神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

日米Wizardry版権史1981-2024

本記事を読む前に、以下の記事を必ずお読みください。

めでたしめでたしと書いたのはそのままの意味で、ウィザードリィの版権問題はもう解決しており、良いところに収まっている、という意見です。
現在の版権はわかりやすい形で約2社に分かれ、彼らは持っている権利を生かし、長年動きの止まっていた一作目のリメイクを行い、そして北米主導のリメイクながらも日本に対しても十分な販売展開を行いました。

限定版の発売に際し、現在権利を保有しているシロテック兄弟も、メディアを通じて日本向けにコメントを発しています。

過去の権利をめぐる動きには一定の疑問を残してはいますが、2024年現在とくに心配するようなことはないでしょう。

そのリメイクの出来に文句があるぞということなら、まあないわけじゃないとして。

今回は現在の話ではなく、「過去の疑問」についての話、ついに書いていこうということです。前の記事を書いたあと、そのような心境になりました。

この記事で書くこと

本記事の目的は、過去に「グレーゾーン」などと呼ばれてきた「ウィザードリィ版権問題」とは何だったのか、それをつきとめることです。それは過去の話です。現在そのグレーゾーンは存在しないものと考えています。
しかし、これは日本だけの認識ではなく、どうも本国北米方面でもよくわかっていないらしいことが、直近のインタビューで明らかになってきています。

1作目『狂王の試練場』のリメイクが2023年に発表されるまで、ウィザードリィ5までの過去作は約20年ほど移植もリメイクもされてきませんでした。その原因はなんであったのか。
その問題が解決していることを今ここで新たに示し、余計な不安を払しょくすることができればよいと考えています。

それから、今後の希望も少しは書くことです。

やはり、憶測をそれなりに含むものとなります。多くの疑問を本記事では提起しますが、その回答があるとは限りません。

続きを読む

ウィザードリィ 旧呪文名の権利の考察

Wizardry Variants Daphneでは、呪文名はこんなふうになってる。

知らない呪文もかなり増えてるけど、ディオスやラツモフィスなどの旧シリーズの魔法が普通に使われてます。

もともとウィザードリィは独特な呪文名(カティノ=敵を眠らせる)が使われていたが、これはウィザードリィ6以降変更され、「スリープ」「ファイアボール」といった普通の英語に変更されたのは周知の通りである。

その後、日本展開では旧呪文名の使用は基本的には避けられていた。それで、この「旧呪文名の使用権」は、どうやら日本企業の持っている版権には含まれていないと、長いこと考えられていた。

この呪文名をめぐる重要な動きとして、2022年に小説『ブレイド&バスタード』で旧呪文名が使われたということがあった。
本作はドリコムから出版され、ウィザードリィのタイトルを冠しているが、ドリコムが持たないウィザードリィ1から5の権利は表記されていない。
つまり、呪文名の使用の問題は解決したのでは、いやゲームじゃなくて小説だから権利が違うのかも、など憶測を生んだが。

ウィザードリィダフネもタイトル画面に「© Drecom Co.,Ltd.」しか書かれておらず、「1から5の著作権」が関わるタイトルではない。ドリコムの権利だけで作られている。
どうやらドリコムが旧呪文名を使うのは問題なくなったようだ。
なくなった?
まず本当に問題なんてあったのか?

現在、ドリコムが旧呪文名を使用していることに問題があるとは考えられません。
今回のお話の結論はこれで終わりです。
これでは終わってない、もっと情報がほしいという方のために、下に情報を用意しました。
しかし以前書いた記事と比べて憶測も多くなっています。責任はご自分でお取りください。

版権の前提を再確認

以下の記事に書いた内容を繰り返しますが、

ウィザードリィに関する権利は、現在2社に分かれて所有されている。
「ウィザードリィ」のタイトルその他の権利と、Wizardry6から8の著作権は、2020年以降は日本のドリコムが持っている。
ドリコムは「Wizardry1から5の著作権」は持っていない。この権利を現在持っているのは「SirTech Entertainment Corp.」(サーテック)。
(また今年になって関連企業と思われる「FRPG Corporation」という名前も発見されているが、今回の記事ではあまり関係ないので気にしないことにする)

「5までの独特な呪文名の使用権」は、現在日本企業が持っていない権利に含まれているのではないかと、従来は考えられていた。
旧版権の所有者と連絡が途絶えていた過去は、一部の例外を除いてこの呪文名を使用することはできなかった、と思われていた。

