南京事件否定派のムック&増刊、3点を走り読み

今週に入って、「正論」別冊、「WILL」別冊、「別冊宝島」と3点が相次いで刊行されました。
まだ走り読み段階だが、3点とも、予想通り「日本軍史料隠し」のうえに南京事件否定論を構築しています。
(否定派が隠し通す日本軍資料についてはhttp://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20060804参照)


(1)別冊「正論Extra.08」

書店で見て、こりゃダメだと直感。
だって、表紙のメインコピーが

シナ事変、南京事件から70周年…終わりなき情報戦

だもの。
「シナ事変」という言葉に抵抗感がない人間にしか購読されないでしょう。


内容は記事満載だが、半分以上は「正論」の過去記事の再掲である。とにかく詰め込んだという感じで、3冊の中でもっとも読みにくい。
内容的にも新味に乏しい。
http://www.sankei.co.jp/seiron/etra/no08/ex08.htmlを元に構成

中国人にとって「歴史」とは何か  岡田英弘

日本人の名誉は私たちが守る 平沼赳夫/稲田朋美/渡辺 周
何と全土に266カ所! 「中国反日記念館」回覧記
中国に歴史的客観性を求める空しさ 宮崎正弘
研究書から読み解く南京事件の真相 潮 匡人
南京事件の真実を追い求めて 阿羅健一
中国とつきあうための軍学考 兵頭二十八
「南京2万人」さえ否定した国際連盟議事録の中身 西川京子


1937年の真実 日支戦争は日本の侵略ではない 兵頭二十八/別宮暖朗
やっぱりなかった大虐殺-南京攻略戦、真実の証言第六師団の兵士たちはかく語りき 東中野修道
「南京事件」証拠写真の真贋を徹底検証する 東中野修道
中国国民党の極秘文書が証す「南京大虐殺」という虚構宣伝 東中野修道
「日本罪悪史観」を形成した中国帰還者「手記」の大罪 田辺敏雄
南京事件と戦時国際法 佐藤和男
防共史観確立のための「謀略論」考察 中村 粲
国共合作・内戦の背後で蠢いた「赤色謀略」の数々 黄 文雄
日本を泥沼に突き落とした米中ソ二つの反日ネットワーク 江崎道朗
反日ドイツ記者よ、「ホロコースト」と「南京」は違う! 小林よしのり
なぜ“彼ら”は日本をそんなに犯罪国家にしたいのか 小堀桂一郎/小林よしのり
言われっぱなしは御免蒙る! 反論のための完全ガイド15篇 櫻井よしこ/石川水穂/渡辺浩 

〈資料集〉
わが国の政治と司法は日中戦争をどう語ってきたか
無知、妄言、売国…のオンパレード 本誌編集部
執筆者略歴・操舵室から

(2)月刊「ウイル」2007年12月号増刊
「正論」別冊より記事数を絞り込んでおり、構成はシンプルでわかりやすい。
問題は、ほぼ全頁にわたって「東中野グループ」と「チャンネル桜」で構成されていること。一本調子。脆い。

記事は以下のとおり。
http://web-will.jp/

南京陥落70年
「南京大虐殺」に終止符!

 緊急特別対談 
■渡部昇一×東中野修道
「大虐殺」捏造を生んだもの

■聞き手・冨澤繁信
参戦勇士9人が語る
「南京事件」の真実

■南京事件の真実を検証する会
温家宝首相への公開質問状
南京大虐殺を証明できますか?

■茂木弘道
「南京大虐殺」は中国の謀略デマ宣伝
■溝口郁夫
一枚もない南京事件「証拠写真」

■東中野修道・冨澤繁信 司会・水島総
映画『南京』から見えるもの

■水島総
映画『南京の真実』制作秘話

■1937年12月17日 東京朝日新聞
朝日新聞支那特派員大座談会【再録】

■宮崎正弘
中国「反日記念館」のデタラメ展示
■阿羅健一
中国の挑発『レイプ・オブ・南京』を
許してなるものか
■西村幸祐
反日映画『南京』の上映を許すな!

