「ISIS」はこの記事に転送されています。 ISISの他の用法については「アイシス」を参照のこと。 |
ISIL(アイシル)、または ISIS(アイシス)とは、主にイラクとレヴァント地方(歴史的シリア。アラビア語でシャーム)で活動しているスンニ派イスラーム教原理主義組織である。
ISILとISISはどちらも略称であり、正式名称は以下の通りである。しかし、組織の呼び方については議論があり、国家でもメディアでも呼び方が異なる。 → 「名称について」の項を参照。
現在のイスラーム諸国の国境線は、欧米列強が過去にサイクス・ピコ協定に基づき、無理矢理分割したものであり無効と主張している。武力に基づくイスラーム諸国統一を目指し、日々シリア及びイラク国内で支配地域を拡大している。指導者のアブー・バクル・アル=バグダーディーを預言者ムハンマドの後継者を意味するカリフ(教主)と称し、世界の全イスラム教徒が彼に従うべきであると主張している。このためイスラム・カリフ国(Islamic Caliphate)を自称することもある。
前身は近代化を志向するヨルダン王家の転覆を謳って1999年に誕生した「唯一神信仰・奮闘機構」で、これが2003年にイラク戦争の敗戦により落ち延びた旧フセイン政権の残党を幹部に迎え、国際テロ組織アル=カーイダと合流してその一派(セクト)として「メソポタミアの奮闘アル=カーイダ機構」に改称して反米活動を展開する(俗称の「イラクのアル=カーイダ機構」(Al-Qaeda in Iraq, AQI)の方が一般的である)が、親組織のアル=カーイダでさえも距離を置く程に残虐性が際立つイスラーム教過激派組織とされる。
また、原点回帰思想(サラフィー主義)に基づいたシーア派撲滅にも重点を置き、しばしばシャーム(レヴァント)地方への侵攻を繰り返す。2006年頭にはサラフィー主義ジハード派の5組織以上を傘下に収めて「イラク闘士諮問委員会」を結成、同年秋には完全合併を果たして「イラクのイスラム国」に改称する。2011年からのアメリカ軍のイラク撤退と、2010年からの中東諸国民主化運動の「アラブの春」による影響でシリアが内戦状態だったことに便乗してシャーム(欧州での呼称はレバント)地方へ勢力を拡大、2013年に「イラクとシャーム(またはレバント)のイスラム国」を名乗った。
2014年6月、イラク第2の都市モスルを制圧して国家樹立を宣言。同時に「イスラム国」に改称した。2015年にはシリア北部の都市ラッカ(الرقة, Ar-Raqqah)を首都と称し、本来はシリアとイラクに帰属する領土の約3分の1を実効支配。国旗(※ただし他のアル=カーイダ系組織でも共有されているもの)以外にも国歌や独自通貨(単位はディナール)、独自パスポート等も発行した。
2020年の時点では死亡したバグダディに代わりアブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クラシが新しい指導者になっている。また、シリアやイラクにおける支配地は喪失しているが、両国に約1万人の戦闘員を擁しており、資金も約1億ドルを保持しているとされる。[1]
当初はアルカイダの一分派だったが、複数の組織と統合して勢力を増すうちに「地域名称 + イスラム国」を名乗り始め、最終的に「イスラム国(Islamic State)」のみに変更した。地域名称を廃したことにより「世界的に普遍な地位を持つイスラム教国家」という意味合いを主張しているのである。
しかし各国の多数派イスラム団体は彼らのイスラーム性を否定的にとらえており、また国際的にも独立国家として承認されているわけではない。
このため改称後も、各国政府機関等ではISIL側の意図を否定し、多数派イスラム教徒の主張を認めるため、旧称の略語である「ISIS」「ISIL」に相当する各国語、または支配地域内の反対派による旧称の頭文字語ダーイシュ(داعش, DĀʾISh, 英語: DAESH)を用いている。しかし、報道等では既に定着した「イスラム国」相当の各国語を「(テロ組織)」などの註釈付きで使用することが多い。
日本を始め各国の報道では自称のアッ=ダウラ・アル=イスラーミーヤとその英訳「The Islamic State」および頭文字語の「IS」に基づく各国語訳が広く浸透している都合上そのように呼称されることが多く、日本でも「イスラム国」と呼ばれることが多い(ネット上では「イスラーム国」も見られる)が、大抵の場合『過激派テロ組織「イスラム国」』のように註釈や括弧付きで表現されることが多い。しかしメディアによる呼称の是非については各所でさまざまな議論があり、ウィキペディア日本語版等でも激しく議論されている。概要も参照のこと。
占領済み地域において一方的に国家樹立を宣言し国と自称しているが、イスラーム教徒の多い周辺諸国を含めて国際的には独立国家と認められておらず、またエジプトのファトワー庁は海外メディアに対し、イスラーム全体への偏見助長を懸念して The Islamic State に相当する名称自体の使用自粛を呼び掛けており(これを受けNHK等では基本的に「イスラム国」を使用していない)、イラクおよびシリア国内のISIL反対派は旧称の頭文字語であるダーイシュ(داعش, DĀISh)を侮蔑的なニュアンスで用いている。
