曖昧さ回避
概要
カブトムシ(甲虫、兜虫、角仙)とはコウチュウ目(鞘翅目)・コガネムシ科・カブトムシ亜科に分類される昆虫の標準和名及び総称。
狭義ではこの中の真正カブトムシ族に分類される属のみをカブトムシと呼ぶ。
ラテン語ではカブトムシ亜科は「Dynastinae」、真正カブトムシ族は「Dynastini」と表記される。
基準属はオオカブト属(Dynastes)。
基準種はヘラクレスオオカブト(Dynastes hercures)。
英語は「rhinoceros beetle」(サイの甲虫)と総称される(偶然にもサイカブトという同じ意味の名を持つ種が存在するが、サイカブト族に分類されるため狭義のカブトムシからは外れる)。
これらの名の示す通り、雄は往々にして立派な角を持つ。種によって異なるが、頭と背中(前胸背板)から角が生えて上下でセットになるのが普通でそれぞれ頭角、胸角と称される。
この角は餌場をめぐる他の昆虫との縄張り争いやメスの争奪戦などの際に、さすまたの様に突き出して相手をけん制したり、相手を下からすくい上げて投げ飛ばしたり挟んで持ち上げるために使われる。体の大きさに対してのパワーは非常に強く、体重の20倍の重量の錘を引っ張ることができる。車輪が付いていれば50倍の物体を引きずることも可能であり、これは人間に例えると60㎏の成人男性が3tのトラックを引きずり回すようなものである。
この角は蛹の段階で既に現れ、大きさは幼虫時代の育ち具合に大きく左右される。
一方、雌はコガネムシらしき姿で、角を欠き、もしくは非常に短い。また雌雄とも角を欠く種や、逆にサイカブト族には雌も角を有する種も存在する。
日本では「Trypoxylus dichotomus」という種を単に「カブトムシ」といい、本種から細分した亜種、および他の種は習慣的に「○○カブト」と呼ぶ。
種としてのカブトムシは「ヤマトカブト」、「国産カブト」と呼ぶこともある。
また、種としてのカブトムシと区分できるように、総称としてのカブトムシ=カブトムシ亜科そのものは「カブトムシ類」ともいう。
また、カブトムシの古称には『サイカチムシ』という物があるが、これは槐という木の樹液によく集まるからだと言われている。
カブトムシは益虫ではなく、害虫としても成虫が夏限定で出現して果樹園の果物を荒らす程度程度なのでそもそも研究する必要性が薄く、未知の部分が多い。
余談
- カブトムシとスイカ
スイカを与えたら腹を壊す・・・とよく言われるが俗説である。
カブトムシ(に限らず節足動物全般)は我々ヒト等と全く体の構造が違う為、スイカを与えても下痢を起こすようなことはない。
ただしスイカは水分が多く腐りやすいために、カブトムシを飼う虫かごの中に置くと高湿度になりやすく腐って雑菌が湧きやすい。その点からあまりカブトムシに与えるエサとしては向いていない。またそのような不衛生な環境におかれたカブトムシは病気になってしまう。
その上栄養価はゼロに等しい為、カブトムシの飼育はできる限り管理が容易な昆虫ゼリーを与えるのが好ましい。
また昨今ではスイカがカブトムシに悪いというのは、冷蔵庫で冷やされたものを与えるからでないかとも言われており、急激な温度変化により体調不良を起こすのではないかと言われているが定かではない。
カブトムシ採集を行う場合に誘き寄せる餌としては、焼酎をかけたバナナを麻袋やネットに入れて雑木林に吊るしておくと集まりやすい。食べた後のメロンを置いておくとスイカよりも集まると言われる。
- カブトムシと幼虫
繁殖後の幼虫飼育はクワガタムシに比べると難易度が低いものの、やはりそれなりの苦労はある。飼育マット(腐葉土に近い木屑を粉砕したもの)を幼虫はもりもり食べて成長する為、それを見越して翌年サナギになるまでは多めにストックして、乾燥に注意しながら直射日光の当たらない陰で飼育マットに水分を適度に与える事がコツである。
- カブトムシとスズメバチと樹液
