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中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan
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大学図書館のDVDを見ていくプロジェクト、ようやく記録が追いついてきました。

先日観たのは、映画「あの日 あの時 愛の記憶」。そのへんのメロドラマっぽい邦題ですが、そしてまあ実際、恋愛ものではありますが、見始めたら結構引き込まれました。( ´∀` )

アウシュヴィッツから脱出した恋人たち ~映画「あの日 あの時 愛の記憶」(2011年)_b0066960_16392863.jpg


アウシュヴィッツ強制収容所に入れられていた男女が脱出に成功するものの離れ離れになり、お互い死んだとあきらめてそれぞれの人生を歩んでいたところ、30年後に生存を確認して再会するというお話です。なんと、実話をもとにしているそう!

このあらすじ、ネタバレではありません。

映画は、1976年のニューヨークで、主人公の女性がテレビから死んだと思っていた恋人の声を聞いたところから始まるのです。

そして、早い時点で、この女性が、戦時中ナチの収容所に入れられていたこと、そこでポーランド人の恋人ができて妊娠していたこと、その恋人と収容所を決死の作戦で逃げ出したことがわかります。

つまり、観る人には、主人公とかつての恋人が生き延びたことは初めからわかっているのです。

それでも、どうなってしまうの~とハラハラする場面が続き、人間模様もやきもきさせられて面白い。

たどり着いた恋人の実家の母は、主人公がユダヤ人とわかって結婚に反対し、なんならナチ親衛隊に引き渡しそう…

この母が、いいところの奥様らしい気高さと、でも息子たち愛しさのあまり、その恋人(主人公)や長男の妻に対して持つ恨みの感情を併せ持っているのですが、それを役者さんがとても上手に演じています。

何かで見ている気がするなあと思ったら、ハネケ監督の「白いリボン」に助産師役で出ていました。ああ、あの印象的な登場人物!


↑この「白いリボン」の鑑賞記録は、検索で上位にヒットするようで、毎日アクセスがコンスタントにある記事です。


対して、密かに対ドイツレジスタンス活動をしている恋人の兄の妻は主人公にとても親切で、これまた芯の強い人。ポーランド人女性!って感じやわ~、いい役者さんやん~と思ったんですが、公式HPの主要キャストに載っていない。

方々見て確認したら、この映画より後の「Cold War あの歌、2つの心」の主演女優さんなんですね。


「Cold War」の方が、この女優さんにとっては出世作なわけですが、私は「あの日あの時~~」の役の方が魅力的に思えました。

この方、さらには、「イーダ」でも歌手役で出ているみたい。気がつかなかった。また確認してみよう。



そして、主人公の若い時を演じた役者さんも、とても魅力的。かわいくて、強くて。

と思ったら、この方も、以前に見た映画に出演されていたようです。それもまたどうやらユダヤ系ドイツ人役(たぶん)。この映画、ドイツで潜伏した生き延びたユダヤ人の人びとの映画。とても面白かったです。




女性たちの愛憎がリアルに感じたのは、監督や脚本が女性なのが効いているのかも。

現代(1976年時点)の主人公の夫がこれまたすっごくいい人なのも救い😢 理想的な夫って感じなのです。

70年代のニューヨークでインテリで優しい夫と美しく育った年頃の娘と幸せな家庭を築いている50代くらいの女性が、若い時に収容所に入れられて大変な目に遭っていたという設定にしたのも良かったと思います。

ホロコーストとか戦争を描いたものは大昔のことのように思えてしまいますが、生き延びた人にはその後も人生が続いていったこと、それほど前のことではないのだということを気づかせてくれるつくりになっていると思います。

ということで、それほどには期待していなかった作品ですが、予想外に収穫ありでした。











# by chekosan | 2024-12-19 16:46 | 映画、映像 | Trackback | Comments(0)

大学図書館のDVD鑑賞記録が続いていましたが、こちらはAmazonプライムで鑑賞したもの。

チェコスロヴァキアが誇る体操選手、ヴェラ・チャスラフスカさんのドキュメンタリー映画「永遠の名花 チャスラフスカ」です。

いやほんと永遠の名花やわ~~ ダダ泣きでした。( ;∀;) 

