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イジハピ! : 【第1074回】自炊事始め(2)家庭用断裁機の最高峰!? DURODEX 200DX 〜紹介編〜

 このシリーズでは、紙の本を断裁してスキャンし、強引に電子化する、いわゆる「自炊」で使う道具や、やり方について書いている。
 【第1074回】では、家庭用断裁機としてイチオシのDURODEX 200DXについて、長所と短所を含めていろいろ紹介してみた。
 今回は、実際に200DXを使った断裁の方法を書いてみる。
 前回どうよう、ビデオで紹介しようと思ったのがあまりにも映像の出来が悪かったので、ビデオから切り出したスクリーンショットに文字解説を添えて紹介する。

『かんたんPerl』をスキャンする

 断裁する本だが、他の人のだと色々さしさわりがあるといけないので、宣伝を兼ねて自分の本でやってみる。
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かんたん Perl:書籍案内|技術評論社

 もっとも、電書推しの人はわざわざ紙書籍を買って断裁、スキャンすることはないと思う。最初から電書版が売っているからだ。これ、技評の直販(Gihyo Digital Publishing)とAmazon Kindle、楽天koboの3社から出ているが、断然Gihyo Digital Publishingがおすすめだ。

かんたん Perl | Gihyo Digital Publishing
 まず技評電子版はKindleと並んで値段が安い。日本の消費税が掛からないのだ。どういう仕組みかはよく知らない。
 そして、最大の理由として、EPUBPDF(両方)という物理ファイルでダウンロード販売しているということだ。DRMがついていないので、手元の端末にいくらでもコピーできる。(他の人にあげたら犯罪だから、それは後生だからやめてくださいよ!)
 オライリー、達人出版会、ラトルズなどの先進的な技術出版社はこの形式で販売していることも多いが、わが技評もその仲間ということである。
 ということで電書が好きな方はGihyo Digital PublishingでEPUB+PDF版をお求めください。

 ということで、本当はこの本は自炊しなくてもいいのだが、ブックオフで安く買えたとか、親から買ってもらったとか、そういう特殊な事情で紙の本が手元にあるという設定で、さっそく自炊してみよう。

カバーのカットとスキャン

 本書はソフトカバーという最も一般的な本の構造で、本の本体にブックカバーと帯(腰巻きとも言う。宣伝用の幅が狭い紙)が巻きつけられている。

 まず、200DXに関係ないのだが、カバーと帯をどうするか。

 ぼくは両方スキャンしている。特に表紙(カバーの表側、表1)を、電子書籍の最初の1ページにするのが重要だと思う。本は表紙で認識することが多いからだ。
 カバーは、本の大きさにカットしてもいいし、カットせずに全体を一気にだらーっとスキャンすることもできる。
 全体を一気にスキャンする場合、スキャナーは紙の長さに制限を掛けている場合が多く、設定でその制限を削除することが必要である場合が多い。ぼくが使っているスキャナー Canon DR-C240 では「長尺モード」という設定にする。
 ただし、カバーをそのまま長尺モードで一気に読み込むと、当然とんでもない横長の画像になってしまい、表紙のイメージが損なわれるのでぼくはカットしている。

 本のカバーというのは、折り目を伸ばすと、下のような構造になっている。

 表4(折り込み)+表3(裏表紙)+背+表1(表紙)+表2(折り込み)

 プラス(+)の部分が折り目である。これをぼくは、このようにカットして並べている。

 パート1:表1(表紙)
 パート2:表2(折り込み)
 パート3:表4(折り込み)
 パート4:表3(裏表紙)+背

 表3と背は不精して切り離していない。分離すると背がとんでもなく細い紙になってしまってスキャンできないのと、どうせ電子書籍は立てて置けないので背を分離する意味がないのである。ワンポイント省力化だ。スキャンのところで改めて説明するが、中身が白黒の場合、カバーだけカラーでスキャンする。『かんたんPerl』は中身もカラーなので、せっかくなので中身もカラーでスキャンした。

 カバーを切るのはカッターで地道に行っている。ぼくはカッター、ゴムのカッティングボード、鋼鉄製の定規をホームセンターで買ってきた。ここはお金を惜しまずにある程度いいのを買ったほうがいいと思う。下手をすると指を切ったり、机を傷つけたりする。なおぼくは床で作業している。
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 表1と表2の間、表3と表4の間にはしっかりした折り目がついているので、そこに定規を当ててカッターで切り離せば良い。どんなに1日をふざけ半分で生きている人でも、ここだけは真剣にやった方がいい。ケガだけはしないでください。
 表1と背の間は、本の後ろの角に当たり、あまりしっかり折り目がついていないので、しっかり上からしごいて折り目をつけてから、同様に切り離す。
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 なお、帯は、補助的なものなので長尺モードで一気にスキャンしている。このへんの方針はお好みで。
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本体の分割