■古荘光一
ヒトラーと「南京大虐殺」

 「百人斬り」本当の悲劇 
■稲田朋美
司法の闇「百人斬り」最高裁判決

■向井千恵子
「百人斬り競争」
新聞の虚報に殺されたわが父

■「百人斬り」野田元少尉
銃殺までの獄中手記

 The FACTS of 南京 
■新聞が報じた「その日の南京」グラビア
■「南京大虐殺」問題 この一冊
■ひと目でわかる「南京大虐殺」問題年表

■当時の南京全体図
■主要師団の南京進撃
■編集部から、編集長から

冒頭、渡部昇一氏と東中野修道氏の対談における、渡部氏の以下の発言が、この本のレベルを雄弁に物語る。

緻密な研究で「一人も虐殺していない」と最初に書かれたのは田中正明さんです。田中さんがそういう説を書かれたため、「まぼろし派」「中間派」「虐殺派」というような分類ができました。
 田中正明さんが書かれたことは大変立派で、東中野先生の研究によって全部、裏付けられましたが、当時は台湾にある国民党の文書がまだ出てきていなかったことと、外国の資料を使えなかったため、少し迫力に欠ける部分がありました。

渡部昇一氏は、既に『南京大虐殺否定論13のウソ』(南京事件調査研究会編)や「南京事件FAQ」で論破され尽くしている「田中正明の否定論」を論拠に、「一人もいない」説を支持している、というわけだ。
ゴーイング・マイ・ウェイですね。

この他、日本軍史料隠しの上に構築された「「南京大虐殺」は中国の謀略デマ宣伝」(茂木弘道)、すでにhttp://www.geocities.jp/pipopipo555jp/143photos/sakuin.htmで批判され尽くされている説を繰り返す「一枚もない南京事件「証拠写真」」(溝口郁夫)など、東中野メソッド全開である。




(3)別冊宝島 「南京大虐殺」という陰謀
ある意味、いちばんよくできているという印象。記事もバラエティに富んでいる。完全否定論に特化せず、解釈否定論をも組み込んでいる。
ただ、4章で構成されているうち、メインとなる「第三章−「南京大虐殺」の真相」の部分は、100%東中野氏インタビューで構成。
東中野氏と心中する覚悟のようですね。

http://tkj.jp/book/book_12141901.html

「南京」は過去の問題ではない

「南京大虐殺」は蒋介石と中国共産党が
仕組んだ20世紀最大の陰謀である。
そして21世紀、中国は「新・南京大虐殺紀念館」を
世界遺産に登録しようとしている!

まえがき−「南京大虐殺」という陰謀を策す中国
第一章−中国プロパガンダの正体

* インタビュー:映画「南京の真実」監督、水島総
* 米中の利害が結びついた
「南京大虐殺」映画の隠れた意図
* 「南京事件」の隠された真実
反日宣伝戦を担った米国人教師たち
* なぜ「南京大虐殺」は糾弾され続けるのか
アメリカにおける中国の反日プロパガンダ戦
* 日本人があえて追求しなかった真実
米国の太平洋戦争における国際法違反
* 兵頭二十八の歴史講座1 支那事変の「裏事情」

第二章−「南京事件」大論争

* 資料 10分でわかる 知らない人のための南京事件論争史
* 一気にわかる南京事件 「南京事件」の主要論者一覧
* 兵頭二十八の歴史講座2 「自衛戦争」と宣言できた日本

第三章−「南京大虐殺」の真相

* 亜細亜大学 東中野修道教授に聞く PART1
Q&A 大虐殺はなかったのか?
* 亜細亜大学 東中野修道教授に聞く PART2
Q&A 略奪、強姦はなかったのか?
* 兵頭二十八の歴史講座3 なぜ日本軍は南京を占領したか

第四章−南京戦の真実

* なぜ南京事件はおこったのか?
戦史 上海決戦と南京事件
* 忘れてはいけない歴史の真実
日本人が虐殺された通州事件
* もう一度考えてみる南京事件
なぜ南京事件があったと思われたのか?
* 検証 南京事件の新たな視点
支那事変拡大の経緯を戦略・戦術的思考で分析する!
* 兵頭二十八の歴史講座4 なぜ日本兵は略奪したのか

そしてメインである3章、東中野氏のQ&A記事「略奪、強姦はなかったのか?」の冒頭、東中野氏の発言がものすごい。ここまでワキが甘くていいのか。

Q京都16師団の中島今朝吾師団長は阿南人事局長に「捕虜を殺すぐらいなんだ。掠奪・強姦は軍の常だよ」と発言したとされています。掠奪、強姦等についてどのようにお考えでしょうか。

A結論から言えば、掠奪強姦は「十件内外」でした。東京裁判で塚本浩次法務部長は「十件内外であつたかと思ひます(略)十件と申しましたのは、一人一件ではございません。一件の中には数人を含む場合も相当あります」と証言しています。
(以下略)

以上3点、もしお読みになった方がいれば、気がついた点などお知らせ下さい。