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浦賀和宏 『カインの子どもたち』

カインの子どもたち (実業之日本社文庫)
『Mの女』『十五年目の復讐』とリンクする書き下ろしシリーズ。
死刑囚の祖父を持つアキは、ある日同じく死刑囚の孫でノンフィクションライターの泉堂莉菜の訪問を受け、徐々に祖父の事件の真相に迫っていく。
元は電子書籍で展開されていた『メタモルフォーゼの女』シリーズとリンクして描かれた『Mの女』、そして後日『メタモルフォーゼの女』を一冊にまとめた『十五年目の復讐』。今回はそれらの前日譚というべきか、主要登場人物の泉堂莉菜のエピソードが中心に描かれる。探偵小説というか、調査・追跡小説としての浦賀和宏のキャリアはもうベテランの域に達しており、安定したリーダビリティとストーリーテリングで安心して読めるレベルである。
そして近作では碌な扱いを受けていない桑原銀次郎。御多分に洩れずというところだが、今回は翻って「いいぞもっとやれ」感も出てしまって悲愴感と共に愉快感も漂う。著者に遊ばれる登場人物というのは、何とも可哀想なものである。