漢文(漢語で書かれた伝統的な文章)が「右から左に読む」縦書きのスタイルをとるのは、主に歴史的・物理的な事情によるものです。以下にその背景と利点を整理してみます。
1. 歴史的背景
1. 竹簡(ちくかん)の名残
中国では古く、文字を木や竹の札(竹簡)に縦向きに書き、それを糸で綴って巻物のように使っていました。
• 縦書きにすると竹簡を綴った状態でも読みやすく、また一枚ごとに上下に綴ることで順序が保ちやすかった。
• 巻物を右手で持ち、左へ繰り出す形で読む都合上、右から左へ列を並べるのが自然でした。
2. 筆記具と書法の影響
• 毛筆で文字を書く際、右利きの人が多い社会では、筆を右手に持ったまま右から左へ書き進める方が手や袖を汚しにくい、あるいは筆運びがスムーズだと考えられていました。
• 実際には文化や時代によって書きやすさの感覚は様々で、“筆記時の利便性”だけが絶対的な理由ではありませんが、一説として理由に挙げられることは多いです。
2. 右から左へ読む「便利さ」
1. 巻物形式での読みやすさ
先述のとおり、巻物などを右手で持ち、左へ展開していく場合、縦書きの列は右から左へ配置されている方が都合が良いです。右から次の列へ順に左へ進むことで、読み終えた部分を次々に巻き取っていけるからです。
2. 伝統や習慣の維持
• 単に“慣れ”や“伝統”の継承が読み方のスタイルに影響し、長く守られてきたという面があります。
• 実利というよりも、文化的・美意識的な伝統や書物の形式・儀礼を重んじる意味合いが大きいです。
3. 現代の中国語との違い
• **現代中国語(普通話)**は日常的には横書き・左から右へ読むスタイルが主流になっています。印刷技術や欧文との調和、学校教育の指導方針などの理由により、ほぼすべての文章が左から右へと書かれるようになりました。
• ただし、伝統的な書籍・史料・一部の書道作品などは依然として縦書き・右から左へ並べる形式を守る場合もあります。
まとめ
• 漢文が「後(右)から左へ読む」形式は、竹簡や巻物での書写法・筆記のしやすさ・伝統的習慣などが組み合わさって生まれた歴史的な名残です。
• 古代や中世においては、それがもっとも自然で便利な書式だったため定着しましたが、現代の中国語文章はほぼ左から右へ書かれるようになっています。
• 日本でも、漢文の素読や書道作品などでは右から左へ縦書きする様式が残っていますが、それは歴史的な文化形態を保つ目的が大きいと言えます。
こうした伝統的な形式を知っておくと、古い文献を読む際に理解しやすくなるだけでなく、当時の人々の“書く・読む”文化をより深く味わえるという利点もあります。