全文
風林火山は孫子の兵法の軍争編の四節にある言葉である。
全文は「故にその疾きこと風の如く、その徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆の如し。郷を掠むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。これ軍争の法なり。」
その他でも風林火山は、主に以下のような意味で使われている。
- 上記の四節を記した、戦国大名武田信玄の軍旗の通称である。
- 山本勘助を主人公とする井上靖の歴史小説。
- 2.を原作とする2007年に放送されたNHK大河ドラマ「風林火山」、またそのオープニングテーマ曲。
- テニスの王子様に出てくる奥義。正確には「風林火陰山雷」
- 音楽ゲーム「pop'n music」の楽曲→「風林火山(BEMANI)」。アーティストは96、ジャンル名は「陣旗プログレッシヴ」。
- BLAZBLUEより義理と人情を重んじる「漢」、シシガミ・バングの使用する獅子神忍法・究極奥義「萬駆風林火山」
- サクラ大戦2の作戦システム。防御力を代償に移動出来るマスを増やしたり、攻撃力を上げたり、移動力を代償に防御力を上げることが出来る。
- ドラゴンクエストIXに登場する扇の武器。但しその外見は、武田信玄が川中島の戦いで用いた軍配なので、本来ならば盾である。攻撃力が高いだけでなく、様々な特殊効果を持つ強力な武器。
- キン肉マンに出てくる48の殺人技の一つ。詳しくはキン肉スグルの記事内、主要必殺技の項目で。
ここでは3.の意味について解説する。
NHK大河ドラマ「風林火山」
山本勘助を主役に据えた2007年のNHK大河ドラマ。ニコニコ動画ではGACKTの謙信役への抜擢と演技、武者震い、オープニングテーマ(と替え歌)などが愛された。
主なキャスト
- 山本勘助(内野聖陽)
- 武田家軍師。敬愛する御館様と由布姫のためなら、どんなに手を汚しても武田家の天下統一のために奮闘し続ける。武田晴信が出家し信玄となると同時期に出家し、道鬼と称した。モットーは「兵は詭道なり」。
- リツ(前田亜希)
- 原虎胤の末娘。父から勘助の話を聞いた後は興味を抱き、好意を寄せる。当初は勘助の妻になろうとしていたが、勘助が由布姫の遺言を受けた後に養子となった。香坂虎綱の告白を受けた後は勘助を父上と呼ぶようになる。
甲斐国の人々
- 河原村伝兵衛(有薗芳記)
- 勘助の腹心で、後述のミツの兄。真田の女間者・葉月(真瀬樹里)に惚れて死亡フラグを立ててしまうが、見事へし折り夫婦となった。
- 葛笠太吉(有馬自由)
- 葛笠村の百姓。ミツの死後、伝兵衛と共に板垣信方に仕え、葛笠の姓を賜る。後に武田家の家臣となった勘助に仕え、旦那様と呼ぶ。
- ミツ(貫地谷しほり)
- 勘助の恋人。貧乏に負けない逞しい根性を持ち、勘助との間に子供を宿すが、狩りで機嫌を悪くした信虎によってNice boat.されてしまう。出番は少ないが存在感が非常に大きく、真のヒロインとも。
- 矢崎平蔵(佐藤隆太)
- 元甲斐国の百姓。幼馴染のミツを殺されて武田家に深い恨みを抱く。海ノ口城の敗戦後、矢崎十吾郎親娘に助けられ、そのまま仕え、後に娘のヒサ(水川あさみ)と結婚し、婿養子となる。諏訪・村上家に仕えるが主家はいずれも武田家に追いやられる。最終的には上杉軍の兵士となり、勘助と敵味方となって再会する。川中島の戦いでは背中に矢を打たれ、おふくに見つかったところで倒れ、その後の生死は不明。
ヒサとの間に設けた二人の子供には十吾郎、ミツと平蔵と関わり死んだ者の名前がつけられている。
武田家
- 武田信玄[武田晴信](二代目市川亀治郎(現:四代目市川猿之助)
- 武田家当主。幼名は勝千代。父の信虎から疎まれる。初陣では殿を務めた際に海ノ口城に引き返し、父で落とせなかった城を落とすという功績を立てた。その後甲斐が飢餓にあえいだ際、家臣と手を組み、信虎を追放し、当主となる。その後勘助を仕官し、信濃攻めも順調に来ていたが、由布姫のちょっとした一言を気にした後は、勘助らの進言を退けるようになるが、内心は勝ち戦が続いていることで負けることを恐れる弱さを由布姫だけに明かすようになった。上田原の戦いで板垣、甘利が死んだことで改心した。由布姫の死後、彼女を想い出家。武田信玄となる。
