管理日記

公共の空間に体格の良い男が寝間着姿でいると、警戒してしまう。場における適切さに頓着しないというワイルドの宣言に受け取れるし、予定になかった外出を余儀なくされての不機嫌さも漂う。このマンションの一階は、他の階より一室少なく、あいた一室分のスペースがエレベーターホールに充てられており、それなりに広い空間に、造花のスタンドと、本物の観葉植物がいくつか、アームチェアが二脚と小さく低いテーブルが一台、置いてある。タオル生地の短パン、同じ素材のシャツを着て、椅子に浅く腰掛け、テーブルの上にサンダル履きの足を投げ出した男からは、防犯カメラ越しの不鮮明な映像でも、不機嫌さが伝わってきた。いざとなったらすぐに暴力を行使するぞ、と意気込んでいるようにも見える。

一階の掃除は終わっていたので、しばらくはホールに近づかないが、一時間に一度行う巡回では、エレベーターを使う。15階まで徒歩では登れない。巡回を省略する、という手はある。巡回しなかったことに気付く人間はいない。しかし、管理業務は、省力化しようと思えば無限に可能であり、必要な一定の歯止めとして、一時間に一回の巡回は必ず行うことにしていた。防犯カメラは、エレベーターにも設置されているから、実際に巡回したかは、事後に検証可能である。その防犯カメラの録画を見ているのが自分一人だとしても。

防犯カメラの録画は、自分が管理を引き継いだ時点で半年間停止していたが、誰も気づいていなかった。全高1.5メートルのラックに詰め込まれた機械からは常に大きなファンの騒音がして、上部のブラウン管モニタが通電しなくても、録画システムとしては稼働しているように思えた。暇なときに(ほぼ常に暇なのだが)、管理室内の資料、最終処分をどう行うか決定されていないため、十何年も無駄に蓄積された、毎日ほとんど同じ内容が記された日報、を読み漁って判明したのは、そのラックの録画システムは10年近く前に故障、映像のソースとなるカメラから切り離されており、映像の記録は、もっとシンプルに、ラックの上に置かれた一台の機器と、隣の机にある液晶モニタに引き継がれていたということである。その新しいシステムもなにかのタイミングでフリーズし、映像の記録は半年前で停止していた。電源スイッチで機器を再起動すると、録画は再開された。それから、建物内各所の、不鮮明な映像のリアルタイムでの監視と、10日程遡っての確認ができるようになったし、不要なラック内の機械をすべて停止した二畳の管理室は、以前よりはるかに静かな環境になった。

管理人室を出ると8畳ほどのエントランス、そこから左へ行けば敷地の外へ、集合型インターホンで自動ドアのロックを解除して右へ行けばエレベータホールだが、パネルでロックを解除するさい左の屋外を見ると、外へ向かう通路の先に男が二人しゃがみこんで携帯電話を覗いている。どちらにも見覚えがなく、住人ではなさそうだが、配達や検針を行う服装をしておらず、なぜそこにとどまっているのかわからない。ロックを解除してエレベーターホールへ入ると、防犯カメラの映像どおり、椅子に男が座っていた。カメラには映っていなかった左脚の大きく鮮やかなタトゥーに目を奪われ、挨拶を躊躇する。

住人に会ったら挨拶するルールにはなっているが、広く真っ直ぐな道でお互いを視認した時点ではまだ距離が遠く、一旦、目を伏せて適切な距離まで近づいたら挨拶する、というような理想的ケースばかりではないから、挨拶を実行するにも刹那の判断が必要となる。いつもこちらの顔をしっかり見て大きな声で挨拶してくる青年には同じやり方で機先を制したり、複数人で楽しく会話をしているようなら会釈で済ませたり、視覚より先に、音でこちらが相手に気づいたら、鉢合わせしないようルートを変更したり。そのために、常に足音が小さくなるように移動している。

この場合、椅子に座る相手の背後から近づく形になるが、自動ドアの開く音に反応してこちらに目を向けたら挨拶しようと決めてドアをくぐると、他人の様子、環境の変化に気を配るような惰弱なことはしないと決めているのか、男は俯いた姿勢のまま全く動かなかったので、防犯カメラを意識した会釈だけ一閃してエレベーターに入る。