この解釈が間違いだったというのが、現在の私の見立てである。すなわち「旧呪文名の権利が存在する」という考え自体が間違っていたのではないかと。
だからダフネではドリコムの権利だけで問題なく作れている。そういうことではないでしょうか。

その見立てで軽く調べ始めたところで、権利表記にとんでもない見逃しがあったことに気づいてしまったのだが…
まあ呪文名に関わる部分だけ考えていきましょうか。

ドリコムとサーテックの関係

現在ドリコムは1から5の権利者である新サーテックとは友好的な関係に見える。しかしダフネには1から5の版権は関わっておらず、ストーリーのつながりも一切ない。
つまり、「1から5の著作権」というのはストーリーその他の要素、旧作の移植やリメイクを作るために使う権利であり、呪文名や細かい固有名詞にまでは及んでいないのではないか。
サーテック側から呪文名の権利だけが譲渡されたという話は伝わっていないし、そういう半端な譲渡がされたと考える理由がない。
タイトル画面の表記通り、ドリコムの持ってる権利だけで足りている可能性がきわめて高い。

だが、どこまでが使える権利でどこまでがダメなのか、ドリコムはサーテックに確認できる立場にあるはずだ。だから使用に問題ないことを確認した上で使ってる状態なのではないかと。
すなわち、呪文名の使用だけなら権利表記の必要もないと考えられるが、表記が必要ない形での何らかの合意もされている可能性はある。
なおリメイクを作り始めたタイミングは推定2021年ごろ。その頃にドリコムとサーテックは接点を持っていたはずで、権利の及ぶ範囲についても再確認した可能性は大。ブレイド&バスタードはたまたまその後に発表できたのだとも想像できる。

旧サーテック時代のこと

時は戻り90年代の話。まだ最初の販売元の旧サーテック社が存在していた頃だ。
ウィザードリィ1から5の移植と、アスキーのウィザードリィ外伝シリーズ(外伝1から4とDIMGUIL)では旧呪文名を使っていた。
対して、99年以降に登場したウィザードリィエンパイアなどの日本独自展開のウィザードリィは、アスキーの外伝シリーズを除いて旧呪文名を使っていなかった。(PS版エンパイアはカティノを「カティドレイ」というふうに似た名前でごまかしていた)

とりあえず手元にあったPSの『ウィザードリィ エンパイア ~古の王女~』(2000年)の権利表記。ベスト盤なので2001になってる。
なんか長々と書いてあるが、要はエンパイアは「Wizardryの権利」だけしか表記されていない。ウィザードリィには「1から5」だけでなく、「6や7のシナリオの著作権」も別にあるのだが、本作にはいずれも無関係。
エンパイアは「タイトルの権利のみで旧ウィザードリィらしいゲームを作った」という理解でいいと思う。
この中の「1259190 Ontario」というのは、あからさまに変な名前だが、サーテックの関連会社…みたいなもん。今回はサーテックそのものだと思っておいていい。
で、1259190 Ontarioからライセンスを受けた「Four Winds」を介してスターフィッシュにサブライセンスがおろされている。この時期のウィザードリィの日本展開には、Four Winds(フォーウィンズ)という日本の会社が間に入っているものがあり、サターン版6&7やウィザードリィエクスなどにも記載されていたようだ。

いっぽう、アスキーの本編シリーズ、たとえばGBC版の1(2001年)ならこう。

長い、GBCの小さな箱の側面にびっしり書かれているが、どうやら難しいことは書いてない。
Proving Grounds of The Mad Overlord(狂王の試練場)の著作権はアンドリュー・グリーンバーグとサーテックにある。
WIZARDRYの商標は1259190 Ontarioにある。
また「Copyrighted Program」とあるが、どうも1のプログラム自体の権利がサーテックにあるのかな?それがアスキーにライセンスされ、ファミコン用に提供された。
ファミコン版の翻訳物の権利はゲームスタジオにある、とも書いてあるようだ。
そしてまたプログラムはローカスにライセンスされ、ゲームボーイカラー用に提供された。
最後にGung-Ho!(GBC版の開発元で、パズドラのガンホー社とは別)がGBC版のプログラムを書いた、と。

ともかく、1の移植なのだから、当時アンドリューとサーテックが共同で持っていた扱いと思われる「1の著作権」が当然使われている。
エンパイアとGBC版1の権利を比べると、「WIZARDRY」と「Wizardry」で権利は違うのか、1259190 Ontarioとサーテックで分担が違うのはなぜなのか、フォーウィンズが入ってるとどう違うのか、
不明点はいくつかあるものの、エンパイアとGBC版の重要な違いは「1から5の著作権」が使われているか、だけであろう。
呪文名はたぶんこの「1の著作権」に含まれてるのだ、そのように思ってしまうのはまあ自然ではあった、かも…

