Bill Evans / I Will Say Goodbye

I Will Say Goodbye

I Will Say Goodbye

  • 1977å¹´5月11〜13日録音。
  • Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Eliot Zigmund (ds)

 1977年、ビル・エヴァンスは、Fantasy レーベルから Warner Bros. へ移籍する。同年5月に録音された "I Will Say Goodbye" は、エヴァンスが Fantasy に残した最後のレコーディングである。しかし、本作が発売されたのは1980年1月のことだ。ピアノ・トリオは(少なくともアメリカでは)売れない。そういう時代だったのである。
 全10曲入り。エヴァンス作曲は1曲のみで、ほかはカヴァー曲またはスタンダード・ナンバーを取り上げている。ビル・エヴァンスのレギュラー・トリオにとって、70年代になってから初めてのスタジオ録音作品ということで、非常に力の入った内容である。音質もそれ以前のものに比べ、格段に向上している。また何よりもエヴァンスのピアノが充実していて、彼の指先は鍵盤の端から端まで縦横無尽に動き回る。一方、エディ・ゴメスのベースは、どういうわけかイコライザーで低域をカットしており、全くベースらしからぬ変な音を鳴らしている。もっともこれは本作に限った話ではなく、同時期に録音されたチック・コリアやマッコイ・タイナーとの共演盤でも、ゴメスはしょぼい音を出しているのだが。
 そんなわけで、トリオのサウンドとしてはかなりアンバランスな出来ではあるが、その分、ピアノが活躍し、不足を補って余りある作品となっているのだ。特に傑出しているのは、ハービー・ハンコック作曲の (2) "Dolphin Dance"。長調と短調が複雑に交錯する曲だが、こんなに美しく演奏されるとは驚くほかない。
 アルバム・タイトルは、ミシェル・ルグラン作曲の曲名から。本作は、同曲の異なるバージョンが2種類収録されており、Fantasy への決別を暗示しているといわれている。
 しかし、本作を発表後、80年9月にエヴァンスは急死。まさか、こんな形で本当の別れが来ようとは誰が予測しえただろうか。