その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は寺下薫さんの『 一流のリーダーが磨く 伝え上手 聞き上手のメソッド ヤフーの管理職1500人が学んだ極意 』です。
【はじめに】
私は、人前で堂々と話せる人や自分から積極的に話せる人がずっと羨ましかったし、自分とは別世界の人だと思っていました。
今は、仕事で大きな講演や企業・自治体での研修など人前で話すことが多いですが、それまでは、どちらかというと苦手、できれば人前で話すのも避けたいと思っていました。そんな話をすると、周りの人からよく「嘘だ!」とか「絶対にあり得ない」と言われるのですが、仕事だから、やむなくやっていたというのが正直なところです。特に初対面の人と話をするのが大の苦手でした。今でも、初対面の人との会話は実は苦手で、極力、相手から話しかけられるのを待っています。そのため、話す時は、相手に気づかれないように、かなり勇気を振り絞って話をしています。コミュニケーションについては、そういうレベルだったということです。今では自分の弱点を克服できるようになり、コミュニケーションに関して自信も持てるようになりましたが、伝えるスキルや聴くスキルも特別な才能を持っているわけではなく、ごく普通のサラリーマンレベルでした。
あなたの周りに会話がズバ抜けて上手な人、いわゆる、コミュニケーションモンスターのような人はいないでしょうか?
学校の入学式など初対面でも、すぐ自分から積極的に声をかけられる人って、あなたの周りにもいますよね。相手とすぐ仲良くなれる人、誰とでもすぐ話ができちゃう人です。私は、そばで見ていて、こんな人になれたらいいなって思っていました。自分もそういう人になりたいけど、どうすればなれるんだろう? と疑問に感じていました。同じ人間なのに、どうしてそこまで違うのかとも思っていました。私は、これまでにたくさんのコミュニケーションの達人を見てきました。そして、その方々には、実は共通してやっていることがあることに気づいたのです。
一方、コミュニケーションが苦手な人もいます。自分から話しかけるなんて、恥ずかしくてできないし、話しかけられても話を続けることができず、気まずい空気が流れてしまう人です。コミュニケーションを取ること自体にストレスを感じてしまう、いわゆるコミュニケーション下手の人もこれまでたくさん見てきました。そして、コミュニケーション下手の人たちにも共通点があることが分かりました。
あなたは、おそらく、コミュニケーションについて、少し苦手意識があったり、今より少しでもコミュニケーションスキルを身に付けたいと思ったりして、この本を手に取られたのではないでしょうか。
人は、生きている限り、コミュニケーションスキルが求められます。もっと言えば、コミュニケーションなくして、生活することや仕事することはできないとも言えます。プライベートでいえば、家庭の中で朝起きてから夜寝るまで、コミュニケーションは必要ですし、病気で病院にかかるとしても、お医者さんに自分の症状を伝えるコミュニケーションは発生します。医師とちゃんとコミュニケーションできなければ、適切な薬を処方してもらえません。
それだけではありません。学校の授業や職場でのミーティング、お客様への営業活動、プロジェクト活動、採用面談、取引先との交渉、人材育成の研修など、ありとあらゆるところで人とのコミュニケーションは求められます。仕事だけではありません。スーパーやコンビニでの買い物時の店員さんとのやりとり、お子さんがいる方は幼稚園や学校の先生とのコミュニケーション、塾の先生とのコミュニケーション、ママ友との会話、夫婦やカップルでの会話、親子間の会話などあらゆる場面でコミュニケーションが求められます。しかも、口頭だけではなく、LINEやメール、企画書、報告書、プレゼン資料といったテキストコミュニケーションも求められます。
ただ、コミュニケーションの難しいところは、相手があることです。しかも、相手は、感情を持った人間ですし、育ってきた環境やこれまで関わってきた人など、人により大きく異なるため、これをやれば必ずコミュニケーションが取れるといった正解にたどり着けるものでもないので、余計に厄介なのです。
私は、コミュニケーションは、生まれつきのスキルだとは思っていません。また、頭の良し悪しも関係ないと思っています。誰でもコツさえ身に付けられれば、できるようになります。コミュニケーションの取り方も口頭だけではなく、現在は、LINEなどテキストコミュニケーションも増えてきていますし、極端なことを言えば、黙ることで伝えたいことを相手に伝える方法だってあります。そういう意味で、テクノロジーも進化した今は、コミュニケーションの取り方についても大きく変わりつつあります。
今回、コミュニケーションに関して、少しでもあなたの悩みを解消していきたいと思っています。私は、コミュニケーションを習得したいスキル別に4つのパターンに分けて解説するつもりです。私は、若い時、コミュニケーションに関する苦手意識もありましたし、周りの人とのコミュニケーションも上手に取ることのできないダメ社員の一人でしたので、コミュニケーションについては、人一倍苦労しました。そのため、私のようなコミュニケーション下手の人が読んですぐ実践してもらえるよう、本書で使う言葉も、できるだけ分かりやすい言葉を使って説明しようと思っていますし、実例や体験談、ちょっとしたクイズなども取り入れて、飽きずに最後まで読めるようにしたいと思っています。
そろそろ、前置きはこれくらいにして、どうすれば、コミュニケーションの基礎的なスキルを身に付けることができて、スムーズに会話ができるようになるのかについて説明していきたいと思います。同時に本書を機に自分の苦手分野を克服できるようになっていただきたいなと思います。少しでもコミュニケーションに関するストレスがなくなれば幸いです。特にコミュニケーションに関するトラウマがある人は、そこから解放されるといいですよね。そして、最終的には、自分の伝えたいことが伝えられるようになり、自分のやりたいことを実現できるようになれる、そんな未来になるよう、その秘訣をお伝えしたいと思います。
では、早速始めていきましょう。
【目次】