建物の高さが45mを超えると消防法、建築基準法の区分が変わり満たすべきルールが厳しくなる、それを避けるため、高さが45m弱、最上階が15階、14階となる建物が多いらしい。だから、たぶん最上階は地上40mくらいだと思われるが、建っている場所自体が台地なのもあり、最上階からは平野の終わり、四方を囲む山まで霞んで見える。毎日何度も、外階段を降りて各階を巡回するので、空の様子に詳しくなった。普段よく轟音を耳にする、旅客機より明らかに低く飛ぶ茶色い飛行機は、街の北にある自衛隊基地から発進し、あたりを巡回して戻るプロペラ双発機であることもわかった。映像で見る戦闘機と異なり、地上から肉眼で見上げる飛行機は遅く小さい。あの、のどかに2機編成で飛ぶ飛行機が、本来の役割で活躍する、そんな時代は決してきて欲しくはないものだが……。

エレベーターホールを避け、玄関から遠回りして管理室に戻ると、寝間着姿の男がホールを出て、管理室の対応窓口へ近づいてきた。玄関口でしゃがみ込んでいた男二人も合流している。もし、いきなり殴られても致命的な打撃とならないよう、できるだけ窓から距離をとれる体勢で窓を開ける。

「ここで駐車場借りてんだけど。一週間で3回も4回も故障して、大抵、夜なんだけど、そのたびに朝まで待ってんだけど。鍵が取れなかったり、故障して上に上がってこなかったり。まともに動くところに交換してくれない? あと、故障してるから仕方なく前の空いてる駐車場に停めておいたら、違法駐車だから駐車料金払えって貼り紙はられて。ああいうのも気分悪いからやめて。じゃあ、それでコインパークに停めたら金払ってくれんの?」

機械式駐車場の契約についてはもちろんなんの手続きもできないので、サポートデスクの電話番号を案内して、窓を閉めると、寝間着の男はまたエレベーターホールへ、他の二人は屋外の通路へ戻る。今日も暑く、通路には陽もあたる。全員、エアコンで空気が調整されているホールにいればよいと思うが、何かしら力の勾配があるのか、決まったフォーメーションを崩さないようだ。

一旦、気持ちを落ち着けるために、毎日同じ内容で埋める日報をフリクションボールペンで記入していると、また、窓をコンコンと叩く音がし、別の男が二人立っている。どちらか片方でいいと思うのだが、二人共、警察手帳をこちらに提示している。

住民からなんらかの苦情を寄せられたり、配達などでドアを開けてほしい、といった用事で話しかけられる、というのはだいたい週に一回程度あるが、一日に二回というのは初めてで、相当に珍しい。ただ、警察官がくるのはこの一年で五回目であり、それほど珍しくはない。

片方の警察官(刑事?)は、一ヶ月ほど前に、駐車場の車をレッカー車で運んでいった際にも会った。その後も一度、この建物内のどこかにあるはずの鍵を探して、再度、訪れている。その鍵は、エレベーターホールか、駐車場に落ちているはずであるらしく、落とし物は管理室に届けられるのか? 最近、鍵の落とし物を拾っていないか? ホールにあるゴミ箱はいつ中身を空けているのか? などを確認された。その鍵はなにかの証拠なのかもしれない。それとも、警察でさえ、その物理的な鍵がなければ、開けられない扉があるのだろうか?なんらかの、次なる 進化への扉であるとか。

「今回は立体駐車場の鍵を借りてきたんで、ちょっと駐車場の上げ下げしたりするんでご協力願えますか。このドアが鍵じゃあかないと思うんで、駐車場まで一緒に来てもらっていいですか。あと、この間、うかがった、署に届けられたっていう落とし物は、戻って確認したんですけど、すぐ返却されたのかありませんでした」

よくわからない男たちに前後を包囲された状態で管理室にいるのが苦痛だったので、喜んで付いていく。エレベーターホールを抜けて、駐車場へ行き、レッカーした車が置いてあった場所で、また鍵を探す警官を眺める。

「落ちてるとしたらこっちですかね?」「ここから回って助手席に入ったってことだから、こっち側だよ」「管理人さん、これ中に人が入ったまま下に降ろしても大丈夫ですかね?」と聞かれるが、その昇降式の駐車場を使ったことがないのでわからない。ただ、車が潰れないということは人間が乗っていても潰れることなはないのではないですかね、と答えると、一人が乗り込んだ状態で昇降機を動かし、地下のスペースでも鍵を探す。鍵は見つからない。

