Pixel Pedals of Tomakomai

北海道苫小牧市出身の初老の日常

Haskell入門という本を書きました

Haskell入門 という本を書きました。まだ店頭で買うことはできませんが、amazonでは予約を開始しています。また、電子版も早いうちに出ると聞いているので、そちらもあわせてお求め下さい。技術評論社さんのサイトではサンプルのpdfも読むことができます。

Haskellには すごいH本 というとても良い教科書がすでにありますが、「アプリケーションを作って楽しむ」という観点から書かれた本も欲しいなということを常々感じていました1。すごいH本でHaskellの考え方やプログラムの組み方は学べますが、例えば、プロジェクトを作成して開発を始めるにはどうするかであったり、必要なライブラリをどこから探してどのように自分のプロジェクトへ組み込むのかといった、開発に必要な基本的な事項は自分で学ぶ必要があります。今回執筆した Haskell入門 ではとにかくHaskellでアプリケーションを作ることにフォーカスし、1冊読むだけで自分の作りたいアプリケーションが作れるようになることを目指して書かれた本です。

本書を書くにあたって、特に次のような点を意識しました。

  • ビルドツールの使い方や必須ライブラリの紹介、サンプルアプリケーションの作成といった内容を含む、よくあるプログラミングのhow-to本の構成にする
  • 新しいトピックを意欲的に取り込み、今現在の生きているHaskellを伝えられるようにする
  • 理論的な背景に踏み込み過ぎず、言語機能を使うユーザの立場で説明する
  • 複雑なGHC拡張の利用を最低限に留め、 Haskell 2010 Language Report の仕様の範囲内でできるだけ素朴にアプリケーションを作る

基礎を固めるためのチュートリアルはほどほどに、 とにかくまずは何か動くアプリケーションを作って、それを足がかりに学びたい という人に向いている本です。そういった意味では、先日発売された重城さんの Haskell 教養としての関数型プログラミング とは逆の思想を持って書かれた本であると言えます。

この本はもともと、YAPC::Asiaでレポーターとしてご一緒した技術評論社の野田さんに声をかけられて初めたものです。ただ、私はHaskellは昔から好きだったものの、自分一人では説得力のある本を書くのは難しいと考え、 ruiccさんちゅーんさん のお二方に声をかけました。Haskellに精通したお二方の協力により、なんとか完成までこぎつけることができました。

Haskellは学術のためだけの言語ではなく、品質の高い堅固なアプリケーションを作るために最適な言語です。ぜひ Haskell入門 を読んで、Haskellを使ったアプリケーションを作ってみて下さい。今でも最新の研究成果を貪欲に取り込み続けるHaskellに、きっと大きな刺激を受けることでしょう。


  1. 個人的には Real World Haskell が好きでした。