今の若い年寄りの人たちへ、非常に年寄りとなった僕から。

 これは、今の若い年寄りの人たち、三十代まだかろうじて前半のオタクっぽい人たちへの既に非常に年寄りになった僕から君たちへのメッセージです。今の若い年寄りの人たちは、安易に情報や結論やコミュニケーションやべたな巨乳に走りすぎている。僕はそれを見ていると、彼らの人生が非常に不安になります。いえ、オタクとしての人生が不安になるのではなく、真人間としての人生が不安になるのです。
 もうすぐバレンタインになります。この世代の8割くらいの人たちにとっては、彼氏がいたり彼女がいたり、旦那がいたり嫁がいたり、旦那がいなかったり嫁がいなかったり、旦那や嫁がいてもどっかにいっていたり、過去にひどい精神的な苦痛を異性受けたり(そういうのが好きでもないのに、ってか好きな人は話が別)、すごい誤解の中をただ耐えていたり、わけのわからない攻撃をべたな人から受けたりと、エラールーチンに飛ばしたくなるイベントの日です。でも、おそらく、この文章を読んでいるような非モテの年寄りや負け犬の女の子にとっては、また、来たか、うぜーといったイベントだと思います。僕もそうでした。この時期になると、け、日本にはろくなチョコレートないな、ゴディバって粉っぽいじゃん、ハーシーは論外でしょ、M&Mならキャラ付きでしょと思ったり、いや待て、今日に世界が終わるか分からないぞと天に祈ったり、空からパンツを履いていない女の子が降りてこないかな、と思うようになりました(そういえばそういう映画が昔ありました、キャンディだったっけ)。そして、毎年、期待は裏切られ、精神的外傷を強くおっていったのです。
 今、僕は、こうして自分の青春時代を含め、あるべき人生なんて無かったことにして、いかれた爺になりましたが、その嵌っている萌えポイントというのは、僕が思春期におったトラウマに大きく起因しています。負った傷が深くて大きいほど、小山ルミとか伊東ゆかりとか九重佑三子とか中村晃子とか奥村チヨとかとかお姉様萌えも大きくなります。僕が心配しているのは、今の若い年寄りがトラウマを克服するのを止めて本当の深い傷を体験することなく一生を終えてしまうのではないかということです。そんなのずるいじゃん。
 若い人たちへ。傷つくことを恐れないでください。傷を深めてください。貴方が現実世界で負った傷は、将来大きな負債になります。

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キャンディ: DVD: バック・ヘンリー,クリスチャン・マルカン,エヴァ・オーリン,マーロン・ブランド,ジョン・アスティン,リンゴ・スター,ジェームズ・コバーン,ウォルター・マッソー