次は、エレベーターホールをさがすという。非常に熱心に鍵を探しているが、なぜか、防犯カメラはチェックしていない。録画は10日ほどしか残らないので、もう手遅れだが、車をレッカーした時点で調べていれば間に合ったのではないだろうか? 警察には、別件で録画を提出しているので、カメラについて把握しているはずである。あのマンションにはこのようなカメラがある、こちらのビルには3年分の録画が残されている、そんな情報を県警内で共有するデータベースがあったらとても便利ではないだろうか? どんなに賢い犯罪者も、そのように便利に整備された防犯カメラ群からは逃れられない。時間と場所を指定しただけで、最寄りのカメラで撮影された映像が即座にモニタへ映し出され、容疑者の精神状態までわかりやすいアイコンで表示される。そんな全く新しい捜査の様子を想像するが、決してそのような社会を歓迎しているわけではない……。

エレベーターホールに戻ると、警官二人と寝巻き姿の男が鉢合わせすることになったが、そこでなにか期待してような化学反応は起きなかった。何度も探しているので当然だが、鍵も見つからない。脚立があれば、天井の棚のようになっているところも調べられるのに、脚立ありますか? なければ、今度は脚立をもってきます、と一人の警官はいい、絶対にこの証拠は逃さない、執念と足で鍵を見つけてみせるという決意を新たにしたかのような表情を見せて去っていった。

昼近くになり、管理を終了する準備をしていると、寝間着姿の男と、玄関先に居た男二人が、到着したトラックから荷物をおろし、運び入れ始めた。手配の手際の悪い引っ越しであったということがわかり、これ以上の接点が発生しないよう、急いで立ち去る。

保険について

家の前に灯油を撒かれた状態で入れる火災保険、海賊に接舷されたあとでも加入できる船舶戦争保険、殺害予告を各所に送ってから契約可能な個人賠償責任保険(故意に損害を与えた場合も補償される)。そのような保険が存在したら驚く。保険数理士の計算によれば、加入が断られるはずなのに!

「この状況で入れる保険があるんですか?!」は危機的な状況を表現できるが、その1点以外ではまったく妥当な発言ではないので面白いのではないか。

まず、対処しようとしている危険は、通常保険で対応しようとするタイプのリスクでない。また、保険に加入して損害が金銭的に補償されるとしても、リスク自体を回避できていない。たとえば、死んだ後で補償されても意味がない。しかしこれは、一部に、どうしても生命保険の意味が理解できない人がいるのと同じ種類の問題ではある……。

また、「この状況で入れる保険があるんですか?!」の口調はCMを想起させるが、実際にはそのようなCMは存在しないし、あってもおそらく広告としての機能を果たせない。リスクが高い状況でも加入できる保険は、他に選択肢がない人には魅力的だが、その他の、リスクが低い人には、分が悪い賭けにしか映らない。生命保険に加入するなら、他の契約者がすべて不老不死の保険に入りたい。

このような理由でもって、「この状況で入れる保険があるんですか?!」は面白いのだと思いますが、それもせいぜい2、3回、目にするまでのこと。今となってはただの定型文、教養をひけらかすことにしかならないのだから、もっと面白い文句を見つけたいと思い、保険のCMを検索、視聴した結果、広告が保険ばかりになった。

話題

職場での雑談で話題をコントロールしようと思ったら、自分で切り出すしかない。「焼き肉の食べ放題についてなんですが」。多くの人は焼き肉を食べたことがあるし、自らの手で焼いたことがある人までいる。性別を持つ人も多い。とても参加しやすい話題だ。自分が切り出すのでなければ、話題をコントロールすることは出来ない。映画があまり好きではないので、映画の話になってほしくないな、と思っていても、映画の話になってしまうことはある。「でも、さすがに自分の好きな映画を悪く言われたら、なにか一言、言おうって気持ちになる人もいると思いますよ。もちろん、これはレオンのことですし、私はすべての映画を憎んでいるので本当には彼らの気持を理解できませんが……。」

これがインターネットになると、どの話題に参加しようが自由、コメントしたくなる話題を列挙する専用の画面から好きな話題に参加できる。という状態で沈黙しているわけだから、ただ沈黙していると言うよりは、欲求に抗って沈黙していると見るべきではないだろうか。以前、話題ごとに7つのアカウントを並行して運用している、と聞き、「へぇえ、すごいですね」と答えてしまったが、今だったら、「なるほど、それはいいアイデアですね」と感心するかもしれない。あらかじめ、反応する話題を決めておくことで、いらぬ迷いがへる。アカウントが一個だと、この話題に反応することが自分にとってどういう意味を持つのか、などと考えてしまいかねないが、7つもあれば一側面でしなく、そういうこともなさそうだ。ところで、もし事実が人の意見を変えないのであれば、何かをコメントするということは、実際に何かをしている、と言えるのだろうか? 支出を伴う消費や、投票は何かをしていると言えそうだが、それらと比較して。