野生での環境で樹液を吸いに来る時等に両者が鉢合わせする事がある。一見体格やパワー、硬い甲殻を持つカブトムシにはいかに大型の蜂であるスズメバチであろうと手が出せないように思えるが、とある目撃談によると早朝に木に群がるカブトムシの集団を後から来たスズメバチの集団が、足に噛みついて木から引き剥がして片っ端から地面に落とし、樹液を独占していたとのこと。
カブトムシは確かに甲殻と怪力と大きさではスズメバチを凌ぐが、体が重くて動きが遅く飛ぶのも下手であるため、機動力ではスズメバチに分がある。更にスズメバチはカブトムシに及ばずとも蜂としては大型の体格とパワーを持ち、尚且つ蜂どころか昆虫全体で見ても1.2を争う程の獰猛な性質で有名である。その為か場合によってはカブトムシを木から落とすだけでは飽き足らず、地面に落とした後も執拗に攻撃を加える事もあるらしい。これについてはスズメバチは元々が、肉食の傾向が強い種(成虫は肉を食べないが幼虫の主食は肉である)なのでカブトムシを殺してその肉を得られれば樹液も独占できて正に一石二鳥であるという利点があり、立派な生存戦略として成り立つ。
これらの事から一説にはカブトムシが夜行性なのは凶暴なスズメバチとの遭遇を避けている(蜂は基本的に昼行性)からではないかと言われている。
しかし、凶暴なスズメバチといえど樹液の争奪戦においては最強というわけではない。
昆虫の中にはカブトムシだろうとスズメバチだろうと積極的に攻撃して追い払って樹液を独占し、鳥に邪魔されようとも全く恐れず、逆に小鳥程度なら追い回して撃退してしまうような勇猛な(もしくは食い意地が張った)昆虫もいたりする。
文化
その勇ましい姿から日本では古今を問わずクワガタと並んで男の子に大人気であり、様々な媒体を通して親しまれている。
昆虫相撲
オスのカブトムシやクワガタムシを戦わせて、対象をひっくり返す、または場外に叩き落とす事で勝敗を決めるというものだが、自発的にカブトムシやクワガタムシが自発的に戦う場合でもこう呼ぶことがある。いわゆるアナログ版ムシキング。
日本では夏の風物詩とされるが、タイ王国にもヒメカブトを戦わせる『メンクワン』なるよく似た競技が開催されている。
- なお、実際にやるとカブトムシ・クワガタムシに限らず体力を消耗させたり負傷させたりする事もあり、結果的に寿命を縮めるので飼育の観点から推奨はされない。
昔話
カブトムシが登場する昔話も勿論存在するが、我々の言うカブトムシを指さない事が多い。
というのも海外でbeetleというと大雑把に甲虫を指す言葉なので、日本語で「かぶとむし」と翻訳されていても、大抵はカブトムシ以外の甲虫である事が殆どである。
ギリシャ神話に登場する羊飼いケラムボスが化身した「カブトムシ」は名前や性質からクワガタムシやカミキリムシである可能性が高く、イソップ童話「ワシとカブトムシ」に登場するカブトムシもカブトムシ亜科を指す名称ではない。
(子供向けの絵本やアニメなどではわかりやすさを優先して上記の「ヤマトカブト」の姿で表される事もある。)
そもそも欧州にはあまりカブトムシ亜科はあまり生息していない上、知名度も低い種ばかり。それっぽい外見のダイコクコガネ辺りは生息しているが…日本への輸入もされていない。
世界の代表的なカブトムシ
※詳細は「カブトムシの一覧」を参照。
各言語での呼び名
言語 | カナ表記 | 綴り |
---|---|---|
イタリア語 | スカラベーオリノチェロンテ | Scarabeo Rinoceronte |
英語 | ライナサラスビートル | Rhinoceros Beetle |
オランダ語 | ノウスホールンケィヴァー | Neushoornkever |
スペイン語 | エスカラバホリノセロンテ | Escarabajo Rinoceronte |
ドイツ語 | リーゼンケーファー | Riesenkäfer |
フランス語 | スカラベリノセロス | Scarabée Rhinocéros |
アジアの言語 | ||
インドネシア語 | クンバンバダ | Kumbang Badak |
パンパンガ語 | ウアン | Uang |
韓国語 | チャンスプンデギ / チャンスプンデンイ | Jangsu Pungdeng'i / 장수풍뎅이 |
