ツイッターで昔の防災番組の話をしたら大反響があった。妙に不安をあおるといけないので、簡単にまとめておこう。

今回の地震による東京の被害は大したことなかったが、前にも書いたように直下型地震のリスクは大きいので、準備したほうがいい。私は1988年の国土庁の被害想定を取材したが、そのときは15万人の死者の大部分は火災によるものだった。2005年の中央防災会議の被害想定でも、死者11000人の57%の死因は火災である。したがって地震そのものより、火災にそなえることが重要だ。

このとき注意が必要なのは、大地震のときは消防がすべての火災に出動できないということだ。1988年の被害想定では300ヶ所以上で同時に出火すると予想されていたが、東京消防庁が出動できるのはその半分以下なので、最初から見捨てる地域は決まっている(これは部外秘)。消防車の入れない路地はもちろん、木造家屋の密集している地域も延焼が速いので、最初から消しに行かない。

ただ阪神大震災では、倒壊による死者が多かった。一般論としていうと、超高層ビルはまず大丈夫だろう。木造家屋も、軽量のモルタル造りは意外に強かった。危ないのは、1981年の新耐震基準以前の安普請のマンションだ。特に1階が駐車場になっているピロティ構造の建物は、膝を折るように壊れて1階がなくなることが多い。普通のマンションでは、1階には入居しないほうがいいだろう。

地下街や地下鉄が恐いうという人が多いが、地下はもっとも安全だ。もちろん停電は起こるだろうが、振動は地上で起こるもので、地下はほどんど被害がない。津波が来ると地下は危ないが、直下型の場合は津波はない。東海地震でも、設計上は津波は都心には来ない。それよりも危ないのは路上だ。倒壊する建物が多く、大量のガラスが落ちてくる。建物が頑丈なら、あわてて路上に出ないほうがいい。

まじめな話、東京は直下型地震を警戒する時期に入ったと思う。今回の大震災が直下型と関係あるのかどうか知らないが、歴史的にみても、きょう起きてもおかしくない。11000人という死者は、ふだんはリアリティがないだろうが、今回の3万人の惨状をみると、その半分が首都で起こるだけでも大変なことだ。