スナップショットについて

映画にも小説にも、モノローグというものがあるが、あれは人の内面を正確に描いてないのではないか? 内容ではなく、形式が。だからといって、どう表現すれば正確なのかはよくわからない。言葉で考えているわけではないが、ドラマにおけるモノローグのように文章で考えをまとめることもある。

他人と話しているときに、事前に頭の中で発話してから改めて口にし直すということはしないので、考え > 文章にするステップとしては人と話すときでも、モノローグになるときでも同じようだ。他人に話すように、自分自身に向けて文章にする癖がある人は、ドラマのモノローグもそのようなものとして解釈できるのかもしれない。

ここに至るようなことを数十分は考えているが、対話ではないので文章がぐるぐる回るだけで広がりに乏しい。それでもいくらか、他にも考えたことはあるが、一応の筋道をつけて、関連する考えとして記述する手間が面倒という壁に突き当たっている。モノローグ的に浮かんだ文章が考えが簡略化、直列化されたスナップショットだとして、それを読んだ人が、そこから元の考えを再現する過程自体が面白い、ということがあり得るのではないか? (しかし、実際にそういう意味で面白さをもとめて文章を読むことはない) とか。

読む人にわかりやすく書くという手順は面倒なので省略して、後に自分が考えを再現できるように記述する、というのも、日常生活における写真と同じ程度の意味はあるのではないか? しかし、日常生活における自分の写真を撮り続けるという行為は一般的ではないし、自分もしていない。

最近の日々

小説とは、感情を書くのではなく、描写をするものらしいです。たとえば、「その報せを聞き、彼の腹筋は崩壊した」とか? 悲しいなら、悲しいと書いてくれたほうが誤解の余地の少ない、良い文章ではあると思うのですが……。しかし、良い形で運用されているXのアカウントにも同じようなことが言えるのではないでしょうか? 「アヒルが好きだ」ということを表現するために、数分ごとに「アヒルが好きだ」とポストするアカウント、アヒル好きであることについては明確ですが、正常なアカウント運用であるか、本当に人間なのか、に関しては疑う余地が残ります。繰り返し、アヒルへの好意をそのまま綴るより、毎日、絶えまなく発生するアヒルとの接点、そのたびにアヒルについてポストすることで、より自然にアヒルへの好意を表現できるし、フォロワーを困惑させることもない。アヒルとの(メディアを通した)接点が継続的に発生すること自体がアヒルへの<意志>、<姿勢>を感じさせる……。小説も同じなのでしょうか。「腹筋が崩壊した」と書いてあれば、腹部への強烈な打撃により断裂した腹筋と、上体を支えることも出来ずに、崩折れて絶望する様が思い浮かびます。

「冷笑系」という言葉が罵倒として興味深いなと思ったのは、それが姿勢に関するものだからです。問題とも、関連する発言者とも距離を置き、仲間内への符丁めいたメッセージで笑う。そういった姿勢は、どんな意見を持つ人であれ、あるいは意見を持っていなくても、右の方でも左の方にもいる人ででも、とり得る。言及先へのメッセージという形態をとっていないので反応されづらい、安地から人を愚弄する。こういう舐めた態度の連中に貼るレッテルとして、使い勝手が良いし、絶対に人から冷笑系といわれたくない。なぜなら自分は熱い人間だから!!

しかし、メッセージを対象に向けて発するのではなく、仲間内で回すのは本当に良くないことだろうか。たとえば、いわゆる炎上は直接言及してしまう人たちが主に問題とされているわけだし、エゴサされても見つからないように検索避けした冷笑なら、より悪の度合いは低いとみなせるのでは? 話が進めにくいので、ここで、例として、きのこ vs たけのこを導入します。これは、インターネットで最も面白い対決であるとされているからです。孫にプレゼントするなら、きのこ、たけのこ、どっちが向いているのか?

