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by chekosan
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映画「サラエボの花」(2006年)

1992年ごろから始まった内戦の被害が色濃く残るサラエボを舞台にした映画「サラエボの花」を観ました。

サラエボのシングルマザーと思春期12歳娘を中心とした話です。

父親は内戦で殉死したと母は言っていますが、詳細はわかりません。遺体も発見されていないし、どこでどう亡くなったのかもはっきりしません。でも、娘は父親を誇りに思っています。自分に父の面影があるかと尋ね、髪の色が同じだと聞くと嬉しそうにします。

母は、男性に密着されることに恐怖感を抱いてパニック発作が出ます。

となると、なにがあったのかは想像がつきます…


映画「サラエボの花」(2006年)_b0066960_22134812.jpg


多くの人が職を失い、社会主義期のような国の支えもなくなり、母子の生活もカツカツです。でもなんとか娘を修学旅行に行かせてやりたくて、母は夜にバーでウェイトレスをすることにします。

一方、思春期娘は、自分の出自やアイデンティティ、父への思慕、友達との関係、恋の芽生えといったような思春期の少女にとっては重大なことがらが一気に襲ってきて、不安定このうえない。

母の勤めの間、世話をしてくれる母の友人に「オールドミス」などと失礼なことを言ったりします。少女にとっては軽口なのでしょうが、おそらくこの友人も母と同様な目に遭っていると思われるので、実はたいへんむごい言葉です。

さらに娘は、母の苦境を理解せず、逆に苦労を踏みにじるような言動をします。とうとう母が押し殺していた苦悩と感情を爆発させる場面はとても辛いものでした。

それでも、その衝突があったからこそ、母子は決定的な断絶を乗り越えて未来に向けて歩いていこうとします。

女性たちの心情や協力関係がリアルでいい感じに描かれているなあと思ったら、監督は若手の女性でした。やはり。


ーーー

このような被害にあった女性たちは、長らく声をあげられないでいましたが、「戦争被害」として認めるよう国に働きかけ、加害者の責任や被害者への支援を求める動きが起こっています。

2018年4月8日毎日新聞の記事より。





レイプによって生まれた青年が親を探すドキュメンタリー映画も作られています。

2015年5月、AFPの記事。

The Guardian の方がやや詳しく、映画「サラエボの花」についても少し触れています。



こちらは動画。別の女性も出てきます。






映画でも出てきた生物学上の「父」である、「チェトニク兵士」とは、セルビア民族主義の民兵集団です。これについて説明している動画がありました。




被害に遭った女性たちにとっても過去のことではない苦しみであり続けていますが、次世代にとっても自らの根幹にかかわる問題です。



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by chekosan | 2019-07-20 23:28 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)