保険について

家の前に灯油を撒かれた状態で入れる火災保険、海賊に接舷されたあとでも加入できる船舶戦争保険、殺害予告を各所に送ってから契約可能な個人賠償責任保険(故意に損害を与えた場合も補償される)。そのような保険が存在したら驚く。保険数理士の計算によれば、加入が断られるはずなのに!

「この状況で入れる保険があるんですか?!」は危機的な状況を表現できるが、その1点以外ではまったく妥当な発言ではないので面白いのではないか。

まず、対処しようとしている危険は、通常保険で対応しようとするタイプのリスクでない。また、保険に加入して損害が金銭的に補償されるとしても、リスク自体を回避できていない。たとえば、死んだ後で補償されても意味がない。しかしこれは、一部に、どうしても生命保険の意味が理解できない人がいるのと同じ種類の問題ではある……。

また、「この状況で入れる保険があるんですか?!」の口調はCMを想起させるが、実際にはそのようなCMは存在しないし、あってもおそらく広告としての機能を果たせない。リスクが高い状況でも加入できる保険は、他に選択肢がない人には魅力的だが、その他の、リスクが低い人には、分が悪い賭けにしか映らない。生命保険に加入するなら、他の契約者がすべて不老不死の保険に入りたい。

このような理由でもって、「この状況で入れる保険があるんですか?!」は面白いのだと思いますが、それもせいぜい2、3回、目にするまでのこと。今となってはただの定型文、教養をひけらかすことにしかならないのだから、もっと面白い文句を見つけたいと思い、保険のCMを検索、視聴した結果、広告が保険ばかりになった。