呪文名の権利いらない疑惑

…気になって。念のため。持ってないけどヤフオクなどに出ているWizardry dimguil(2000年)のパッケージを確認させてもらったが。
ディンギルの著作権表記は以下のようになってるようだ。

>Copyright ©1998-2000 by 1259190 Ontario, Inc. All rights reserved
>Wizardry is a registered trademark of 1259190 Ontario, Inc. All rights reserved
>Wizardry is a series of copyrighted programs licensed to ASCII Corporation. Modifications for the Playstation format "DIMGUIL"
>Copyright ©1998-2000 by ASCII Corporation. All rights reserved.

旧呪文名を使用しているDIMGUILに、1から5の著作権は使われていない。少なくともそのような表記は無い。
エンパイアと比較すると、プログラムの権利が使われているのと、間にフォーウィンズが入ってないという違いはある。だがそれだけだ。
こうなってるのはディンギルだけではなく、外伝1から4までずっとそうであることが今回の調べでわかった。外伝1のみ、発売時期の関係かロバート・ウッドヘッドとアンドリュー・グリーンバーグの名前が記載されているが、5までの著作権を外伝1に使ったという確認は取れない。
これは素で気づいてなかったですね…

つまり、エンパイアは「タイトルの権利のみで旧ウィザードリィらしいゲームを作った」という理解をしたが、外伝も同じだったんじゃないだろうか?
違うのはアスキーは原作のプログラムの権利を使っているから「らしいゲーム」じゃなくて全く同じプログラムで動いてても大丈夫そうなことだが、呪文名の権利はどうも「1から5の著作権」には含まれていなかった可能性が高い。91年の外伝1から、ずっと。

この件、アスキーが何かを踏み越えていたとはさすがに考えにくい。
旧「ウィザードリィ外伝」は10年近く展開されたシリーズで、90年代後半に復刻もされてるし、その後アスキーはGBC版まで版権をしっかり明記して作ってた。そこを誰も確認してないとは考えられない。
やはり呪文名の使用は「1から5の著作権」に含まれない。その裏付けとして、外伝1からディンギルの版権表記がある。
アスキーはその認識でやってたはずである。

呪文名に著作権はあるのか

創作物のキャラクターの名前のみでは著作権は認められない、みたいな判例はあるようですが、こうした事例がウィザードリィの例にあてはまるのかはわからない。
商標登録されていれば別だが、まずアンドリューおよびサーテックが魔法ひとつひとつを商標として登録してたということはない、と思う。

とりあえず、許されてる事例として「ドラクエじゃないのにホイミが使えるゲーム」なら知ってる。
スクウェアの『ルドラの秘宝』。本作は魔法の名前をプレイヤーが決めると効果が自動で決まる「言霊」というシステムを採用している。
この言霊はドラクエの魔法が一部対応しており、明らかに意図的にホイミやメガンテが有効になっていた。

ホイミをドラクエ以外で出すくらいならセーフなのか?
ルドラの秘宝の事例は以下のような事情も考えるべきだろう。

  • スクウェアはドラクエ言霊の使用を推奨していたわけではない。公式な情報では全く公表していなかった(はず)
  • 当時のドラクエの呪文全てに対応しているわけではない。
  • 対応している呪文の回復量や消費MPなども完全一致するわけではない。
  • ホイミに対応するプログラムを作ったのはスクウェアだが、あくまで呪文名を作るのはユーザー側である。
  • このゲームシステムでホイミを試すプレイヤーが大量にいることは事前に予想される。

また当時のスクウェアとエニックス、そして堀井雄二の関係は良好だったはずで、裏で許可を取ってる可能性も…あるかどうかはわからないが。

常識的に考えて、ホイミが使えるくらいはパロディやオマージュの範囲だろう。ホイミに著作権が認められるのかは不明だけど、あったとしても、ルドラくらいなら許されてる引用の範疇で済む気がする。ロトの墓や「ふなのりのほね」が出てくるゲームと同じレベル。

ルドラの例であれば、仮にもっと悪質に「当時のドラクエの呪文全部に対応!」などしていたら、またそれを発売前から売り出してなどいたら、問題は生じると思う。
『ルドラの秘宝』がドラクエの関連作品だとユーザーに誤認させたりしたら、呪文名だけで済む問題ではなくなってくる。
それから権利的にセーフでも、あまりにもドラクエ呪文率が高すぎるとパクリゲーとしてユーザーの印象が悪くなるということはありえる。
そこまではしてないから、ルドラのホイミは笑い話として許されるわけである。

ウィザードリィの場合は?
カティノに著作権はあるのか?
「旧呪文名を使うことで、ウィザードリィ旧版権を使ってるゲームだと誤認させる」ということは、困ったことにありえるのだが…
ウィザードリィをウィザードリィと誤認させるってどんな状況だという疑問もある。そのくらい、ええんとちゃうか…?