“冷笑系”と対照するために、”当事者”を考えてみたい。幼い頃、祖父からプレゼントされたきのこを食べたら、時間の感覚を失い、今も時系列で事物の前後が把握できない、という経験を持つ人は、他の人がきのこをプレゼントするのに反対するでしょう。きのこ派は、その例をN = 1として受け止めるかもしれませんし、実体験から生まれる圧倒的な説得力、物事の前後が把握できないというデメリットのあまりの大きさに震え上がって、たけのこ派に転向するかもしれません。

“冷笑系”はきのこ派、たけのこ派どちらにでも存在できますが、ここでは、その外にいる人、でどうでしょう。そもそも、きのこを選ぶか、たけのこを選ぶかについては個人の選択から発生する衝突が存在していないから対決する必要がない、ユーモアを発揮しているつもりでマーケティングに踊らされる人たち、愚か(冷笑)。のような。

そして、この当事者、冷笑系の違いを、4つに分けて考える。

  • 問題との距離 : 当事者(T)、非当事者(N)
  • 事実に関する情報の追加を含むか : 含む(I)、含まない(J)
  • 送付先 : 全体(O)、身内(P)
  • 意図 : 説得的(C)、攻撃的(A)

こうすることで、当事者は、TIOC、冷笑系はNJPAとアルファベット4文字で表記できるようになるので、bioに書いておくことでなにか話題となっている、意見の分かれるようなことについてとりがちな態度を明示できるし、効率よくしたいのであれば、この明示を持って言及をしたものとみなし、実際のポストを省略しても良い、むしろ望ましいとされる。

ポケモンユナイト競技的プレイヤーは三年でどれくらい入れ替わったのか

6/2に開催されたPJCS 2024でポケモンユナイト3年目の競技シーンが終了しました。大会の実況を聞いても、この選手は一年目から活躍している、このチームは去年から出てきた、など、選手が登場した世代、また世代の交代を意識することが増えています。実際、この三年でどのくらい選手が入れ替わったのかを調べてみました。

対象の大会

調査の対象は、ポケモンユナイト公式が開催した、以下の大会群とします。

年によって開催される時期、形式が異なりますが、年末にかけて行われるWinter Tournamentと、6月に決勝が行われるWCS予選の2つが大きな大会になります。

時期 分類 大会数 平均参加人数
'21 9/19 第0回公式オンライン 1 1,460
'21 12/4 〜 '22 2/6 Winter Tournament 2022 6 2,554
'22 2/26 〜 '22 6/19 WCS予選 2022 5 825
'22 11/12 〜 '22 12/18 Winter Tournament 2023 4 1,234
'23 4/9 〜 '23 6/10 WCS予選 2023 6 692
'23 11/5 〜 '23 11/12 Winter Tournament 2024 2 1,297
'24 3/30 〜 '24 5/12 WCS予選 2024 3 1,098

第0回公式オンライン以外は、これらの大会開催後に決勝大会を行っていますが、そちらは確実に参加者が重複しているため、予選に当たるオープン大会の参加者のみをカウントしています。

毎年、Winter Tournamentのほうが、WCS予選より参加者数が多いですが、これの理由はよくわかりません。大会の格としてはそれほど変わらないように見えるので、学生にとっては特にですが、生活に変化の多い4月をまたぐWCS予選より、冬にまとめて行われるWinter Tournamentのほうが参加しやすいのかもしれません。

参加者の分類

大会参加者を、初めて大会に参加した時期により、6つに分類します。この分類に関しては、上記の大会以外の、カジュアル大会、非公式大会を含んでいます。

ポケモンユナイトのリリースが'21 7/21なので、それ以降を12月末、6月末を区切りとして分類しています。

海外で開催された大会については除き、自分が収集している大会全ての参加者での比率を示すと以下のようになります。

大会初参加時期 人数
'21以前 4,711
'22上期 9,194
'22下期 4,043
'23上期 3,349
'23下期 2,504
'24以降 1,391

各大会の参加者

各大会の参加者を、初参加時期別に分類した表です。

大会 21以前 22上期 22下期 23上期 23下期 24以降 合計
第0回公式大会 1460 1460
Winter Tournament 2022 予選 3303 4371 7674
WCS 2022 予選 693 1629 2322
Winter Tournament 2023 予選 296 686 1460 2442
WCS 2023 予選 247 511 451 739 1948
Winter Tournament 2024 予選 186 391 321 303 650 1851
WCS 2024 予選 168 368 298 300 248 627 2009

縦に見ると、ある時期に大会参加を始めたプレイヤーが、どう変化していったかを追えます。'21年、リリース開始年に参加し始めたプレイヤーは、今年のWCS予選にも168人参加しています。最初のWinter Tournamentには3,300人ほど参加していたので、5%ほど残っています。

横に見ると、ある大会の参加者が、どの時期に大会に参加し始めたのか、を読めます。最新のWCS 2024予選では、'24以降に参加し始めた層が一番多いものの、それ以前に始めたプレイヤーも多く存在しているのがわかります。

