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株式会社写研とは、日本フォントベンダーである。かつては写真植字機及びその周辺機器、組版システムなどの製造販売を行っており、同業界において最大手であった。

概要

イギリスいて発明された手動写真植字機の日本での実用化を成した1926年、その共同開発者の石井茂吉澤信夫両名によって設立された。当初は「写真植字機研究所」という名称で、1970年代に現名称となる。澤の機械いじりの発想力、石井機械学の技術や書体設計の力が合致、写真植字機の精度は非常に高いものに結実し、写植は戦後活版印刷に代わる文字入力手段として広まった[1]

後に澤はビジネス上の相違で離別、写真植字機製作株式会社現在モリサワを設立したが、二社ともに写真植字機およびその組版システム開発によって、戦後日本における印刷業の過渡期にし、その書体も広く普及した。

石井自ら手掛けた「石井書体」、現代的な「明朝」などの基本書体や、1969年発表の「タイポ」、1972年発表の「ナール」、1975年発表の「ゴナ」に代表される様々な「新書体」はその後の日本書体デザインタイポグラフィに多大なを与えた。

90年代以前にデザイナーなどの仕事をしていた人の中には「愛のあるユニークで豊かな書体」という言葉に聞き覚えがあるという人も多いのではないだろうか。

2000年代までの様々な印刷物、テレビテロップ、ほとんどの漫画などで写研の書体が使用されていた。ゴナモダンゴシック体としてその潮流は他のタイプファンドリーにも大きく波及した。ナール道路案内標識などで現在も広く見られる。

また1965年にはコンピュータシステムを用いて組版を行えるという電算写植機「SAPTON」を発表し、後年はそれに始まる電産写植関連商品の販売にも注力した[2]

このように非常に多くの優れた書体書体デザイナー機械を輩出したが、DTP化に追随しない方針や人事の失敗・人材の流出、所得隠しの不祥事[3]などで凋落。モリサワフォントワークスなどの他タイプファウンドリーをあけられることとなった。

一応、デジタルフォント自体は、1983年に発表された電算写植機・テロップ機向けの独自規格「Cフォント」の時点で実現していた。しかし、当時の技術的制約からアウトラインが不安定な問題があったり、PCで利用できるOpenTypeフォントの発売は一切行われなかった。

他方、1991年文字フォント開発・普及センター導による「平成書体」のうち「平成ゴシック」の制作が委託されており、これは同センターが権利を持ったため、外部のいくつかの企業からOpenTypeTrueTypeフォントとして提供されている。また、元々外部デザイナーであった野実による「ロゴライン」は、Adobeベンダーとしてデジタルフォントリリースされて利用することが出来た。

しかしそういった契約上の例外をのぞいて、写研の保有する自社書体に関しては、写植のシステムにおいてのみ提供される姿勢が崩されなかった。2011年OpenTypeフォント開に向けた出展を「第15回際電子出版EXPO2011」において行ったが、その後9年以上進展はみられないまま時が過ぎることになる。

復活

2021年モリサワ・写研の社長両名の名義で「OpenTypeフォント開発」についてのプレスリリースが発表され、〈写真植字機の特許が出願された1924年から丁度100年の節〉にあたる2024年処に順次発売することが発表された。

同年3月にはとうとう公式コーポレートサイトexitが開設し(ドメイン自体は昔から存在していたものの、Webサイトの開設はこれまで一切行われてこなかった)、書体見本や企業情報などが掲載。ISDN回線が利用できなくなる2024年から電算写植機が利用できなくなると考えられていたが、これについてはFAQにおいて「今後もサポート継続する」と明記されている。

またサイト開とともに開を告知していたアーカイブサイトとして同年5月26日書体や写研・写植の歴史などを網羅的に掲載したアーカイブサイト写研アーカイブexit」をリリース、とうとうインターネット上において公式書体見本や歴史アクセスすることが可となった。また、資料の一部の電子化・開も開始した。

