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貴志祐介 『さかさ星』

さかさ星 (角川書店単行本)
「小説 野生時代」連載作品を大幅加筆修正した長編ホラー。
名家で発生した無惨な殺戮。その背景には数々の呪物による影響があり、真犯人の暗躍が仄めかされる。
徹底的に設定を描いた後に、限定状況下の争いを描くというのは貴志祐介お得意のフォーマット。本作もご多聞に漏れず、呪物各々が辿った経緯や籠められた怨念などを順々に掘り下げた上で、終盤での呪物駆使バトルに至る。迫真と滑稽が織り交ぜられた独特な風景が面白い。
他、内税表示のファミレスは無料Wi-Fi店舗が限られる等、細かいリアリティに笑う。まるで実体験のように感じられる描写の上手さが貴志祐介の特徴で、視点人物と著者を同一視する傾向になりがちなように思う。