当項目では国連・アメリカ政府・日本政府による公称であるISILを項目名とする。
資金は非常に豊富であるとされる。資金源は、銀行略奪、石油販売(制圧した石油施設のもの)、ジャーナリスト等の外国人誘拐に対する身代金請求などである。1日辺りの収入は、1〜2億円あると言われる[2]。ただし後述のように実際に現地に足を運んだ日本人イスラーム学者中田考氏は上記インタビュー記事で、「金銭的な余裕はない」との印象を受けた、と語っている。
外国人だけでなく支配地域の現地住民に対しても、自分たちに従わない者や少数民族は処刑・虐殺し、女は性奴隷として連行する、またその際に略奪を働くなど、非人道的で苛烈な弾圧を行っているとされる[3]。
アブー・バクル・アル=バグダーディーを最高指導者としており、幹部にはサダム・フセイン政権時代の軍人や政治家が多数就任しているとされる。
勢力範囲はシリア・イラクにまたがって広がっているため、両方の国から元軍人なども参加しているらしく、ISILでも軍隊のノウハウが組織内に伝わり戦闘能力が向上しているとされている(NHK報道より)。
2017年、東南アジアで勢力を拡大。フィリピン南部ミンダナオ島マラウィ市の約20%を支配下に置いた。6月16日に、オレンジ色の“囚人服”を着せられた人質6人を処刑した動画を、ニュースサイト「Best Gore」公開した[4]。
また、SNSや動画投稿サイトなど、インターネットを駆使した情報作戦も展開している[5]。好印象や残虐性を植え付けることはもちろん、過激思想に染まった外国の若者(主にシリア・イラク以外のイスラーム教徒)をネットを通じてISILでの闘争(ジハード)に駆り立てようとしており、その規模は世界80カ国以上から1万5千人以上の外国人戦闘員として参加しているとされる。
ネット以外でも、先進国にいるイスラーム教徒のなかで、社会になじめず孤立した者や、差別・迫害を受けて憎しみを抱いている者などを狙って勧誘しているらしい。先進国側の調査でも過激派へ呼び込むスカウトが自国内にいるところまではわかっているが、その人数や規模、拠点については把握し切れていないのが実情である(朝日新聞より)。
2015年2月には、韓国人の少年がISILに参加している可能性が浮上した(それも中東出身者ではなく純粋な韓国人である)[6]。日本にもISIL関係者の可能性があるTwitterアカウントから英文で勧誘された者がおり[7]、もはや海外のイスラム教徒や中東出身者にこだわらず各国の人間に幅広く募集をかけているようだ[8]。
ISILによる非人道的行為抑制、従来の国境線奪還を目的とした、有志連合によるISIL占領地域での空爆が行われている。有志連合には、アメリカを中心とした欧米諸国やサウジアラビア、ヨルダンなどのイスラム諸国の軍隊が参加している。イラク領内ではイラク政府に軍事的支援を求められた形(集団的自衛権)で行われている。
イラク国内ではシーア派・スンニ派・クルド人の連立政権や、欧米諸国・サウジアラビアとイランの会談などが行われている。普段不仲である国同士が、ISIL打倒の為に「敵の敵は味方」のような外交が展開されている。
しかし現在、新たな問題も発生している。
戦闘機による空爆は、石油施設の破壊で資金源を絶つなど一定の効果を上げているものの、大きいレベルでのダメージはあまり与えていないため、壊滅には時間がかかると思われる。アメリカでは地上戦への兵力投入が何度か検討されているが、(犠牲者が増える可能性を問題視しているのか、泥沼化を忌避しているのか)未だ確定に至っていない。オバマ大統領からは地上戦用の兵力を投入する決議案が議会に提出されている[9]。
アメリカはイラクとの関係を重視しているが、クルド人自治区の独立を認めないイラク中央政府への接近はクルド人からの不信を招いている。2014年6月にクルド人部隊が北部の都市キルクークを制圧しISILから解放することに成功したが、「キルクークはクルドの土地である」として、キルクークをイラク中央政府に明け渡す意思がないことを明言した[10]。
トルコとカタールはやや中立的な姿勢を見せている。アメリカでは過激派組織として指定されている「ハマス」およびエジプトで支持を失った「ムスリム同胞団」は、いずれもカタールでは容認されており、それらを排除したエジプトとエジプトを支持するアメリカはカタールにとっては好ましくない相手として扱われており、アメリカはカタールが過激派組織に資金援助を行っているものとして扱っている。
特にトルコは、シリア・アサド政権を存続させる方針に転換したアメリカに反発して、有志連合とは別に独自の戦いを行っていく姿勢を打ち出している。アメリカはトルコ国境からのISIL参加者が多いことからトルコの国境管理について問題視しており、双方の溝が埋まらない状態となっている[11](というかISIL参加者のシリア入国を"意図的に"黙認している疑惑が出ている。アサド政権打倒のためか?)。
それに加えて近隣の国家同士でもめるケースも発生している。2014年12月に、イランがイラク領内にて空爆を行い、同じくイスラエルもシリア領内で空爆している。また、その前の10月にはトルコがシリアへの越境作戦を議会にて承認しており、いずれも同じISILを相手にしているはずなのに、その内容は相手国領内への攻撃であるため、やられた側がその行為を敵対行為と見なして非難・抗議するなど、連携にばらつきがある[12][13]。
