乙一 中田永一 山白朝子 越前魔太郎 『メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション』

安達寛高の別名義のみによる短編アンソロジー。
乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎。4つの名義を使い分けてきた著者が、居直ったかのように1冊のアンソロジーを紡ぐ。この自作自演とでも言うべき構成の時点でアンソロジーの要件は満たすように思うが、一応は「幻夢」という共通ワードも存在する。一応、の枕言葉は余計かもしれないが、本書は書き下ろし作品はなく、バラバラの雑誌に掲載された作品を集めたという単なる短編集的側面もあり、アンソロジーに一本筋を通すテーマとしては弱い。ここが少し残念。
物語として抜群の強みを持つのは「トランシーバー」だが『私の頭が正常であったなら』で既読のため今回は読み流す。他の作品は乙一らしい落ち着いた筆致が光る作品たちだった。表題作は、題材と題名が光る。もう少し丁寧に手を掛けて描けば、もっと凄い作品になったように思うが……惜しい。