 本は厚さによって、1回で断裁できる場合と、できない場合がある。DX200は200枚ぐらいだから、400ページは切れる計算だ。『かんたんPerl』は600ページなので、切れない。
 切れない本を断裁機に入れても、ゴンと刃の手前でぶつかって、刃の下に紙が入らない。で、その場合は400ページ以下に分割する。
 600ページの『かんたんPerl』の場合、400+200ページにしてもいいが、300+300ページにした方が安全だ。どうせ2回切らないといけないので、均等に割り振る。200DXは、多くの断裁機同様、切断面が微妙に斜めになる(本のページの大きさが微妙に変わる)という性質がある。ぼくは気にしないが、厚い本であればあるほどこの影響が大きくなるので、なるべく300ページぐらいに収めている。また、極端に薄い本も苦手だ。500ページの本の場合は250+250、700ページの本の場合は230+230+240にすると安定した作業ができるような気がする。

★追記:なお、この時点で本に挟まっているアンケートハガキ、チラシ、付箋、売上管理カード、書店のレシートなどの異物を完全に抜き取っておく。ある程度ページをパラパラめくって物理的にチェックするしかないだろう。耳を折りたたんでいるページ(ドッグイヤー)も直しておく。また、針金綴じの本の場合ここで除去した方がいいだろうが、やったことがないのでやり方が分からない。スミマセン

 ということで最初に、『かんたんPerl』を300ページずつ分割する。
 本を思いっきり開く。水平に開くだけでは足りなくて、綴じ目の部分がむき出しになるように反対側に開く。すると、綴じ目とともに、接着剤や糸が見えてくる。
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 ここまで開いたら、カバー同様カッティング・マットを敷いてカッターで切っていく。カバーと違って一発では切れないが、思いっきり本をひらくとこの部分は薄くなっているので(背表紙と接着剤だけになっているので)思ったよりあっさり切れる。焦らずに、力をいれずに何回かカッターでなぞったほうがいい。変に力を入れると刃筋が曲がってしまい、本文を傷つけてしまったり、流血の惨事になったりする。くれぐれもカッター作業は落ち着いて。

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断裁その1(位置合わせ)

 いよいよ断裁機の作業に入る。赤い光線をオンにして、分割した1部分を手前から刃の下に通すと、切断目標の赤い線が見えてくる。これが最初は見づらいかもしれない。手前から本をずらして行くと、赤い光線に本が掛かった瞬間に筋が見えるのでさらに3ミリから5ミリ押し進める。押し進めたぶんだけ切れる。
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 これ、切り過ぎると本文まで切れてしまうし、切り足りないとノリが残ってページがくっついてしまう。どっちも避けたい。

 『かんたんPerl』のようなフツーの実用書の場合は、ノド(綴じ目の回り)の部分がそんなにギリギリまで印刷されてないので、安全策を取って5ミリ〜1センチぐらいカットしても大丈夫だ。
 マンガや写真集のような見開きが多い本は、可能な限り切り取る部分を小さくしたい。でも限界がある。

 ぼくが正直「失敗したな…」と思った本、本文の重要部分までカットして読めなくなってしまった本は、100冊中2冊である。
 1冊はエッセイマンガであるが、結構分厚い本で切り損なった。
 もう1冊は漢和辞典で、この本はギリギリまで本文が印刷されており、布製の立派な装丁のためにサイズを読み間違えて切り損なった。
 何回か切っているうちに、このへんの「間合い」が分かってくる。

 で、最初のパートを断裁する前に、断裁機の右のルーラー(定規)で何センチ何ミリに切ろうと知っているか、覚えておくと良い。これは本文部分の幅にあたる部分だ。これを覚えておけば、2個め以降のパートで同じサイズにすることで、いちいち赤い光線を見て微調整しなくて良いし、すべてのパートを同じ幅で断裁できる。本来はこの用途にグレーのガイド(磁石式)を使うのだが、ぼくはいまいちうまく使えないので取り外して使い、サイズを目視して覚えるようにしている。この本の場合は14センチだ。
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断裁!