タイ語 | ドゥアングワーン | Duang Kwang / ด้วงกว่าง |
中国語 | 兜蟲(トウチョン) | Douchong |
ベトナム語 | キエンヴオン | Kiến vương |
アフリカの言語 | ||
スワヒリ語 | キファルメンデ | Kifaru Mende |
アメリカの言語 | ||
ナバホ語 | チェスチャーツォ | Chéłchaaʼtsoh |
ナワトル語 | アテテピツトリ | Atetepitztli |
人工言語 | ||
アルカ | カポク | Kapok |
アルベド語 | アズソツキ | Azusotsuki |
オーレー語 | アケクソメリプユワフアエ | A-cexomelipuyuwahuae |
グロンギ語 | バヅドルギ | Bazudorugi |
ソルレソル | ドレファレミドレドシファ(フランス語の語順) / ドレドシファドレファレミ(英語の語順) | Dorefaremi Doredosifa / Doredosifa Dorefaremi |
ひんたぼ語 | キペナメス | Kipenamesu |
カブトムシをモチーフにしたキャラクター
漫画やアニメ、ゲームなどでは主役として扱われる事が多く、子供に人気な昆虫なだけあって味方側や強力な敵といった傾向が強い。
昆虫モチーフが避けられる戦隊ヒーローでは例外的にクワガタムシと並んでよく採用される。
(機能のない)脚が出っぱなしか、タイヤにするか、矮小化され、苦労が見られる。
玩具の部品分割の都合だろうが、油圧アーム(風)にするというアイディアは、
まず見られない(´ω`)。
特撮
ウルトラシリーズ
仮面ライダーシリーズ
昭和ライダー
平成ライダー
平成一期
- ゴ・ガドル・バ(仮面ライダークウガ)
- ビートルロード(仮面ライダーアギト)
- ライノセラスビートルオルフェノク(仮面ライダー555)
- 仮面ライダーブレイド・ビートルアンデッド・コーカサスビートルアンデッド(仮面ライダー剣)
- 仮面ライダーカブト・カブトゼクター・ハイパーゼクター・仮面ライダーダークカブト・ダークカブトゼクター・仮面ライダーヘラクス・仮面ライダーケタロス・仮面ライダーコーカサス・カブティックゼクター(仮面ライダーカブト)
- ビートルファンガイア・ボスローチ・ディケイドブレイド・ディケイドカブト・ゼクターカブト・ストロングゼクター(仮面ライダーディケイド)
平成二期
- ビートルフォン(仮面ライダーW)
- カブトヤミー(仮面ライダーOOO)
- ヘラクレス・ゾディアーツ(MOVIE大戦アルティメイタム)※正確にはヘラクレス座
- ブレイドアームズ・カブトアームズ(仮面ライダー鎧武)
- ブレイド魂・カブト魂(仮面ライダーゴースト)
- ブレイドゲーマーレベル2・カブトゲーマーレベル2(仮面ライダーエグゼイド)
- ビートルカメラフォーム(仮面ライダービルド)
- アナザーブレイド・アナザーカブト・ブレイドアーマー・カブトアーマー(仮面ライダージオウ)
令和ライダー
- アメイジングヘラクレス・アメイジングコーカサス・仮面ライダーサウザー(仮面ライダーゼロワン)
- 仮面ライダーベイル・仮面ライダーデストリーム ヘラクレスゲノム(仮面ライダーリバイス)
- ビートルクス・仮面ライダースターガッチャード (仮面ライダーガッチャード)
スーパー戦隊シリーズ
昭和戦隊
平成戦隊
20世紀平成戦隊
21世紀平成戦隊
- カブトライジャー ・轟雷神(忍風戦隊ハリケンジャー)
- 臨機兵ブトカ(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
- ショウキャクバンキ(炎神戦隊ゴーオンジャー)※頭部の角部分
- 兜折神(侍戦隊シンケンジャー)
- ゴセイカブト(天装戦隊ゴセイジャー)
- ビートバスター・ビート・J・スタッグ・BC-04 ビートル/ゴーバスタービート・メガゾードδ・ゴールドビートル・にせビートバスター(特命戦隊ゴーバスターズ)
