いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。


「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん お茶会の秘密と二人だけのクラムチャウダー」友井羊(宝島社文庫)

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん お茶会の秘密と二人だけのクラムチャウダー (宝島社文庫 Cと 2-11)

スープ屋「しずく」店主の麻野は料理の腕前に劣らず、店に持ち込まれる謎や事件の推理力も評判だ。店の常連客で麻野の恋人の理恵は、同じく常連客でセレブの片山が催すホームパーティーに招かれた。しかし、片山が披露したダイヤモンドが少し目を離した隙に消失。なぜか犯人捜しを拒む片山に違和感を抱いた理恵たちは、麻野に相談を持ちかけるが……。
全4話の絶品スープ・ミステリー。


スープ屋しずくの謎解き朝ごはんシリーズ第9弾。メインの二人が付き合い出してから初の新刊。
待望の続刊。理恵と麻野が自身の想いを伝えあうことは一つの到達点で、尚且つ前作のラストが綺麗に終わっていたので、あれで完結なのも覚悟していただけに続いてくれて本当に良かった。
話としては二人の絡みはそれほど濃くなく、恋人になる前と話の流れに大きな違いはない。付き合い始めたといっても二人ともいい大人だし、各話の主人公は訪れたお客さんなのだから、当然と言えば当然か。
それでも、理恵が麻野を紹介する時に照れながら彼氏だと言ったり、麻野の理恵への気遣いがいっそう柔らかくなっていたり、各話の主人公の視点から見える二人、もしくは娘・露を含めた三人の関係性がさらに温かくなったように思える描写がいくつもあって、ほんのりと幸せ気分を味わえる。
あと、このシリーズと言えばスープのレパートリーの豊富さ。今回も200ページそこそことは思えないほど多様なスープが出てくる。
今回、特にそそられたのはポタージュ類。一品目からクレソンとくるみのポタージュなんて、味の想像し難い興味津々なものが出てきたと思ったら、バジルのポタージュや春芹のポタージュなど、香草好きにはたまらないポタージュが続々と。春芹のポタージュは是非とも食べてみたい。
謎解きとして良かったのは第四話のキノコの話。人の機微がメインの軽い謎解きが多い中で、時折この話のような科学的解法の謎解きが出てくるのが面白い。
二人の関係が安定したからか、いつも以上に平和で温かな雰囲気だった。今度は二人のデートとか読みたいですねえ。