの失敗も許されないという危機感、目的のためにすべてを敵に回した主人公たちの決死の「侵域」が描かれるのである。

しかし『デバフロ』は電子書籍でも出てないんだよなー……それもそれで由々しき事態ではなかろうか……。




というわけで、私が言いたいのはですね、実のところどっちの作品が良いとか悪いとかじゃなくて、昔も今も変わらず面白いラノベがたくさん出てますよ、ということなんです。この記事をきっかけに、ラノベを読むのを再開する人が少しでもいたら嬉しいなと思ったりしつつ、大晦日に今年のベスト記事を公開する予定なのでそちらも参考にしてね、と宣伝しておきます。