美の特攻隊

てのひら小説

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

まどろみ

返信 〜 纏

前置きが少し長くなってしまいました。お許し下さい、ひとつは貴女に対する真摯な謝罪を、もうひとつはあの日以来、相互のなかにあったと思われる心持ちと誤謬を、確かめておかなくてはいけなかったからです。先日、純一から連絡がありました。といいまして…

フリクション

返信 〜 衝

おそらく貴女はこう反駁されることでしょう。いかにも親子揃って観念論者らしい意見だが、純一のうしろに父親の影などまるで見受けられはしない、そこには沈黙を守り続けようとする怯懦なおとなを知るだけ、、、息子との交わりに瞠目しつつも、その実、速や…

おぼろ

返信 〜 気

お手紙拝読させていただきました。随分と返事が遅れてしまったことお詫びします。 もっとも返信無用とも思える文面でしたけれど、、、このように日にちを経てしまった理由をこれから申し上げる次第です。 貴女にはあたまが下がります。何よりも最初にこう言…

美人ごっこ

手紙 〜2

もちろん、純一さんにはあの列車のことなど話してはいません。 でも想像してみて下さい。こころのどこかで希求したものが、実際ではないにしろ血を介して、このわたしのなかにふたたび舞い戻ってくる。 あなたの息子さんは一途な思いで抱いてくれるのです。…

ミツバチのささやき

手紙 〜1

前略、この様なかたちでお手紙を差し上げるとは思ってもみませんでした。 帰省の折、列車内で隣合わせてから一年が過ぎてしまった今、何かのめぐり合わせでもあるかのように、貴方の息子さんと知り合い(出会いやその後の詳細は純一さんから聞いてらっしゃる…

ラルジャン

夏まわり

絵の具を絞り出し塗りこめたみたいなひまわり畑の小径を進んでゆくと、木々の伸び具合が見分けられるほどの小高い山がせまって来た。 背景の青空は無性に旅情をかきたてるが、夏風にそよぐ大輪から浮き上がる緑は小山から彩度を分け与えてもらっているせいか…

キス

ちび六と豚丼

雨がしとしと日曜日、どの家も窓を閉め切って静かな空気がよどんでいます。 風呂場のすみから、ハイハイはってカサカサヒタヒタろうかをわたってくる気配、なんて知るわけないですよね。 でもまったく関知しないのではありません。おねえさんはちゃんとはえ…

睡眠学習

夢の記譜法 〜 三島由紀夫とジャン・ジュネ

夢見のもたらす残像に、奇妙なまでの郷愁がたなびいているのは、いつものことであって、ある種、哀切な感情が大きく内包されたままこちら側に、決して乱雑でも無謀でもなく、まるで風の便りであるかのようにそっと運ばれてくるのも、日常と呼び習わされる中…

キューピットさん

Dominique Lawalrée please do not disturb - YouTube

くるみわり人形〜後編

日が落ちる少し肌寒くなるわ、でもあんたの胸のなか温かいんじゃない、ふふふ、うちに着くまでに説明しとかないといけないわね。 いきなり対面では、、、いい良子、決して怖がってはだめよ、優しく見つめてあげて。 そういうあたしも当然ながら最初は凍りつ…

アタックNo.1

くるみわり人形〜前編

あら、良子じゃない、何年ぶりかしら、変わらないわね。 あたしはどう、ま、いいか。仕事の帰りでしょ、じゃあ歩きながらちょっと話し聞いてくれない。 あんたどこに住んでるの、あそう、あたしと反対ね。でもいいや、駅までじゃ話しきれないから電車一緒し…

ゆかいな酒宴

たけやぶやけた

一席おつきあいのほどを。 しかしなんでございますな、最近の子供は加速する情報化のせいでしょうか、随分とませたものの言い方をするものです。 ある家にお邪魔したとき、見かけない女の子がふたり、大はしゃぎしておりまして、あるじに聞きますと、近所か…

夜明けのスキャット

恋の十字架〜19 (完結)

冬日の訪れを感じさせる冷え込みにすっかり覆われた夕暮れのひとときは、何もかも萎縮させてしまいそうなよそよしい気配を感じさせる。 が、近づけば遠ざかるのではなく、その逆の様相がぼんやりと漂いだし、見るもの聞くものは肌をかすめてゆく。寂しさが案…

あしたにしよう!

恋の十字架〜18

「葉子は始めて僕のほとばしるものを体の中に受け入れてくれました。そしてそれが、最後のふれ合いになってしまったのです。 肉体同士が大きくうねりをあげて溶けあっていた瞬間、意識は明瞭でありながら妙に覚めた距離感を、、ええ、何か生々しく、歴然と目…

日記

恋の十字架〜17

慣れた身のこなしでで洋服を脱ぎ捨てる。 いつもは戯れの儀式の為たいそう大事に、尾ひれをつけて最上級の賛辞で装飾される営みであるがゆえ、ショーツ脱衣の典礼は裸体にとって最後の供物を捧げだす神聖な瞬間になるはずであった。 女にとってみれば最も羞…