知っておきたい今井むつみさんの認知科学の広くて深い世界を、体系的に学べるように、えりすぐってお届けしていきます。今週は、今井むつみさんが監修・解説を務める『 きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集 』(水野太貴・文、今井むつみ・監修・解説、KADOKAWA)からの抜粋です。4回目は、3歳児の父で、本書の編集を担当した廣瀬さんが選んだ「こどものいいまちがい」です。
まちがいには論理がある
「こっちはどう?」「どう、どう」
(2歳)
「お誕生日のケーキおいしい?」と聞かれた、幼少期の記憶は残っていませんか? あるいは、「遊園地、楽しい?」と問いかけられたときでも構いません。
そんなとき、「おいしい!」「楽しい!」と返したら、両親はパッと笑います。その顔を見て、子どもはこう学習したのかもしれません。「どうやら、上昇調で問いかけられたら最後のところを繰り返すだけで、うちの親は笑顔になってくれるっぽいぞ?」と。
「どう?」と聞かれて「どう」と返しちゃうのは、子どもなりに親を喜ばせようと一生懸命思いやっているのかもしれませんね。
「焼く」「燃やす」…使い分けは何歳から?
(2歳10か月)
レストランごっこをしていた女の子が、調理されたピザを持ってきてこう言ったそうです。それを言うなら「焼く」だ!! ただ、「焼く」も「燃やす」も「火にかける」という点では同じ動作を指しています。難しいですね。
「調理のために加熱する」を指す動詞は日本語にけっこうあって、「煎(い)る」「炙(あぶ)る」「燻(いぶ)す」「炒(いた)める」「揚げる」のほか、水を使ったものでも「蒸す」「茹でる」「炊く」などさまざまです。中国語だともっとあって、「炸(ジャー)」(大量の油で揚げる)、「烤(カオ)」(直火であぶって焼く)、「焖(メン)」(とろ火で煮込む)などなど……。
似た状況で使われることばを正確に使えるようになるのはずいぶん難しく、時間がかかりそうです。