反ノックス性について

【アンチノックス賞】ノックスの十戒にことごとく抵触するミステ… - 人力検索はてなについて、結果が発表されたので少し書く。


この賞は「ノックスの十戒を破戒する小説を書け」という主旨であったが、参照先の


ノックスの十戒すべての条項に抵触する小説。
  1. 序盤、犯人が読者の前に姿を現さない
  2. 超能力探偵
  3. 瞬間移動できる犯人
  4. いまだ実現できていない技術を利用した犯罪
  5. 中国人しか出てこない
  6. 偶然と必然がないまぜになっている
  7. 探偵が犯人
  8. 読者に推理の材料が与えられない
  9. ワトスンの推理が実は正解だった
  10. 登場人物が全員同一遺伝子を持つクローン人間で区別がつけられない

が非常に破戒的であり、これを満たす小説という困難に挑戦してみたくなったのでそのようにした。
「ノックスの十戒に抵触」ではなく「ノックスの十戒をひっくり返す」反十戒の遵守。これはこれで相当に破滅的なお題と言える。
既に賞の提唱者自ら上記を実践しており、これが相当なプレッシャーであったことは告白しておく。

まずは第5条を破るところから始めた。これは簡単な話だ、舞台が中国国内であれば登場人物は自動的にほとんど中国人となる。が全員が中国人であることを保証するためにどうすべきか、を考えた結論が「世界がすべて中国であれば良い」だった。それが1行目の科白で済まされている。
次に考えたのは第10条。この2条項が反ノックス性に於いて達成困難な部分であり、逆に言えばそれさえ満たしてしまえばあとはなんとかなる。
出題者は既に「世界中が全員クローンだった」を発表しているのでこの手は封じる。となればあとは逆パターンしかあるまい:つまり「全員が同一人物の別人格」だ。これがオチ。
あとひとつ、気になっていたのが1条+7条の合同条件である。これに従う限り、序盤に於いて探偵を登場させてはならない。単純に物理的な(文字列に対して物理的もなにもないものだが)登場のみならず存在言及すら否定されるべきだ。というわけでワトスン役が「探偵ならできる」と発言するまでの間、探偵はまったく登場しない。
あとは楽なもので、それ以外の条項は要約すると「筋書も何もなく無茶苦茶やって良い」という意味なので適当に散り嵌める。
が、必然的に風呂敷が拡がってしまうので収拾には苦労した。結果として苦し紛れに「別の話」へと逃げたのをしっかり指摘されている。まだまだ修行が足りない。