その容姿から、「カピバラ様」と呼ばれる。普段はどっしり構えているが、ひとたび感情が昂ぶると凄まじい豹変を見せる。
- 由布姫(柴本幸)
- 信玄の側室、諏訪御寮人。自害を嫌がり生きることを望んだ姿が勘助の亡き想い人、ミツの姿と重なったことから勘助によって生かされる。晴信の側室になった当初は晴信を恨んでいたが、勘助によって恨みは薄くなり、心底から慕うようになり、四郎(後の武田勝頼)を儲ける。
佳人薄命…のはずが、あまりにも猛々しく厳めしいその姿から、ネットでは「両津姫」などと呼ばれる不遇のヒロイン。演技力は良いので、もったいない。
- 三条夫人(池脇千鶴)
- 信玄の正室。6人の子を儲ける。
従来の高飛車で傲慢な悪妻という人物像とは異なり、温厚で心優しい性格の持ち主。ところが勘助のせいで人生を狂わされた、ある意味このドラマ最大の被害者。
- 武田信虎(仲代達矢)
- 晴信(信玄)の父。相次ぐ戦に心荒み、非道な行いを繰り返したため、息子や家臣団に追放される。晴信の才能を恐れ憎んでいたが、実はその実力に誰よりも期待し認めていたツンデレ親父である。
- 大井夫人(風吹ジュン)
- 晴信の母。信虎と晴信の対立に心を痛め、跡を継いだ晴信もまた父と同じ道を突き進んでいく事を苦慮する。その後上田原の戦いから帰還した晴信を咎めた。武田家の行く末を案じながら病死。
- 武田信繁(嘉島典俊)
- 晴信の弟。幼名は次郎。信虎の寵愛を受けていたが、晴信が信虎を追放しようとしているのを知った際、兄の決断を支持し、以降晴信の片腕として活躍する。塩尻峠の戦い以降は兄を御館様と呼ぶようになる。川中島の戦いでは、兄信玄を守るために自ら上杉軍に突撃したが、かつての傅役・諸角と共に戦死。
- 武田義信(木村了)
- 晴信と三条夫人の長男。諏訪家のために苦しむ母の姿を見ていたため、勘助のことを快く思っていなかった。川中島の戦いでは父を守るために出陣しようとしたが、勘助に「自分の命と義信さまのお命は全然違う」と引き止められ、本陣で信玄を守った。
- 板垣信方(千葉真一)
- 武田家重臣。晴信の傅役として幼少の頃から見守り続けた育ての父的な存在。晴信から信虎追放の計画を知らされた際は、甘利と飯富を館に呼び、武田家内をまとめる動きをとった。勘助のことは最初は警戒していたが、国こそが人という考えを聞いてからはよき理解者となる。次第に暴走しはじめた晴信を死を以て諫め、上田原の戦いでは晴信を守るために先陣を切り、壮絶な最期を遂げた。この時の晴信の悲しみは尋常ではなく、戦場に彼の絶叫が鳴り響き、上原城で板垣の幻影が現れた際に号泣している。
- 甘利虎泰(竜雷太)
- 武田家重臣。板垣と共に武田家の大黒柱として活躍。信虎追放の際は断腸の思いを抱きながら晴信を支持する側に回った。なにかと勘助を助ける板垣とは対照的に、勝つためには手段を選ばぬ勘助のやり方を批判する。しかし心底から憎んでいた訳ではないようで、板垣と共に戦死する直前に、武士としてのあり方を勘助に説いた。上田原での戦いでは単身で村上の本陣に乗り込み、首をはねようとしていたが、平蔵の矢で妨害され失敗。背中に矢を撃たれながら板垣の元に逃げ延び、板垣の元で息を引き取った。
- 飯富虎昌(金田明夫)
- 武田家家臣。赤揃えの騎馬隊を率いる。信虎追放の際には家臣の説得を引き受けた。三条夫人と自ら傅役を務める武田家嫡男・義信を差し置いて、晴信から寵愛される由布姫とその息子・勝頼を見て、次第に勘助を警戒する。
- 諸角虎定(加藤武)
- 武田家家臣。信玄の弟・信繁の傅役で、武田軍の長老。信虎追放を知らされた際は信繁も追放しようとしているのではと疑い、憤慨していた。板垣と甘利が死んだ後は自分だけ生き残ってしまうことを不甲斐なく思うようになり、時には無謀な出撃をするようになってしまう。川中島の戦いでは80歳という老体に鞭打って参戦し、信繁と共に上杉軍の猛攻から信玄を守って戦死。
- 小山田信有(田辺誠一)