一年目のWinter Tournamentの参加者が多すぎますが、それ以降は、既存参加者の減少を補うように新規にプレイヤーが参加しているように見えます。

このグラフは、スタックせずに、各時期からの参加者数の変化を描いています。どの時期に始めた層も、最初が一番多く、一年目は急激に、その後は緩やかに減少していきます。

各大会の上位入賞者

次の表は、各大会の上位(Top 8)チームのメンバーが、いつ大会参加し始めたかの表です。

1大会でTop 8に残るプレイヤーは 8 x 5 = 40人ですが、複数大会のTop 8プレイヤーから、重複を取り除いているため、大会数 x 40人にはなっていません。

大会 21以前 22上期 22下期 23上期 23下期 24以降 合計
第0回公式大会 42 42
Winter Tournament 2022 予選 141 65 206
WCS 2022 予選 71 39 110
Winter Tournament 2023 予選 37 50 61 148
WCS 2023 予選 63 60 36 28 187
Winter Tournament 2024 予選 19 25 16 6 11 77
WCS 2024 予選 22 34 19 12 8 6 101

先の表と見比べると、どの層がTop 8に多く残っているかがわかります。

WCS 2024 予選において、'21以前のプレイヤーは、168人参加し、22人がTop 8に残っているので、13%にあたります。'24以降のプレイヤーだと、627人が参加し、6人がTop 8に残っているので、1%です。当然のような気もしますが、古くから大会に参加しているプレイヤーの方が、良い結果を残しているようです。

参加者数に比べると、歴の長いプレイヤーを上位を占める傾向が強く、WCS 2024 予選でも、半数以上が、'22上期まで(リリース一年目)までに大会参戦を始めたプレイヤーです。

上位入賞者の初上位入賞時期

最後に、 大会を観戦している人の視点に近いものを調べるために、 各大会の上位入賞者が、「初めてTop 8に入賞した時期」を基準に分類してみました。

大会 21以前 22上期 22下期 23上期 23下期 24以降 合計
第0回公式大会 42 42
Winter Tournament 2022 予選 104 102 206
WCS 2022 予選 41 69 110
Winter Tournament 2023 予選 22 34 92 148
WCS 2023 予選 35 56 41 55 187
Winter Tournament 2024 予選 10 22 18 13 14 77
WCS 2024 予選 13 24 27 20 8 9 101

WCS 2024 予選で、過去にTop 8に入賞したことがなかった人は9名です。この中には、プレイヤー名を変えるなどしたために自分が追跡できていないプレイヤーも含まれているであろうことを考えると、WCS 2024 予選でTop 8に残ったのはほとんどは、すでに実績を持つプレイヤーであったと言えそうです。

ポケモンユナイトの大会一年目を振り返る(3)

ポケモンユナイトの大会にはチームを組んで出場するわけですが、チームの編成は非常によく変わります。

WCS地域代表決定戦

WCSの地域代表決定戦は、最終的には24チーム参加の大会結果で決まったのですが、24チーム中8チームはそれまで2月から毎月行われた大会で獲得したポイント上位のチームでした。しかし、5ヶ月間でチーム編成が変わるであろうことを見越していたのか、各月の大会で付与されるポイントは各プレイヤー単位に割り振られていました。それ故、地域代表決定戦のポイント上位枠に、過去に一度も大会へ出ていないチームがあったりしたわけですが、それらのチームはプレイヤーそれぞれが、過去に違うチームで大会に出場してポイントを獲得していたわけです。

というのが、パッと見てわかるような図がかけないかと思って試したのが下の図です。

WCS地域代表決定戦24チーム変遷

二重枠となっているのが6月の地域代表決定戦の最終24チームに残ったチームです。どこからも矢印が引かれていないチームは、メンバーの移籍がないまま、予選を勝ち抜いたチームですが、かなり少なく、多かれ少なかれ、5ヶ月の間にチーム間を異動したり、有力なチームが解散してそれぞれが別のチームを結成したケースが多かったのがわかるかなと思います。

ポケモンユナイトオールスタートーナメント

7/23以降に試合が開催されるポケモンユナイトオールスタートーナメントは、メンバーをドラフトで選んだため、これも図にしてみました。

これだけだとわけがわからないと思うので、1チームずつ作ったものを以下に置いておきます。

ポケダンズ

ユナイトオールスター【公式】

LoL老人会

ムクタリアン伝説~フルパもできるもん~

ぴよちーず

OTP全二軍団

🎀実はチェキ最強なので🎀

ぷいっと!よもぎぱん