ではなぜエンパイアは呪文名の使用を回避したのか?
常識的に考えて、5までの権利がないことはスターフィッシュなどは知っていただろう。言われてなくても5までの固有名詞を避けるのは別に不自然なことではない。
あるいはアスキー作品と別シリーズであることを強調する意図があって、あえて遠慮して使わなかったのかも。
…まあ、派生ウィザードリィの中でも特に『古の王女』はそういう遠慮はしてないタイトルな気はしますが、その件は今回は言わないことにする。

ドリコムは許されてると考える

ダフネで旧呪文名が許されているのは、やはり「呪文名の著作権」それ自体が最初から無かったのではないか、と私は想像しています。

しかし、この想像が間違いで仮に「呪文名の著作権」が本当に存在したと仮定した場合は、逆にその権利はドリコム側の持っているウィザードリィの権利の中にあるのでしょう。
だとすれば他社のゲームでカティノは出せないが、ドリコムの関わるウィザードリィでは問題なく出せる。
そして、外伝シリーズを見るに、この権利の所在はたぶんドリコムに移るより前、旧サーテックが健在だった頃からずっとその形だった。

では、現に呪文名が長いこと使えなかった理由はなんだろう。
エンパイア以降の一連の作品が影響して、どこかで「旧呪文名には問題がある」と誤認が起きたのではないか。
または、著作権的には大丈夫そうでも(アスキー以外では)使わないでくれという、強制力の低いお願いがあった可能性は否定はできない。著作権とは別に、「権利者が嫌がってるみたいだからやらない」は遠慮する理由としては十分成立する。
だとしたら今許されてるのは何なんだということだが、旧サーテックと新サーテックは同じような会社ではあるが、20年の間に気持ちが変わっていても別に不思議はないわけで。

リスクの問題はある。既に法的にセーフと線引きがされている事例でも、訴訟は起こせる。
セーフなつもりでドラクエの呪文を出したゲームがあったとして、万が一エニックスなどに訴えられたりしたら。
法廷で負けたらまずいのはもちろん、勝てたとしても無駄に喧嘩売ったやつとして、これまたユーザー側に悪いイメージのほうが残ることもあるかもしれませんし、単に裁判やるのはめんどくさいというのもあるだろう。
ウィザードリィ1から5の権利者がどこにいたかは知らなくても、どこかにいることは確かだった。「少々使っても合法だけど使わない」という考えも別に不自然なことではないと思います。

この呪文名の件、実は問題などなくても単に遠慮していただけという可能性もあるが、日本とサーテックで長いこと連絡が取れてなかったこと、「問題がどこにあるかを確認してこなかった」こそが問題の本質であろうと私は思うわけです。
ドリコムはその問題を権利のやり取りではなく、話し合いだけで綺麗に解決したのだというのが、私の想像です。

憶測の多い記事で申し訳ありませんが、ダフネは堂々と海外展開もしており、現在問題になっている様子はありません。
本記事の憶測がどれだけ正確かはともかく、今後も呪文名で問題となることは考えにくいです。

まだ呪文名を使わない事例

『五つの試練』のSteam版の場合であれば、現在も旧呪文名の採用はされていない。それどころかSteam版の説明に

>旧作『ウィザードリィ』#1~5との関係について

>本作は『ウィザードリィ』#1~5とは何ら関係がなく、それらのダンジョン構造や、ユニークな名称(モンスター・呪文・街名など)や、それらそのもののグラフィック・UI素材なども利用していません。

って、はっきりと書いてある。
五つの試練の権利表記はドリコム作品と同じようなものだ。

だが五つの試練は「旧作の権利を取ってないけど旧作を強く思わせるゲーム」なのも事実である。(ダフネはそこまで旧作を思わせないので違う)
上記で仮定した「現ウィザードリィを旧ウィザードリィだと誤認させる」を避ける意味で、こういうことを書いてるんだと思うんだが…
また、15年前にPCで売ってた時代から使ってきた呪文名をいまさら変えたくないという気持ちもあるのかも…?

