
日本経済は、これまで生産能力が余って需要が足りないといわれ、経済政策もGDPギャップを埋めることが目的だった。しかし今回の震災で起こった計画停電は、あと数年は続く。それは日本が供給制約の時代に入ったことを象徴している。労働人口はすでに減りはじめ、貯蓄率も遠からずマイナスになるだろう。0.5%まで下がった潜在成長率は、エネルギー制約などでほとんどゼロになるだろう。それを上げない限り、いくら需要を喚起しても成長できない。
だから必要なのは昔の資本設備を「復旧」することではなく、東北の都市計画をやり直す「復興」である。政府の役割は、かつてのようにあり余る生産能力への需要を作り出すことではなく、劣化した人的・物的資源を再構築する未来への投資だ。その財源は基本的には税金である。これ以上、将来世代の負担を増やすわけにはいかないからだ。増税は需要にはマイナスの影響があるが、供給不足の時代には問題ではない。国債の日銀引き受けなんて愚の骨頂である。
一時的に公共事業を増やせば、その分だけGDPが増えることは自明だが、問題はフローではなくストックである。今回の震災で毀損した資本ストックは20兆円以上といわれ、成長を制約することは避けられない。特にエネルギー供給が不安定化することは、製造業にとっては大きな負担になる。地球温暖化とか反原発などと言っていたのは、日本が豊かになりすぎた時代の贅沢だった。これからはエネルギー供給のためにどれだけリスクを負担するかというトレードオフを意識した意思決定が求められる。
就職が大変だといっているのはまだ幸福な時代で、あと5年もすれば深刻な人手不足の時代が来る。人的資源が成長を制約する時代に必要なのは、既存の労働者を保護する「やさしい政治」ではなく、人材の流動化と組織の再構築だ。供給力が低下すると、需要不足によるデフレは終わるだろうが、そこに待っているのはデフレより悪いスタグフレーションかもしれない。
9・11でアメリカは変わったといわれたが、「テロとの闘い」なんて幻想だった。それに比べれば、3・11は日本の歴史を変えるインパクトをもつかもしれない。成長から衰退の局面に入る日本が「第二の敗戦」からやり直すためには、今までより貧しくなる覚悟と多くのつらい選択が必要だろう。今の政治にその覚悟があるとは思えないが。
一時的に公共事業を増やせば、その分だけGDPが増えることは自明だが、問題はフローではなくストックである。今回の震災で毀損した資本ストックは20兆円以上といわれ、成長を制約することは避けられない。特にエネルギー供給が不安定化することは、製造業にとっては大きな負担になる。地球温暖化とか反原発などと言っていたのは、日本が豊かになりすぎた時代の贅沢だった。これからはエネルギー供給のためにどれだけリスクを負担するかというトレードオフを意識した意思決定が求められる。
就職が大変だといっているのはまだ幸福な時代で、あと5年もすれば深刻な人手不足の時代が来る。人的資源が成長を制約する時代に必要なのは、既存の労働者を保護する「やさしい政治」ではなく、人材の流動化と組織の再構築だ。供給力が低下すると、需要不足によるデフレは終わるだろうが、そこに待っているのはデフレより悪いスタグフレーションかもしれない。
9・11でアメリカは変わったといわれたが、「テロとの闘い」なんて幻想だった。それに比べれば、3・11は日本の歴史を変えるインパクトをもつかもしれない。成長から衰退の局面に入る日本が「第二の敗戦」からやり直すためには、今までより貧しくなる覚悟と多くのつらい選択が必要だろう。今の政治にその覚悟があるとは思えないが。