2015年2月には、エジプトがカタールを「テロ支援国家」呼ばわりしたことで、駐エジプト大使がカタールに召還されるという事態が起きている[14](国際慣習上、自国に大使を戻すのは相手の行為に対する対抗措置・報復・抗議の意志を示している)。
2014年10月6日、北海道大学の男子学生がISIL戦闘員を志願していたとして、当学生とその関係者が警視庁公安から事情聴取と家宅捜索を受ける[15]。私戦予備罪・私戦陰謀罪の容疑。秋葉原の古書店に掲示されていた「勤務地シリア」の求人票に誘発され応募。そしてシリアへの渡航を画策し、都内のアパートでアラビア語を勉強していたとされる。
日本国政府は、避難民の人道的支援を行う方針である。[16]UNHCR(国連高等弁務官事務所)を通じた約27億5400万円の資金的援助のみを行い、アメリカを中心とした軍事行動・有志連合には参加しない方針である。
2015年1月、安倍晋三首相は中東諸国(エジプト・ヨルダン・イスラエル・パレスチナ自治区)を歴訪した。歴訪中の1月17日、エジプトにおいて、中東全体に対し25億ドル(約2,940億円)の支援を表明した。この25億ドルのうち2億ドルは「イスラム国」への対応が目的とし、シリア・イラクなどの関係国や周辺国の難民支援に寄与される無償資金協力である。この際首相は「イスラム国の脅威を僅かでも食い止める」と演説している[17]。
翌日18日、ヨルダンのアブドゥッラー2世と会談し、ヨルダンに対し120億円借款と30億円の無償資金供与を行う旨を発表した。「イスラーム国」対策として隣国ヨルダンは多数の難民を受け入れており、それが財政上の負担となるためである[18]。
2014年8月18日、自称・民間軍事会社CEOの男性が拘束された。日本のイスラーム学者中田考氏は、日本人人質に対して公正な裁判をしたいので翻訳を頼みたい、とのISILからの依頼により、2014年9月にISIL支配地域に足を運んだ、とインタビュー記事で語っている[19]。しかしその際には空爆の影響で実際には会えなかったとのこと。※2015年1月にフリージャーナリストを加えた2名の日本人の解放と引き換えに身代金を要求するという事件が発生したが、最終的にこの2名は殺害された。→ 日本人男性2名身代金要求人質事件
2014年8月19日、アメリカ人ジャーナリストの一人が斬首により殺害された。ISILは1億ドル(約100億円)の身代金を要求していたが米国政府は拒絶していた。外国人人質は他にも多数存在していたと見られる。
2015年11月13日、フランス・パリにおいて、同時多発テロ事件が起こり、400名以上が犠牲となった。事件は、「ISIL(イスラム国)の犯行だ」と断定された[20]。ISIL(IS)の実行犯は声明を出した。「テロはまだ終わってない」と[21]。2015年12月22日、パリテロ事件の首謀者に近い人物と、ISILの資金調達を任務にしているとされる重要人物が「日本に入国した」と報じられた[22]。AP通信(2016年3月24日の段階で)に拠れば、400名のISILのメンバーが、海外に派遣されたという[23]。
ISIL(ISIS)は、入国管理や警戒が甘い国(例→日本)を狙って入ってきている[24]。
2019年3月、シリアに最後まで残っていたISの拠点をSDF(シリア民主軍)が解放し、支配地を全て失っている。[25]
2019年10月、米軍がシリア北西部にある、ISISの最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の隠れ家を襲撃、バグダディは自爆ベストによって自爆したと発表した。[26]2022年2月には、後任のIS最高指導者アブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashimi al-Quraishi)の居宅をアメリカの特殊部隊が襲撃、クラシは自爆したと公表している。[27]
掲示板
2495 ななしのよっしん
2024/03/30(土) 16:43:37 ID: l+KWZv+ZPL
ISILやアルカイーダは裏でこっそり石油王の支援を受けているから
援助を引き出す為のどれだけ凄いテロを起こしたかのアピール合戦になっちゃうんだよね
2496 ななしのよっしん
2024/03/31(日) 00:49:26 ID: aDSwlir6IJ
ロシアによるウクライナ侵略はプーチンが脳卒中なりで死ねばワンチャン収まる可能性があるけどテロリストが自信つけるのは後の世が乱れるのが確実になるのでマジで勘弁してほしい
ホント余計な事しかしないなあのハゲ
2497 ななしのよっしん
2024/08/24(土) 00:11:28 ID: fvOMtYvH1j
ロシアで刑務所を受刑者らが占拠 「イスラム国」のメンバーか 職員少なくとも1人死亡
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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