『五つの試練』の件も不明点はありますが、想像はできる。ダフネと違って、いまだ上記の注意書きが残っているわけですが、説明できる仮説なら思いつくので、それほど不自然な状況ではないと考えます。
けど、まあわかんないですね。

謎のカタカナセーフ理論への疑問

いよいよ憶測の多かった本記事の締めくくりだが、困ったことがひとつ。
呪文名はNGというはっきりしたソースは、あるのだ。

ドリコムの前の権利者であるゲームポットのWizardry Onlineについてのインタビュー。

>結局あれって誰が権利持ってるのか曖昧なままなんですよね。でもやっぱり「KATINO」(※)で眠らせたいですよねえ。

>……実はこれ,英字そのままでは版権に引っかかるかもしれませんけど,「カティノ」とカナ表記した場合には,その限りではないんですよ。例えば「MALOR」なら,カナにした場合には「マラー」なのか「マロール」なのか正確には決まっていませんし。

この解釈により、前版権者のGMOゲームポット時代、ウィザードリィオンラインやWizrogueなど一部作品でカタカナの旧呪文名も使われていた。

…本当か?
上記でもゲームスタジオの権利がちょっと出てきたが、ふつう英語から翻訳したものは「二次的著作物」とされ、元著作者の権利も当然残る。それどころか翻訳した人の権利も追加される。
もちろん読み方が何種類あろうと「マロール」がMALORなのは明らかだ。言い訳不可能。「マラーがMALORではないと断言できる状況」に持っていければ別だが、ウィザードリィのタイトルつけといてそんなこと言い張れるわけがない。言い逃れどころか、こうしてインタビューで物証まで残してる。
これが許されるとすれば、既に上記で想像した2パターン、「そもそも呪文名には著作権がなかった」もしくは「呪文名の権利は日本側が買った版権でまかなえていた」のいずれかしか考えられない。
さもなくば、グレーではなく許されてなどいなかった。

何より、これは上記で仮定した「権利的にはセーフだとしても遠慮して使わない事例も考えられる」の真逆。
「権利的にはグレーだと思ってるけどカタカナならセーフだから未知の権利者に遠慮せず使った」と自分から言ってるわけである。
これは憶測ではない。そうとしか読めない。
公式側の人間(当時)が堂々と、なんでそんな自白を、大手のメディア上で?

呪文名の使用はセーフだったと現在の私は考えているが、当時のメーカーの認識は明確なグレーだったんですよ。ドリコムと連絡のついた現在と違い、ゲームポットは1から5の権利者が誰か、本当に知らなかった。
知らないまま、グレーゾーンをグレーのまま、日本人の解釈のみで乗り切ったつもりでいた。
どこにいるかもわからない権利者の持っている権利がセーフかアウトか、どうしてわかるというんです?
後でブラックだと判明したらどうするつもりだったんだ?

念のため確認しておくが、ダフネの場合はアルファベットでも呪文名変えるようなことはしていない。
ゲームポットの言ってた「カタカナセーフ理論」で乗り切ってるわけではない。ドリコムは世界で売ってるんだから当然。

カタカナならセーフというのは、過去の公式が確かに言ってたが、私はとても信じられない。
これは問題などなかったのに問題があると勘違いしたうえで、謎な解釈を持ち出している、ではないのか。それを推し進めたのは前権利者ではないのか。
だが、そう、それなりの企業である公式側の人が、謎な解釈をそんな堂々と出してくるものか…
もしかして私が勘違いしてるだけでカタカナならセーフになる国があるのか…?
いや、だが…

私は、はっきり言ってこの2011年のインタビューを疑っている。不信感を持っている。
仮定ならいくらでもできるので、2006年にサーテック側から前権利者に売り渡された際などに、呪文名は使用できないよという密約があった可能性も無ではないのだが…
「カタカナならいいよ」とは絶対言ってないだろう。言ってたらそいつが本当に権利を持ってるかを先に疑うレベル。

グレー化していった経緯について、「サーテックもしくは「別の何者か」から不正確な説明を日本人はされてきたのではないか?」このような疑いは、ないわけでない。
だがそうした根拠の薄い疑いとは別個に、グレーだと知ったうえでこうした態度であたった日本版の前権利者に対して、私は明確で深い疑念を向けている。
この13年前のインタビューに対する強い違和感を、本記事では今さら表明しなければならない。

おわりに

いくつか不明点を残しました。
特にサーテック社についての考察、整理していて気付いた情報は意図的に減らしています。
このことはいずれ続きの記事で書かざるを得ないでしょう。
それは現在一部で広まりつつあるサーテック=シロテック家へのネガティブなイメージが真実なのか、その検証も交えていくことになる。いつに書けるかはわかりません…

