俳句

涼新た

点滴の針の先にも涼新た 胸元に微熱残すや白木槿(むくげ)

秋來る

新聞の小説の罪秋來る

立秋

秋立つや山から海へ抜ける風

溽暑

着ぐるみの中に炎暑の籠りけり 着ぐるみの笑顔の下の溽暑かな

晩夏光

ゆるキャラの出番少なし晩夏光 くるぶしの並ぶ小川や晩夏光

夏の月ほか

夕立止み子等の歓声上がりけり 聖堂に響くオルガン月涼し

夕立

配達のバイクも煙る夕立かな

カレー

むくむくと夏雲伸びる時刻かな 今日もカレー明日もカレーや夏休み

夏草ほか

夏草や寝転んでゐる腕と腕 吊革のとり合いとなる梅雨の夜 世界にはお前と俺と木下闇

紫陽花ほか

裏山に煙の匂ひ迎へ梅雨 東京都北区赤羽時鳥 紫陽花や亡き父宛の依頼状 紫陽花やパンクを唄う女達

母の日

ゆるキャラの日陰に集ふ薄暑かな 麦秋や少し錆びたる引込線 母の日に母の幼き日の写真

立夏

夏立つや妻もおかわりするカレー 鼻歌も半音高く夏来る

行く春

惜春の風の楽しき電車かな 空席を残す電車や春の果 行く春や月夜とシドと白昼夢 行く春や隣の人のIngress 行く春に緑の海へ沈みけり 惜春や青の囲める五芒星

躑躅(つつじ)

葬送の車を送る躑躅かな

春雪

春雪のやがて消えたる傘の端 北からの風に吹かれて春の月 春寒は尻の底から上りけり

菜種梅雨

あと何度会へるだらうか菜種梅雨

桃の花ほか

初花や魔法少女の素質あり 山あいに汽車の音して桃の花 はつ花や早寝するのも今のうち 箸置きも一つ増やして桃の華 丹沢の山並青し桃の花 成りたての父の笑顔や桃の華 花冷や子を抱(いだ)く手のぎこちなさ さくら咲く空の真下に子の寝息

花冷

花冷やヘッドホンからリンダリンダ 花冷や脛に三日月形の傷

啓蟄

啓蟄や髪を染めたる産業医

春浅し

静かなる校長室や春浅し

立春

立春や空の真上に白き月

節分

夜半までに豆を片付け立春を

雪道

雪道を攻むや藤原とうふ店

初詣

駅伝の選手詣づる社かな 本年もよろしくお願いします。

蒲団干す

蒲団猫枕の順に蒲団干す

初冬

初冬や古きロックを聴く牧師

おじや

おじやまで務めおほせる奉行かな

冬すみれ

抜道に猫の親子や冬すみれ

冬来る

電柱の陰に刑事や冬来る

後の月

素面では保(も)たず二度目の後の月 おしおきは三度目までや後の月