 位置合わせができたら断裁だ。銀色のセーフティロックを外し、ゆっくり手前におろしてカットする。

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 これ、必要以上にリキんだり、早く切り下ろす必要はないが、ある程度の力と一定のスピードで、決然と切り下ろす必要がある。
 何回も切り直したりしていると当然切れ目がガタガタになる。
 もっとも、DX200の切れ味とレバーの押しやすさは相当のものなので、そんなに心配しなくても最初からうまく切れるとは思う。
 2パートに分けている場合は、各パートの表紙側を下にすると(1パート目を切るときは本の最初を下に、2パート目を切るときは本の末尾を下にすると)、表紙を最後に切ることになるのでプツン、という感触が伝わって切った実感が湧きやすい。

重要! 断裁が終わったあと

 断裁が終わると、スキャンする表紙および本文の大部分と、ゴミとして捨てる背の部分(幅が5ミリから1センチ)の2つに分かれる。
 前者は手前にあり、後者は向こう側に(刃の奥に)ある。

 ここで、普通だと手前にあるスキャンする部分をすぐに手前に取り出してしまうと思うが、その前にやっておいたほうがいいことがある。
 スキャンする部分をさらに奥に(刃の下に)押しこむのだ。

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 そうすると、ゴミとして捨てる背の部分が、押し出されて断裁機の向こうににコロンと落ちることになる。
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 これ、切ったばかりのときは刃の下(黄色い刃受けの上)にあるのだが、刃の下に手を入れてほじくりだすのはやめたほうがいい。なにしろ日本刀ばりの鋭く、大きく、重い刃である。絶対に刃の下に手を入れない方がいい。セーフティロックが掛かっているところではあるのだが、なんかの拍子に降りないとも限らない。指の3〜4本は簡単に飛んでしまう。

 ということで、しょうもないことではあるのだが、断裁が終わったら紙束をいったん押し込んで本の背の部分を断裁機の向こう側にコロンと落とす、というのをリズムとして覚えてしまうのが安全だ。これはおすすめ。

切った紙をさばく

 次に手前の紙束を取り出して確認する。
 まず表紙(厚紙)をスキャンするかどうか決める。ぼくは取り除くことにした。表紙をスキャンする場合、次の紙が接着されている場合があるので、取り除いた方が良い。くっついていると、最近のスキャナーはすごくて、紙が2枚あることを超音波で(?)感じ取ってエラーが発生する。このエラーを重送(じゅうそう)という。
 『かんたんPerl』の場合、表紙の次に白紙が1枚入っていたので、これも取り除いた。

 これで本文の前半部分が断裁できた。
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 ここでもう1つポイントとしては、断裁が甘くて接着剤が残っていたり、あまりにも紙が圧縮されていたりすると、ページがくっついていることがあることだ。これはこの段階で調べて、確実にほぐしておいた方が良い。スキャンする時点になって、重送が起こるとちょっと面倒だからだ。できれば銀行でお札を数える人や、コピー用紙をコピー機にセットする人がやるように、紙を扇型に開いてシャッシャッシャッ…とやる(さばく)のが良い。ぼくはうまくできないが。

後半も断裁

 現在とりかかっている本は2部に分けたので、後半を断裁しよう。
 後半は前半よりグッとカンタンだ。さっき位置合わせして、14センチという厚さでオッケーなことを確認しているからだ。ルーラーで位置合わせする。
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 これで断裁すればオッケーだ。断裁したら必要な部分を確認し、不必要な紙を取り除き、必要な部分はくっつかないようにさばいておく。終わったら前半と後半を重ねて揃えておく。

 あとはスキャンするだけだ。これはスキャナーの紹介を兼ねて次回に譲る。

 文章に書くとくだくだしくなったが、断裁はまったくカンタンな作業で、しかも最近の断裁機、特に200DXは自炊作業に特化して洗練を極めている。1〜2冊もやればコツが飲み込めるだろう。



 ここで一つ、蛇足ながら精神的なことを書いておくが、紙の本を断裁してスキャンし、無理やり電子書籍にして読むのは、どう考えてもB級の作業だ。A級ではない。紙の本を保管するスペースも、書斎でゆっくり本を開く時間もない人が、必要なコンテンツの電子書籍が得られない時点で行う妥協策である。もともと紙書籍はスキャンして読むように作られたものではないし、断裁した紙を捨てるのはとうぜん心が痛む。にもかかわらず、現状この作業を行わなければ、必要な読書、情報のインプットができないから、しょうがなくやっている作業である。ここまで来てこんなことを書くのもなんだけど、あまりにも悦に入って本を切りまくっていると思われるのも不本意なので一応書いておく。