- アリエナイザーX(特捜戦隊デカレンジャー 10years after)
令和戦隊
メタルヒーローシリーズ
その他特撮
- アゴン(仮面の忍者赤影)
- メガロ(ゴジラ対メガロ)
- ガエンボー(サンダーマスク)
- カブトロン(アイアンキング)
- オニカブトン(光の戦士ダイヤモンド・アイ)
- カブトギラー(ザ・カゲスター)
- カブトン(東映版スパイダーマン)
- ジュピタービット(電脳警察サイバーコップ)
- テラガイヤー(電光超人グリッドマン)
- スカラベス(七星闘神ガイファード)
- セイザーレムルズ(超星神グランセイザー)
- ビートルセイザー(超星艦隊セイザーX)
ゲーム
- スティーブン・ゴールドバーグ(ブラッディロア)
- ヘラクロス、メガヘラクロス、カブルモ※1(ポケットモンスター)
- ビートルカービィ、ビートリー、ヘルメホーン(星のカービィ)
- フタクチカブト、オオユキカブト(ピクミンシリーズ)
- ビートロン(ロックマンX2)
- グラビティー・ビートブード(ロックマンX3)
- ビークロン(モンスターファーム)
- かぶとこぞう、ホーンビートル、スカラベーダー(ドラゴンクエスト)
- カンタロス(モンスターハンターシリーズ)
- ビートルーダー・バイオタンク(メタルマックスシリーズ)
- ヘラクレス(スーパーマリオランド2 6つの金貨)
- ぼくのなつやすみ:シリーズ通して上記の昆虫相撲(作中では虫相撲)が再現されている。
- イッシャク(大神)
- ぱんつぁーびーとる)サンサーラ・ナーガ)
- ブンブーン(MOTHER2)
- ムシムシマン(ぞくぞくヒーローズ)
※1:マイマイカブリがモチーフとの説も。
デジタルモンスター
メダロット
漫画・アニメ
- 阿修羅カブト(ワンパンマン)
- 奇械人スパーク(仮面ライダーSPIRITS)
- 斎藤さん(伝染るんです。)
- コーポさん
- ランサメント(武装神姫)
- ゼクトール(強殖装甲ガイバー)
- パンツァービートル(銀河鉄道999)
- コーカサスマン(キン肉マン)
- カブトロン(科学忍者隊ガッチャマン)
- イチロー将軍(夜ノヤッターマン)
- カブトボーグ(人造昆虫カブトボーグVxV)
- ビートマ(冒険遊記プラスターワールド)
- フライビートル(爆丸)
週刊少年ジャンプ作品
トランスフォーマー
- ボンブシェル(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー)※海外ではゾウムシということになっている
- モーターアーム(ビーストウォーズⅡ)
- クロムホーン(トランスフォーマースーパーリンク)
- セイバーホーン(トランスフォーマーアドベンチャー)
その他ロボットもの
その他カブトムシが出演する作品
関連人物
実在人物
キャラクター
- 神楽(銀魂):少年はカブトムシを通し生命の尊さを知る
- 兜鍬光(Mr.FULLSWING):常にカブトムシと戯れている。名字の「かぶくわ」はカブトムシとクワガタムシが由来。
- 城ヶ崎莉嘉(アイドルマスター):カブトムシを好む女子中学生。真冬だろうが、都心だろうが捕まえて来る情熱はハンパではない。
- ブッキー(スーパーマリオRPG):カブトムシ好きな人物。
- ポポ(甲虫王者ムシキング)
- テラフォーマーズ:小説版『THE OUTER MISSION』にてゾウカブトの能力を持った人物が登場。
キャラクターのモチーフとしての扱い
男の子向けの作品ではだいたい登場する。また当たり前ではあるが、大半は雄しか登場しない。
関連イラスト
関連タグ
表記揺れ
他
人物や神々がカブトムシの種名になる事が多い。ただし、ギリシャにいない種にばかり付けられる。これは真性カブトムシ族に属する種がヨーロッパでは見られないためであるが。
拠点や狩猟フィールドなど、すごくわかりにくい場所にカブトムシが隠れていたりする。
『ジョジョの奇妙な冒険』における「天国」へ行く方法のうちの1つ、14の言葉にカブトムシが4つ含まれている。