ですが、呪文名に関してはこれで決着、過去も現在も問題はなかったというのが私の見解です。
前権利者時代の妙な情報に推測は含みますが、現在のドリコムが自社の権利だけで呪文名を堂々と使える状況にあること、それは疑う余地を持ちません。
現時点での結論を出せるものとして、この記事だけ公開します。

FF1初期バージョンのバグ(未確認情報)

先日のラジオで言っていたこと、忘れないうちに書いておく。

こちらの番組

東京ゲームショウ2024で公開録音され、10月26日に放送された番組中で坂口博信がFF1の話をしていた。
87年12月に発売されたFF1の初回出荷版にはバグがあって、それを知らせるための用紙をスクウェア社員総出で入れたんだという。倉庫の10万本のFF1に、手作業で。
やってるうちにどんどん紙入れが上手くなっていったと坂口さんは語る。

この話は初出情報ではない。前にも坂口博信が言ってたし、これが手作業だったのは他の人も証言している。

市場にも捨てられず残っているものがあるようだが、あまり有名な話ではないと思います。
私も見たことない。

FF1の販売本数は52万本と言われるが、初回出荷数は40万本?(これも別のインタビューの坂口博信情報)とされている。
FF1のカセットは確かに2バージョン確認されており、裏面に「FFマーク」がついているものが存在する(88年以降に販売されたファミコンカセットにはみんなついてる)。
ただし内容に変更点があるかは不明。

このバグは修正された、ということを坂口さんは公開収録では言っていた。
バグ用紙が入っているのは10万本ということなんで、前のインタビューと合わせると残りの30万本は同じ初期出荷バージョンでも修正が間に合った、ということになる。
FF1の初回版は2種類あるのかもしれない。

で、疑問があるのはそこではなく。

>キャラクター設定を終えた後、ボタンを押すと
ゲームが始まりますが、このときキャラクターが変化して正常な画面にならない場合があります。このような場合リセットスイッチを押しながら電源を切り、カセットを取り出し、再度セットしてください。(一度で正常な画面に戻らない場合は同じことを数回くりかえしてください。)ゲームの進行・内容およびセーブされたデータにはまったく影響はありません。

この用紙に書かれているバグについて、私はこれまでまったく聞いたことがない。
FF1はかなり研究の進んでいるゲームだが、ゲーム開始直後に変な画面になるという話は、聞いた覚えはない。しかも電源を切らないと直らないと。
起こる現象も若干あやふやだ。「正常な画面にならない」とは一体。
そこでリセットするとセーブする前に戻っちゃうのだが、バグったままセーブしても大丈夫ですよってことだろうか。
この紙が入ってるカセットだと、本当にこういう現象は起こりうるんでしょうか?
FF1のバージョン違いについては情報不足。しかも初回版でも2種類あるかもしれないとは…

この紙を入れる状況にあったのは間違いないが、実はかなり限られた条件でしか起きないバグなのでは、という気がするが詳細は全くわかりません。
推定10万本も世に出てるのに、発売前から判明していた現象の報告が全くないというのは妙な話なのですが…

追記:
書いた直後に思いついたことですが、FF1のカセットに使われているSRAM。製造時などに入ったデフォルトのデータ(?)がカセットに残ってるのでは?
それを起動時に初期化するプログラムがうまく働いてない(つまりバグではある)のでは?
ということを、根拠のない憶測ですが考えました。
CHR-RAM(セーブとは別のSRAM)に入ってるキャラクターが異常になっているというのはありそう、という反応もいただきました。
この仮定だと、異常が発生するのは出荷直後など限られた条件のみで、現在出回っている中古のFF1では問題は発生しない…ということも考えられます。現在報告がないことの説明になる。

WIZダフネ 課金メモ

Wizardry Variants Daphne 課金要素の情報

ほぼ自分用記事なので、課金要素を網羅してなかったり適当な記述も多いです。独自用語も勝手に使っています。
参考にした場合に何があっても責任は持てません。

基本

初日は異様な回数の通信を要求してまともに遊べないレベルだったダフネだが、公式の説明を見る感じサーバーが弱いというより想定外の通信が起きていたようだ。
すぐサーバーも強化されたようだが、リリース2日後にはもう普通に遊べるようになっていた。
そして評判もかなり良いので軽率にダウンロードしてみるとよいだろう。
起動後のダウンロードで6ギガ以上になるのが難点だが…

内容のこまかいレビューは他所に任せるが、全体的にはウィザードリィっぽい正統派RPG(スマホゲーっぽさが弱すぎるくらい)である。
そして、課金させようという意思が非常に薄く感じる。
だから、こんなよくできたゲームを無料で遊ばせてくれるドリコムの心意気に対して課金をしようというのである。