2024年鳥海修(元写研、現字游工房)監修のもと、石井明朝石井ゴシック書体ファミリーの改刻版がリリース予定。また、『写研クラシックス』として、原字に基づいた『100以上』の書体リリース予定が発表されている(文字セットモリサワ独自『ミニ2セットMin2)』に基づく)。2024年内ではナールゴナの一部ウエイトを含む30書体を予定。

代表的な書体[4]

石井明朝
創業者・石井茂吉による明朝体で、多くの書籍や広告に用いられた。
それまでの活字における明朝体とは異なった素で柔らかい雰囲気は高い評価を得て、内外の多くの明朝書体を与えた。今でも、ベテランの組版屋・デザイナーなどから根強く支持されている。
石井ゴシック
同じく石井茂吉によるゴシック体である。立て処理や緩急による独特の優しい表情は評価が高い。
金属活字までは「仕方なく」使われていたゴシック体の仮名の品質を、本文に使っても恥ずかしくない準にまで押し上げた画期的な書体
この書体の成功がければ、ゴシック体は今でも「明朝体の太字」という立場で扱われていたかもしれない。
石井ゴシック / 石井ファンテール / 石井宋
戦時中の「変体活字運動」などで姿を消した特殊書体を、石井の解釈で再したもの。
ゴシック体宋朝体ファンテール体というジャンル運命を変えた書体であるばかりでなく、戦前ジャンルをほぼ網羅することで日本語タイポグラフィを再建する土台を作り上げた名脇役である。
石井教科書
教科書で使用されていた「文部省活字」を石井が現代化し、ファミリー化したもの。
現在でも、学習導要領で字体の標準として例示されている字形の大部分は石井教科書のものだ。オリジナルに忠実にOpenType化されれば、漢字教育の現場の混乱を収拾するとなるかもしれない。
ナールナールの大百科記事
写研催の書体コンテスト石井賞の第一回で一位となった、看板職人中村氏による書体。極細で字面一杯の丸ゴシックというこれまでに全くかったデザインで、新書ブームの一を担った。
一時期の日本看板や雑誌はナールで埋め尽くされ、あるデザイン事務所ではナール禁止が出るほどだったという。今でも、道路案内などで頻繁に見ることができる。
ゴナゴナの大百科記事
ナール中村氏に写研が依頼したことで制作された書体の一つ。
フトコロが広く幾何学的で極太という「モダンゴシック体」の概念を初めて作り上げ、ファミリー化すると多くの企業コーポレートフォントに採用された。
明朝
石井明朝べて規則的で、名前の「本」の通り本文に用いられる現代的な表情の書体としてデザインされた。
これは文庫本などの本文書体として人気を集めた。
ミンカール
香港書体デザイナー炳権氏による漢字書体鈴木勉氏が仮名を付けたもの。独特な緩急やクルンとした造形がファンシーさを醸し出し、少女漫画雑誌や、セーラームーンプリキュアなど女児向けアニメテロップなどに長く使われた。
ファニー
手書き書体の先駆けとして手動写植向けに一時期提供されたが、電算機で復活するまで見本帳から姿を消したため用例は多くなかった。クレヨンしんちゃんサブタイトルテロップとして2021年現在も使われている。
平成ゴシック
当時日本規格協会下であった文字フォント開発普及センターからの委託を受け制作され、ライセンスされた丸ゴシックアウトライン化が念頭にあり、当時オープン化となり、写研外の複数社を通じてリリースされた。ナール石井ゴシック較しても中庸なつくりで、DTP明期を支えた。

代表的な輩出デザイナー

関連動画

関連リンク

関連項目

BA-90

脚注

  1. *石井茂吉写真植字機」(1969年
  2. *写研の歴史 | 写研アーカイブexit
  3. *日経デザイン 1999/03号
  4. *一部文章は本記事掲示板>>3より引用している。
  5. *グラフィック社「時代をひらく書体をつくる。」(2020年11月
  6. *鈴木勉の本 抜版」(1999年
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