タイトルどおり! ~映画「永遠の名花 チャスラフスカ」(2012年)_b0066960_16373662.jpg



チャスラフスカさんは、東京五輪、メキシコ五輪で大活躍し、世界のスターになった名体操選手ですが、チェコスロヴァキアの民主化の動き=「プラハの春」を支持し、それを潰したワルシャワ条約機構軍の侵攻に反対する姿勢を貫いたために、長く不遇な日々を送ることになりました。

1989年の民主化「ビロード革命」後は、一転、ハベル大統領の顧問として国政に携わり、忙しい日々を送ります。

再び脚光を浴びるようになったチャスラフスカさんですが、息子と元夫が揉めたことで元夫が亡くなるという悲劇が起こり、精神的に病んでしまいます。

長い長い闘病生活を経て社会復帰したチャスラフスカさんは、ふたたび輝く笑顔で思い出の場所を巡り、ファンや教え子たち、支援者らに大歓迎されます。

チャスラフスカさんについては、私はリアルタイムでは知らなくて、チェコに関心を持つようになってから知識として知りました。

そのため、「懐かしい」とか「憧れ」というのはなかったのですが、現役時代の美女ぶり、お年を召してからの温かい人柄が伝わる様子、生涯を通してとにかくコツコツと努力を重ねて、ひたすら真面目に生きてこられた姿に惚れ惚れしました。

美しく、強く、優しく生きた、ほんとに永遠の名花の名にふさわしい方だと思います。

関連書籍の感想記録:








# by chekosan | 2024-12-17 16:49 | 映画、映像 | Trackback | Comments(0)

大学図書館のDVDを次々観て「ネタ」を増やすべく頑張っていた秋学期。記録が追いつかず、だいぶ経ってしまいましたが、ようやく消化?できてきました。

デビュー作「サラエボの花」(文末に鑑賞記録のリンクあり)でベルリン国際映画祭の金熊賞をとったヤスミラ・ジュバニッチ監督が、同じくサラエボを舞台に、若いカップルの愛と苦悩を描いた作品「サラエボ、希望の街角」も所蔵されていて、最近、貸出可になっているとわかり、ヤッホー!


映画「サラエボ、希望の街角」(2010年)_b0066960_10502704.jpg


主人公はボスニア・ヘルツェゴビナでキャビンアテンダントをしているボスニャク(ボスニア・ヘルツェゴビナのムスリム)の女性。航空管制官をしている、やはりボスニャクの恋人とラブラブ同棲中です。彼女は子どもが欲しいのですが、なかなか授かりません。

そんな折、恋人が勤務中に飲酒していることがバレて停職になります。

主人公に促され、禁酒の会に行ってみたもののなじめなかった恋人は、戦友との偶然の再会をきっかけに、イスラム原理主義へと傾倒していきます。

仕事に行くと出かけた恋人と連絡が取れなくなり、心配した主人公は、彼が働いているというイスラム原理主義者が集う合宿場所に乗り込んでいきます。

宗教に救いを求めることで癒しを得てゆく恋人は、彼女のファッションに口を出し、親戚の集まる場でも論争をふっかけるようになります。

果たして2人の行く末は…?

というお話。

ボスニア・ヘルツェゴビナの内戦終結から十数年経ち、平穏な日常に生きられるようになったように見えるサラエボですが、そこに生きる人たちは、やはり内戦の傷を負っています。

恋人は戦場での、主人公は少女時代の家での悲惨な経験が影を落としていることが話が進むにつれ、見えてきます。

恋人がアルコール依存症になったのも、主人公が子どもを熱望するのも、内戦でなくした大事なものを埋めるものだったのでしょう。

「サラエボの花」が、全面的に、内戦の傷と苦悩、そこからの立ち直りを扱っているのに比して、こちらはオシャレな感じを散りばめてあります。

オシャレな感じや日常を丁寧に描き出しているところも面白いのは面白いのですが、ちょっと中途半端というか、全体的に、いまひとつ掘り下げきれていないような、物足りなさがあるかな。もう少し違うものにできたんじゃないかな、という感じがありました。


監督インタビュー:


# by chekosan | 2024-12-16 19:30 | 映画、映像 | Trackback | Comments(0)

大学図書館所蔵のDVDを次々鑑賞するひとりプロジェクト、レンタル屋さんや配信でなかなか見ることができないでいた、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の作品を続けて観ることができました。

1本目は「灰とダイヤモンド」、2本目は「地下水道」。そして3本目は、「約束の土地」です。


19世紀末ポーランド・ウッチの繊維産業界でのし上がろうとする青年たちの物語 アンジェイ・ワイダ監督「約束の土地」(1974年)_b0066960_13510909.jpg
なぜこのシーンが使われたのか…?

