2件
概要
江戸幕府においては、各地を治める大名とは別に将軍直属の家臣である旗本・御家人といった存在がいた。
その中でも老中のもとで幕府の儀式・式典といった式部をつかさどり、対朝廷工作などを行う役職に就いたのが高家である。慶長8年（1603年）に大沢基宿に征夷大将軍宣下の式典作法を管掌させたのがその起源とされている。
また高家の中でも現職のものを奥高家、非役のものを表高家という区分に分けられ、奥高家の中から月番で3人のものが肝煎として殿中で職務を行った。またその他にも徳川家宣、徳川家継の代にのみ置かれた側高家、慶安3年（1650年）に大沢基隆、品川高如、上杉長貞が任じられた西丸高家、一代のみ高家となる一代高家などもあった。
おそらく日本人にとって高家として最もピンとくる存在が忠臣蔵の吉良上野介こと吉良義央であるが、こうした高家はその職務から高い家柄のものから選ばれており、旗本の中でも大名並みの高い官位につくことが多かった。
なお石高を見ればわかる通り大名と比べるとはるかに少禄で、維新後かろうじて八家が華族になった交代寄合とも異なり全ての家が士族として近代を迎えることとなり（大沢家は石高を偽って申請したがのちに露見して士族となった）、今川家のように維新後まもなく家が断絶するなど江戸幕府の消滅で歴史の表舞台から去っていくこととなった。
高家一覧
下に高家それぞれの家の簡易な解説をまとめる（赤色の矢印は養子関係、青色の矢印は嫡孫相続）。
幕末維新期まで存続した26家
公家出身
| 家名（石高） | 出自 | 歴代 |
|---|---|---|
| 有馬家（600石） | 村上源氏の久我通名の子息 | 初代：堀川広益→2代：有馬広之→3代：有馬広春 →4代：有馬広寿→5代：有馬広憲→6代：有馬広衆 →7代：有馬修理（諱不明） |
| 大沢家（600石） | 中御門流の持明院基時の子息 | 初代：大沢元貫→2代：大沢基清→3代：大沢基業 →4代：大沢基季→5代：大沢基靖→6代：大沢基休 →7代：大沢基道→8代：大沢基恭 |
| 中条家（1000石） | 高倉流の樋口信孝の次男 | 初代：中条信慶→2代：中条信実→3代：中条信秀 →4代：中条信敬→5代：中条信義→6代：中条信徳 →7代：中条信礼→8代：中条信汎 |
| 戸田家（700石） | 村上源氏の六条有純の子息 | 初代：戸田氏豊→2代：戸田氏興→3代：戸田氏尹 →4代：戸田氏富→5代：戸田氏朋→6代：戸田氏倚 →7代：戸田氏敏→8代：戸田氏範→9代：戸田氏貞 |
| 長沢家（1400石） | 日野流の外山光顕の次男 | 初代：長沢資親→2代：長沢資祐→3代：長沢資武 →4代：長沢資始→5代：長沢資摸→6代：長沢資言 →7代：長沢資寧 |
| 日野家（1530石） | 日野家当主日野輝資[1]から分立 | 初代：日野輝資→2代：日野資栄→3代：日野資成 →4代：日野資鋪→5代：日野資陽→6代：日野資直 →7代：日野資施→8代：日野資邦→9代：日野資敬 →10代：日野資訓 |
| 前田家（1400石） | 閑院流の押小路公音の次男 | 初代：前田玄長→2代：前田房長→3代：前田清長 →4代：前田珍長→5代：前田長皓→6代：前田長義 →7代：前田長徳→8代：前田長礼 |
| 前田家（1000石） | 菅原氏の高辻長量の次男 | 初代：前田長泰→2代：前田長敦→3代：前田長禧 →4代：前田長英→5代：前田長粲→6代：前田長年 →7代：前田長猷 |
| 六角家（2000石） | 日野流の烏丸光広の次男 | 初代：六角広賢→2代：六角広治→3代：六角広豊 →4代：六角広満→5代：六角広雄→6代：六角広孝 →7代：六角広體→8代：六角広恭 |
武家出身
| 家名（石高） | 出自 | 歴代 |
|---|---|---|