- 武田家家臣。今川家とも深い繋がりを持ち、周りとは一線を画した独自の言動が目立つ。攻め落とした城主の妻、美瑠姫を側室に迎え、由布姫を慕う勘助の心境を理解するようになった。ところが藤王丸が死ぬとヤンデレ化されて寝首をかかれた。事情を知る勘助によって表向きは討死ということにされた。
- 馬場信春[教来石景政](高橋和也)
- 武田家家臣。勘助の仕官後には諏訪家に間者として潜入した。内山城攻めでは水の手を断つ攻めが晴信に好評価され、馬場信春となる。小笠原長時が逃亡した後は深志城城主となる。
アクの強い家臣団の中では珍しく、生真面目で堅実な人物。
- 原虎胤(宍戸開)
- 武田家家臣。通称「鬼美濃」と呼ばれる武田軍の猛将だが、意外におっちょこちょいな一面も。出家後は清岩と称する。川中島の戦いより前の割ヶ嶽城攻めで負傷し行方不明となっていたが、川中島に住む老人おふくに助けられていたことが判明し、そこで勘助と再会する。しかし治療中の身だったため、戦に参戦しなかった。
1988年の大河ドラマ「武田信玄」では、父の宍戸錠が同役を演じた。
- 駒井政武(高橋一生)
- 晴信の幼少の頃からの側近。香坂と共に甲州法度を作った際は、晴信も守ることで法度が完成できると進言している。川中島の戦いでは武田家のためにいきる勘助をうらやましいと信玄に述べたが、信玄からは「そちがいなければ今のわしはおらん」と感謝されている。
- 香坂虎綱(田中幸太朗)
- 幼名は源五郎。勘助が武田家に士官する際に世話になった地侍の子だったが、治水工事で説いた「孫子」が晴信に見いだされ、近習として仕える。後に武将となり、香坂家の養子となった。長きに渡って嫁がいなかったが、勘助の養子となったリツに惚れる。
- 真田幸隆(佐々木蔵之介)
- 信濃の国人領主で、海野家の一族。出家後は一徳斎と称する。村上義清に奪われた領地の真田荘を取り戻すため、勘助の引き立てで武田家に仕え、本懐を遂げる。家族や故郷を愛し、真田家が生き残るために奮闘する。
- 相木市兵衛(近藤芳正)
- 海ノ口城で勘助と知り合い、その戦術に惹かれて勘助と親しくなる。後に武田家に仕える。酒を飲む際は勘助、幸隆と一緒に飲むことが多い。
今川家とその関連
- 今川義元(谷原章介)
- 今川家当主。従来のでっぷり太った公家風のイメージと大きく異なり、血気盛んな青年武将として描かれている。プライドが高く勘助を毛嫌いするが、それを逆手に取られて桶狭間で討ち死にしてしまう。
- 太原雪斎(伊武雅刀)
- 今川家軍師。徳川家康の学問の師。今川の天下の下、天下平安を望む。
高潔な人格を持つ僧侶というイメージが強いが、本作ではデスラーボイスの怪しさも相まって、一癖も二癖もある策謀家として描かれている。
- 庵原之政(瀬川亮)
- 今川家家臣。「武者震いがするのう!!」であまりにも有名なある意味最強の出落ちキャラ。桶狭間では義元のすぐ側にいたにも拘わらず、本人は生き延びてその首を今川家に持ち帰った。
北条家とその関連
- 北条氏康(松井誠)
- 北条家当主。慎重な性格ながら時に大胆な決断を下し、一大勢力を築き上げた関東の雄。勘助とは仕官を求められたのが縁で知り合い、その後は武田の使者として赴かれることもある。
中の人は「生ける博多人形」とも呼ばれる大衆演劇のスターで、その舞は天下一品。
- 北条氏政(早乙女太一)
- 氏康の嫡男。他の大河ドラマではあまり扱いが良くない氏政だが、本編では父・氏康の教えをしっかり守る賢明な人物として描かれている。
早乙女はこの作品が放送された頃から、流し目王子としてブレイクし始め、終盤では松井と共に舞を披露して、大衆演劇ファンを喜ばせた。
信濃の豪族
- 諏訪頼重(小日向文世)
- 諏訪家当主、由布姫の父。義兄の晴信を侮ったために、言いがかりをつけられ攻撃を受ける。自身は切腹を命じられた上に、娘は仇の側室となり、息子は信濃征服に利用された挙げ句、用済みとなり最終的に粛清されるなど、呪われた家系と言える。
- 高遠頼継(上杉祥三)
- 諏訪家の庶流。お家乗っ取りを虎視眈々と狙い、晴信に寝返ったと思えば村上に裏切るなど節操のない凡人。捕まえられる直前に何度も「おのれおのれ!」と絶叫する様は、ある意味哀愁を誘う。
- 村上義清(永島敏行)