無料でもすごく苦労することはないと思うが、数時間はプレイしないと課金のしどころ自体も見えてこないという感想。

ガチャの基本

課金要素の花形たるガチャは、本作では骨(ガチャチケのようなもの)である。遺骸から新しい冒険者がすごい勢いで復活していく。
だが無課金でもゲームを進めるとすぐに多数の骨が手に入る。
かなり低確率だが、ダンジョン内のおそらくランダムの宝箱から骨自体が出ることもある。
時間はかかるが、たぶん無制限に取れると思う。

自然に手に入る骨だけ満足できない場合、その骨を石で買うことができる。
石はエリンの貴石(有料石)とオルグの貴石(無料石)の2種類がある。このどちらかを200個で骨1個と交換できる。
無料石はゲームを進めるだけで数千個くらいは簡単に手に入るが、取り尽くすとほとんど手に入らなくなる。

有料石は60個150円から買える。たくさん買うと無料石もサービスでついてくる。1個2.5円の計算なので、骨1個500円ということになるが、これは一番割高な計算。
サービスでもらえる無料石を考慮すればもっと安くなるし、骨もまとめ買いすると1個多くもらえる。
個数限定セットだと7000円で20本(1本あたり350円)などもある。

骨自体は長くプレイすればいくらでも手に入りそうだし、買わなくても序盤に大量にもらえるぶんでも足りる。
不満なら無料石を突っ込めば人員不足に困ることはなく、快適に遊ぶには十分だろう。
全体的には課金を恒常の骨ガチャに回すのは、優先度は低いかと。

限定骨

恒常ガチャとは別に、現在、期間限定で特別な冒険者「放浪の王女ラナヴィーユ」が2%の確率で出る特殊な骨を販売中。

これが特典付きとそうじゃないほうの2種類ある。緑のほうは無料石で買えるが、特典付きのほうは有料石か、直接日本円で買うしかない。

特典というのは、このガチャの目玉である「放浪の王女ラナヴィーユ」が手に入るとカシナートの剣、希望の胸当て、達人の鎧のいずれかがついでにもらえる。
カシナートが欲しかったら課金するしか選択はない。
しかもカシナート同士でもグレードの差がつくようになっている。
ガチャを回して溜まるポイントを使えば無料石だけでもカシナートなどの目玉と交換可能だが(天井)、無課金で集まる無料石では足りないと思う、たぶん。

ゲームをもっと進めたらカシナートの剣もダンジョンで拾えるようになりそうな気がするが、それは想像であって先行きは全く不明である。現時点のバージョンでは出ないと思うんだが、まだ最後までやってないんで…

ガチャから出る冒険者

ガチャから出る冒険者は一般の冒険者、伝説の冒険者、無名の冒険者の3種類がいる。
冒険者のデフォルトの名前と外見は決まっており、種族、職業、性格、設定、覚えるスキルは全員固有(その名前だけデフォルトから変更できる)。
無名の冒険者も声優はついてないが「名もなき〇〇〇〇」っていう固有のキャラで、出現率は高いが全部で6種類しかいない。

ただし同じ冒険者でも微妙に個体差がある。同じ子なのにボーナスポイントも運も変動している。
この初期値の吟味は、……あまり意味がない気がする。
本作はレベルが上がるとガンガンステータスが上がっていくタイプのゲームなので、数レベルも上がると初期値は誤差くらいにしか感じなくなる。
しかし、最終パラメータに差が出るのかどうか、実際に確かめるのは困難である。わざわざ上位個体に交換して育て直すほどではないが、何人も同じ子を引いた場合は一番つええやつを選別したほうがいいのかも…?

ただし、通常メンタルの最大値が100なのだが、これが低い個体がたまに生まれる。
メンタルの最大値を上げる方法はないようだ。
メンタルが低いほうが不利なことが多いのだが、不思議なことにメンタルが低い個体が出る確率はかなり低い。
メンタルが低いことのメリットは現時点では思いつかないが…

ダブった冒険者の使いみち

名前のついてる冒険者は例外なく全員固有の能力を持っているので、低レアでもとりあえず各一人は登録したほうが良さそう。今後いつ必要になるか全く予想ができないし、名無し以外の冒険者は全員に固有のストーリーがあるので、これを読みつくすのが本作の究極の目的かと思われる。