| 今川家（1000石） | 足利氏支流駿河守護今川氏の子孫 | 初代：今川氏真→2代：今川直房→3代：今川氏堯 →4代：今川氏睦→5代：今川範高→6代：今川範主 →7代：今川範彦→8代：今川義泰→9代：今川義彰 →10代：今川義用→11代：今川義順→12代今川範叙 |
| 上杉家（1490石） | 能登畠山氏の畠山義春[2]の次男 | 初代：上杉長員→2代：上杉長政→3代：上杉長貞 →4代：上杉長之→5代：上杉長宗→6代：上杉義陳 →7代：上杉知義→8代：上杉義枝→9代：上杉義寿 →10代：上杉義長→11代：上杉義達→12代：上杉義正 →13代：上杉義礼→14代：上杉義光→15代：上杉義順 |
| 大沢家（3550石） | 遠江の旧今川家臣 | 初代：大沢基宿→2代：大沢基重→3代：大沢基将 →4代：大沢基恒→5代：大沢基隆→6代：大沢基朝 →7代：大沢定寧→8代大沢基之→9代：大沢基昭 →10代：大沢基暢→11代大沢基寿[3] |
| 大友家（1000石） | 豊後守護大友氏の子孫[4] | 初代：大友義孝→2代：大友義閭→3代：大友義武 →4代：大友義珍→5代：大友義方→6代：大友義智 →7代：大友義路→8代：大友義敬 |
| 織田家（2700石） | 織田信雄系の織田高長の3男 | 初代：織田長政→2代：織田信明→3代：織田信栄 →4代：織田信之→5代：織田信味→6代：織田信存 →7代：織田信愛→8代：織田信徳 |
| 織田家（2000石） | 織田信長7男 | 初代：織田信高→2代：織田高重→3代：織田一之 →4代：織田信門→5代：織田信倉→6代：織田信直 →7代：織田長孺→8代：織田長裕→9代：織田信貞 |
| 織田家（700石） | 織田信長9男 | 初代：織田信貞→2代：織田貞置→3代：織田長迢 →4代：織田長能→5代：織田長説→6代：織田信錦 →7代：織田信由→8代：織田信順→9代：織田信恭 →10代：織田信任 |
| 京極家（1500石） | 旧四職京極氏の改易された宮津藩主系[5] | 初代：京極高矩→2代：京極高甫→3代：京極高本 →4代：京極高厚→5代：京極高以→6代：京極高正 →7代：京極高福 |
| 吉良家（蒔田家） （1420石） |
足利氏支流義継系[6]奥州吉良氏 | 初代：蒔田頼久→2代：蒔田義祇→3代：蒔田義成 →4代：吉良義俊→5代：吉良義所→6代吉良義豊 →7代：吉良義房→8代：吉良義発→9代：吉良義方 |
| 品川家（300石） | 今川氏真次男 | 初代：品川高久→2代：品川高如→3代：品川伊氏 →4代：品川範増→5代：品川信方→6代：品川氏如 →7代：品川氏長→8代：品川氏維→9代：品川高美 →10代：品川言氏→11代：品川高尚→12代品川氏繁 →13代：品川氏恒 |
| 武田家（500石） | 武田信玄次男竜芳の子孫 | 初代：武田信興→2代：武田信安→3代：武田信明 →4代：武田護信→5代：武田信典→6代：武田信之 →7代：武田崇信 |
| 土岐家（700石） | 美濃守護土岐頼芸4男 | 初代：土岐頼元→2代：土岐持益→3代：土岐頼長 →4代：土岐頼元→5代：土岐頼常→6代：土岐頼恭 →7代：土岐頼方→8代：土岐頼庸→9代：土岐頼之 |
| 畠山家（5000石） | 足利氏支流管領政長系畠山氏 | 初代：畠山政信→2代：畠山基玄→3代：畠山基祐 →4代：畠山国祐→5代：畠山政如→6代：畠山国儔 →7代：畠山国祥→8代：畠山基利→9代：畠山基徳 →10代：畠山基永 |
| 畠山家（3120石） | 足利氏支流能登畠山氏 | 初代：畠山義春→2代：畠山義真→3代：畠山義里 →4代：畠山義寧→5代：畠山義躬→6代：畠山義紀 →7代：畠山義福→8代：畠山義一→9代：畠山義宣 →10代：畠山義勇 |