ときは19世紀末、3分割されて国家として消滅していた時代のポーランドが舞台です。世界有数の繊維産業の街となったウッチで、3人の若者が出資して、自分たちの工場を持とうとする物語です。

ポーランドの士族出身のカロル、その友人のユダヤ人モリツ、ドイツ人マックスは、3人で資金を調達して自分たちの工場を建てようと誓い合います。

カロルはなかなか切れ者らしく、勤務先の工場でも目をかけられ、重用されています。知人友人らからも、やり手と認められているようで、旧家の出身であることも相まって、美しい相思相愛の婚約者がいるにもかかわらず、別のお金持ちから娘婿にと望まれてもいます。

彼だけになら融資してもよいともちかけられることもあるのですが、カロルは、絶対自分たち3人が同等に出資して3人の工場をつくるのだと譲りません。

でも、ウッチでは、毎日のように工場が倒産したり、保険金目当ての家事が起こったりしています。そんなときに若者だけで、新たに工場をつくるというのは無謀に思われます。

ところが、このカロルという人物、ある企業家の妻とも密通し、彼女を通じて耳寄り情報を仕入れます。それによって抜け駆けに成功し、ウッチの繊維業界が苦境に陥るなか、うまく出し抜いて、まんまと自分たちの工場の操業にこぎつけます。

しかし、身近な人たちを裏切って果たした成功のすぐそばでは、その成功を転覆させることになっていきそうな動きが起こっているのでした。

ネタバレにならない程度に筋を書いてみました。

この映画、ポーランドの映画博物館で非常に高い評価を得た作品なのだそうですが、なんで?というのが素直な感想。

なにしろ、カロルという人物にまったく共感できないのです。

資本家たちの冷酷さ、猥雑な暮らしぶり、対照的にとんでもなくひどい工場の労働環境や貧困層の生活環境。でも主人公たちは、それに反発して善き社会をつくろうとしているわけではないのです。特に、主人公の、自分の成功のためなら大事な人たちも切り捨てる下卑た野心が、ぜんぜん好きになれない。

カロルの友人のモリツやマックスはカロルほど非道な人物ではなさそうですが、彼ら3人の友情がいつどう育まれたかは映画では描かれていないので、なんで一緒にやっていこうと誓ったのかが理解できない。

親世代を超えて成功してやるという青年らしい野望や情熱は良いとしても、手段選ばず、労働者は使い捨てなところは親世代と変わらない感じ?

DVDのジャケットには、「祖国の文化へのオマージュ」と本作を評しているのですが、むしろ「資本家って腐ってる!」と思わせる映画になっているように思うのです。それでいいのかな。

気になるので、この作品や原作(ノーベル文学賞作家レイモントによる)について触れている論文を確認したところ、その感想でズレてはいなさそうでした。( ´∀` ) 参考:小椋 彩(2023)「19世紀ポーランドの文学と自然・都市・エコロジー」『ロシア・東欧研究』2023 巻 52 号 p. 39-49

ところで、映画はどれくらい原作に忠実なのだろう、原作者のレイモントはノーベル文学賞も受賞しているくらいだし、当然、どっか図書館で借りられるだろう、せっかくだし読んでみようかな。

と探してみたら、

ない…

所蔵されていないというのではなく、どうも翻訳されていない???

さすがに原語で読むほどには、ポーランド語力も、熱意もない(笑)

ということで、ワイダ監督の本で確認してみようと思いま~す。

つづく、かも。










# by chekosan | 2024-12-15 15:57 | 映画、映像 | Trackback | Comments(0)
今月の関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊は、『積ん読の本』。

本やら紙類って、絶対勝手に増殖してますよね。

生きている間にたまった本を全部読めるだろうか、減らさざるをえないなあと日々頭を悩ましているので、床からいっぱい本が生えているお家を集めた今月の本は強い見方に思えました。

大量の本があるのを見るのが好きな人にはたまらないオールカラー本です!


書評『積ん読の本』@関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊_b0066960_16253138.png

# by chekosan | 2024-12-14 16:26 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)