同じ冒険者がダブっている場合は、克己(限界突破のようなもの)ができる。
克己をした冒険者は、性能が向上する固有スキルを習得する。人数を重ねるとさらに強化される。

あまった冒険者の使い道はもうひとつ「継承」がある。冒険者ごとに継承できるスキル、魔法などが個別に設定されている。あまっているアーシャを食わせればシーフのミラナもカティノを覚えられる。

つまり…腐る冒険者は一人もいないということである。魔法を覚えさせるだけなら一人食わせるだけで済むが、克己を何回も行ったりスキルのレベルを上げるには同じ冒険者を何人も集める必要がある。
だから、全く育てる気がないキャラクターも継承需要がなくなることはほぼありえない。何人いても無駄にならないので、本作のガチャにハズレは存在しないも同じである。

そこまで鍛える必要があるのかというと、たぶんない。

リセマラ

初日の地獄の通信状況ではリセマラは困難だったからオラやってねえぞ。

現時点の恒常ガチャには一般の冒険者29人と、伝説の冒険者が6人いる。ゲームを進めると、伝説の一人だけはプレイヤーが選んでもらうことができる。
残りはリセマラで一人くらい伝説が引ければラッキーかな、というぐらいに見えるが。
伝説の6人の中で格が違うのが騎士のラナヴィーユ(限定ガチャでピックアップ中の「放浪の王女ラナヴィーユ」とは外見が異なるが性能は同じっぽい?引けてないのでわからん…)
ラナヴィーユは初期状態で戦闘終了時に味方全員のHPを固定で12回復するという超強力な固有スキルを持っている。こいつがいるかどうかで序盤は別ゲー。
他の伝説の冒険者もそれぞれは強いスキルを持っているようだが、ここまでゲームをひっくり返すものはない、と思う。
他には奇襲を防ぐエカテリーナは強いかも?

問題は伝説の冒険者はダブりにくい(克己がしにくい)ことで…
強力なスキルはあるがパラメータ自体は一般と大差あるように思えず、伝説の冒険者が必ずしも強いとは言えないのでは。

姫騎士は本当に強いのか

またラナヴィーユ。スキルが強力だと書いたが、ゲームが進むと90ダメージとか普通に食らうようになるし、戦闘終了時にしか効かないのでボス戦ではほとんど無意味なスキル。
このスキルの回復量を増やすにはラナヴィーユ同士で継承するしかない。
固定の12回復程度ではどうにもならず、最初のダンジョンの途中でも露骨に価値が落ちてきてる…
この子はゲーム序盤を楽に進めるなら最強だと思うが、今はともかく最後まではとても使えないというイメージが…

他の課金をした

この3000円の旅券は買った。プレイ時間を短縮したいという意思が強い現代人向けのアイテム。
金と経験値のボーナスが強い。30日効いて3000円はかなり強力だろう。
強キャラを引くよりも、直接的に強くなったほうがてっとり早いと考えた。楽勝になるほど強くはならない。

もうひとつ買ったのはこちら。
今月のミッションでマハリトがもらえるようになるチケット(対象ミッションは来週開始)。僧侶にマハリトを覚えさせる意味はあると見た。
来月以降も同じのが売られるかは不明。

とりあえずこれで3600円か…
今課金できるのはそんなもんかという気はする。長く続けばもうちょっとは考えよう。

本作の脱出アイテム「ハーケンの鉤」は少し手に入るが、買おうとするとこれも有料アイテムなので注意。1個300円。

本作はガチャでキャラクターを引くというよくある構造だが、どのキャラクターもメインストーリーに関わってくることはなく、気に入るキャラクターかどうか使ってみるまで全く未知である。新規の人がキャラ目当てで引くというのは、考えにくい。
各キャラクターのストーリー自体はよく作りこまれていて、使い込んでいくと仲間の設定はだんだん開示されていくが、まだ採用するかも決めてない初期状態でも長文が出てきて戸惑う。

キャラクター性がおすすめなのは邪教の巫女のアリスちゃんですが、伝説級なのでおすすめしにくい。正統派の邪教徒で、骨から生き返らせてやった俺くんを信徒と呼んでくるクソエルフ。
狙ってないのに普通に引けた伝説なので優遇してる。

追記:登録したキャラクターを引退させるシステムがあるのだが、引退の際に認識票という重要なアイテムを残していく。
これが週に3個しか手に入らないので、多く欲しければ何人か引退させて集めないといけない。つまりガチャを回した数はやはり正義であるようだ。これだけが目当てでガチャを回すと言うこともありえる。
もっともこの認識票が多数必要になるのも結構ゲームが進んでからで、現状の課金を支えているのはこれ目当てではないようではある。
とにかくガチャ回して損はないということで。