- 信濃の戦国大名。上田原の戦いと砥石崩れで二度も晴信を破った、ある意味上杉謙信以上の宿敵。真田幸隆とも深い因縁を持ち、川中島でも真田と激突する。
- 小笠原長時(今井朋彦)
- 信濃守護。全く緊張感のない殿様で、村上はおろか高遠すら呆れられている。初めて出陣の用意をした時は、「殿が立った!」と某アルプスの少女並の歓喜が家臣達からわき上がった。
長尾家→上杉家とその家臣
- 上杉政虎[長尾景虎・後の上杉謙信](GACKT)
- 上杉家当主。欲望渦巻く戦国の世の中で、ただひとり正義のために戦う武神。当初は長尾景虎だったが、北条家を討つために関東に出陣したのを機に上杉家の名跡を継いで、名を上杉政虎に改めた。川中島の戦いでは武田本陣に乗り込み、武田信玄に斬りかかったが軍配で受け止められ、倒すに至らなかったが、7つの傷を残した。
従来のイメージとは大きく異なるスタイリッシュな姿は、毘ジュアル系と呼ばれ多くの信者を持つ。
- 宇佐美定満(緒形拳)
- 上杉家軍師。寡黙だが、勘助も手玉に取る貫禄たっぷりの老練な武将。川中島の戦いでは両軍共倒れになる危険を感じ、山本勘助に戦う理由を問いかけた。
大河ドラマの常連だった緒形拳は、この作品が最後の大河出演作となった。
- 直江景綱[直江実綱](西岡徳馬)
- 上杉家重臣。2年後の大河ドラマ「天地人」の主人公・直江兼続の伯父。放浪癖のある主人・景虎(謙信)に頭を悩ませている。
- 柿崎景家(金田賢一)
- 上杉家重臣。戦では先鋒を務める。川中島の戦いでは武田信繁を討ち取った。
その他の大名
- 上杉憲政(市川左團次)
- 関東管領。北条氏康との戦に敗れて関東を追われ、越後に落ち延びた。遊興癖があり、嫡子の死後も酒宴を開いている。川中島の戦前に長尾景虎に上杉姓を継がせる。
- 松平元康[松平元信](坂本恵介)
- 後の徳川家康で、今川家の人質。雪斎が倒れる前に居合わせ、天下平安を受け継ぐ。桶狭間の戦では先鋒として兵糧を入れるなど活躍するが、戦後は今川家を裏切る。
- 織田信長
- 尾張の大名。桶狭間で今川義元を倒す。
戦の前には天澤と言う旅の僧が信玄と勘助に信長について話す。
前年に功名が辻が放送された影響か、まともに映らない。
その他
- 青木大膳(四方堂亘)
- 豪腕だが粗暴で単純な無法者の浪人。その空気の読め無さは一級品で、勘助が信虎の護衛を頼まれた時、いきなり「儂も連れて行け!」と言いだし余計な騒動を起こす。
- おふく(緑魔子)
- 川中島の山奥に住む謎の老婆。報酬があれば、敵味方関係なく情報を提供したり、人助けもしてくれる。
オープニングテーマについて
千住明作曲。指揮:高関健、演奏:NHK交響楽団。
原曲は管弦楽曲であるが、こっぺぱんと日本の朝の食卓を題材にした歌詞がつけられ人気となる。VOCALOIDや人がこれを歌った動画が多くある。また、龍馬伝と共に大河OP×アニメMADシリーズで多くのOPパロが作られた。
山梨県について
大河ドラマ『風林火山』の舞台は山梨県であるが、放送中の山梨県の熱狂ぶりは半端なかった。まず北杜市に数千万円かけてセットを作り一般公開を実施(このセットは放送終了後あっさり解体している)。また甲府市では県の施設を使い「風林火山博」を開催している。しかも「風林火山博」では当時内閣総理大臣であった安倍晋三を招待している。また、イベント列車として「風林火山号」を運行。E257系にラッピングを施し、放送期間中の休日には必ず運行されていた。もしかしたら大河ドラマの制作費より山梨県が費やしたコラボレーション費用のほうが高かったのかもしれない。
また、山梨県では毎年4月に信玄公まつりが実施されており、これまでは武田信玄役のみ俳優を使っていたが、『風林火山』以降は山本勘助役にも俳優を使っている。「山本勘助って元々三河国出身だよな?」と思うだろうが山梨県民にとってはそんなの関係ない、信玄に関わるものはすべて熱狂するのである。実際幕末の甲州勝沼の戦いの時も板垣退助(先祖は武田家臣・板垣信方)が現れると「信方様の再来じゃー」と言って新政府軍側に寝返り、幕府側の新撰組とバトルしてるし。
関連動画
大河ドラマ「風林火山」オープニングテーマ
風林火山OPパロ
大河ドラマMAD傑作選
BLAZBLUE
関連項目