| 宮原家（1140石） | 山内上杉氏養子の足利氏子孫[7] | 初代：宮原義照→2代：宮原義久→3代：宮原晴克 →4代：宮原義辰→5代：宮原義真→6代：宮原氏義 →7代：宮原義汨→8代：宮原義潔→9代：宮原義周 →10代：宮原義直 |
| 由良家（1000石） | 新田氏支流を名乗る[8] | 初代：由良貞長→2代：由良貞房→3代：由良頼繁 →4代：由良貞長→5代：由良貞整→6代：由良貞通 →7代：由良貞雄→8代：由良貞靖→9代：由良貞時 |
| 横瀬家（1000石） | 由良貞房次男 | 初代：横瀬貞顕→2代：横瀬貞国→3代：横瀬貞隆 →4代：横瀬貞臣→5代：横瀬貞径→6代：横瀬貞征 →7代：横瀬貞固 |
断絶した家
| 家名（石高） | 出自 | 歴代 |
|---|---|---|
| 一色家（1000石） | 菅原氏の唐橋家から 一色氏に養子入り |
初代：一色在通→2代：一色在種（許可なく近国に行き絶家） |
| 大沢家（2000石） | 武家大沢家の分家 | 初代：大沢基明→2代；大沢基実（幼年無嗣断絶） |
| 吉良家（4500石） | 足利氏支流長氏系[9]三河吉良氏 | 初代：吉良義弥→2代：吉良義冬→3代：吉良義央 →4代：吉良義周（1702年の赤穂浪士討ち入りの影響で翌年改易） |
| 土岐家（700石） | 美濃守護土岐頼芸次男 | 初代：土岐頼次→2代：土岐頼勝→3代：土岐頼義 →4代：土岐頼晴→5代：土岐頼泰（1706年に刀傷事件を起こし改易） |
その他
御家騒動のため出羽藩55万石、さらに時期藩主幼少のため大森藩1万石から5000石の旗本に改易された最上義俊の子である最上義智（最上義光のひ孫）、武家大沢家の分家大沢基躬が一代高家となっている。
また山名豊国の4男山名豊義の系統など高家ではないものの高家並みの格式を与えられた旗本の家も存在した。
関連項目
脚注
掲示板
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1 ななしのよっしん
2023/02/14(火) 07:57:14 ID: qZm+jnb1he
江戸幕府（というか武家政権全体）が建前上、「朝廷（天皇陛下）から天下の政務をお借りして、実務を取り仕切っている」という事を理解してると、「朝廷からの勅使をもてなすこと」の重要性は理解できるし、「その勅使に無礼を働いたり不興を買わないように武家としての礼儀作法を教えるコーチ役」は無茶苦茶重要なのよな。
いくら力関係で押さえ込めてるとはいえ朝廷にキレられたら権力の正当性を失うんだから、そりゃあ気を使うに決まってるわけで。
そりゃあ、勅使饗応 （儀礼的とはいえ今後しばらく天下の政務頼んだわっていう言質を取る場）の当日に不祥事起こした責任者の浅野内匠頭に対して綱吉もブチ切れますわ。むしろ、即日とはいえ切腹で済ませてくれたのが温情というか -
👍1👎0
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2 ななしのよっしん
2023/03/01(水) 06:10:15 ID: Bp1gGHraXZ
元の意味は名門（軍事貴族）という程度の意味で、江戸幕府が職制に転用した
宗家が名門武家であった鎌倉幕府、室町幕府と異なり、徳川宗家は有識故実に詳しくないので
公家や室町幕府の有力武家を登用して活用した -
👍0👎0
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3 ななしのよっしん
2023/08/07(月) 13:43:35 ID: pLjy1Q2kzB
これだけの禄をもらっておきながら幕末の戦闘ではカカシ程度にしかならなかったとか神君家康公も味噌を投げつけたくなるだろう
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