2025-05

2021・11・5(金)前橋汀子 秋のデイライト・コンサート

       東京芸術劇場 コンサートホール  午前11時30分

 このシリーズはもう何年も続いているものなのだそうな。とにかく、ホールの客席がぎっしり埋まっており、それも中年以上の女性が圧倒的に多いのには驚嘆した。関係者から聞いたところでは、前橋さんはとてもファンを大切にする人であり、したがって今日のこのお客さんも昔からずっと前橋さんのファンなのだとか。

 一見したところ、ふだんはクラシックのコンサートにもほとんど来ないような人たちと思える。だが見方を変えれば、もともとクラシックが好きで、何か特別な機会があれば足を運びたい、と思っている人たちがこれだけいるのだ━━ということは紛れもない事実だということがこれでもわかる。 
 クラシックの演奏会にお客さんをもっと集めたい、というのは事業者やわれわれ関係者の悲願でもあるが、こういう事例に着目するのも必要なことだろう。

 で、演奏の方だが、ヴァイオリンの前橋汀子の他に、ピアノの松本知将と、シンセサイザーの丸山貴幸が協演し、クライスラーの「愛の喜び」、フォーレの「夢のあとに」、ベートーヴェンの「ロマンス ヘ長調」、クライスラーの「プニャ―二の様式による前奏曲とアレグロ」、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、シューベルト~ヴィルへルミの「アヴェ・マリア」、シューベルトの「セレナード」、丸山貴幸編の映画音楽メドレー、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」、それにアンコールのエルガーの「愛の挨拶」を含めてきっかり1時間、休憩も出入りもなしに一気に演奏するという濃密な構成。

 前橋汀子のソロは、時にほんの僅か音に「揺れ」が生じないと言えばウソになるが、基本的には強靭な力と活気と、美しいカンタービレを満載した演奏で、何よりも聴いていて得も言われぬ快さ、懐かしさ、温かさが感じさせる音楽なのである。年輪を重ねた人だけが持つことのできる「芸の深み」とはこのようなものを謂うのであろう。

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