昼間から調子よくブログや原稿を書いたり、お菓子を食べながらDVD見たりしていると、うるさいのが廃品回収のトラックである。
平日であろうが、休日であろうが、白昼から夕方に掛けてやって来る。
だいたい白の軽トラで、ここは川崎市だが、東京や横浜の業者が来る。
「こちらは廃品回収車です」
「お使いにならなくなったテレビ、パソコン、ラジカセ、その他、どんなものでも構いません」
「大きい物、重たいものでもかまいません」
「わからないことがあったらご相談下さい」
などという。

Recycle , recycle (7070496613)

(記事と写真は関係ありません。)
基本、違法な業者である。
品物の引き取りは古物商の資格が必要で、なまなかのことではそんな資格は取れない。
公衆での拡声器の使用も非常に制限されているが、ああしたトラックはそういう制限を堂々と破っている。

こちらは廃品回収車です、という、あたかも廃品を回収するというミッションを公的に授けられてやって来たような物言いをしているが、「消防署の方から参りました」という消火器の押し売りと一緒で、私企業である。
パソコンやテレビを仕入れてどうやってお金にするかというと、まともに修理して中古品として売っていたのでは勘定が合わない。
これはテレビの『報道特集』だか『バンキシャ』だかでやっていたが、中国に安価で輸出しているらしい。
ペットボトル同様の問題だ。
で、中国でどうやってリサイクルしているかというと、まあ一部の業者かもしれないし、今もやっているかわからないが、テレビでやっていたのは、橋の下でバケツに硫酸を入れて、それで溶かしてしまうというものだ。
そうやって部品の金(きん)を取り出しているのだ。
超・環境破壊である。

こういうの、中国の環境基準が甘いのが悪い、中国の人はモラルがない、という報道になりがちだが、この話全体を見ると、輸出する日本人業者も完全な共犯者である。
大量のテレビを修理もせず、正規のリサイクルルートも通さずにパーパー捨てている国と、環境基準が不幸にして整っていない国が隣り合って、グルになって起こす現象である。
もし金(きん)が取れるのであればそのまま捨ててしまうのは確かにもったいない。
しかし、もっと環境にクリーンな工場で完璧にリサイクルすることも可能で、金だけでなくいろんな物質や部品が取れるだろう。
前から思っていたが、工業製品は設計段階からもっとリサイクルしやすい設計にする余地があるのではないか。

「廃品回収車」は他に、テーブルとかバイクとか、大きなものをどんどん集めている。
あれは勘定合うのだろうか。
ぼくは一回魔が差して使わなくなったテーブルの回収をあのトラックのあんちゃんに頼もうとしたことがある。
いま思うと本当にバカだった。

お金を取ると言う。
テーブルを引き取るのに3千円とか言われるのである。
川崎市の正規の粗大ゴミの制度を使えば、相当面倒な手順を踏むとはいえ、500円で済む。
ぼくは「3千円も掛かるんだったらいいです」というと、金髪のあんちゃんが「そうスか」と言って事なきを得たが、それはぼくが相当ゴツイおっさんだからであって、お年寄りや女性の場合は相当な押し問答になり、気圧されて金を払うケースもあると聞く。

「さおだけ屋」と同じ原理である。
あれも拡声器では「たった500円、20年前のお値段です」とか言っておきながら、いざ声を掛けると「本当にいいやつは5千円する」とか言い出し、「じゃあいいです」と言っても去らず、押し問答になると言う。
家にある既存のさおだけを膝でへし折って凄む業者がいた、などという都市伝説がある。
金を取られる方は家まで押しかけられているし、なにしろ「ヤバい人」vs.「普通の人」だと後者に勝ち目はないので、買わされてしまうこともあるだろう。
押し売りだ。
そういえば「さおだけ屋」は最近見ない(聞かない)。
その代わり「廃品回収車」が来るようになった。
同じ人が商売替えしてやっているのではないだろうか。

テレビやパソコンは、中国の工場(?)が硫酸で溶かして金を取っているとして、バイクやテーブルは法外な料金を取って引き取ったあと、どうしているのだろうか。
これが驚きなされ、ちゃんと捨てないで、帰りしなにそのへんに不法廃棄する例もあるそうだ。
ひどいな!
ということで、あの「廃品回収車」は使わないほうがいい。
気をつけたい。

さて、ああいうトラックを見つけたらどうすればいいか。
110番に通報すればいいそうだ。

不用品回収業者・廃品回収業者の違法操業と騒音対策まとめ

ぼくも通報した。
以前あまりにも同じ業者が来たことがあったので、腹に据えかねて通報に踏み切ったのだ。
音楽付きの、女性の声のやつが、グルグル回っているのを、追跡して電話する振りをしてナンバーをボイスレコーダーに録音し、家に帰ってからあらためて通報した。
上のサイトによると、似たナンバーの最後だけ違うトラック大量にあるという話なので、相当な大組織である。
儲かっているのだ。
ただ、怖い人がやっている可能性があるので、あまり無理して接近したり、そばで通報したりメモしたりしない方がいい。
そこは気をつけて下さい。

110番に通報するのは本当の緊急事態でないと迷惑だ、という話をよく聞くが、ぼくが通報した限りでは「廃品回収車」の案件を言うと警察も非常に感謝してくれる。
問題視しているということだろう。
結局、通報が奏功したのか、件の業者はパタリと来なくなった。

しかるに、なぜこんな違法な商売が成り立っているのだろうか。
問題の一端は、公共の粗大ゴミ回収が面倒くさすぎることにある。

川崎市の場合はこうだ。

川崎市:粗大ごみの出し方

 ・まず電話かネットで申請し、
 ・番号と引取日を交付されて覚えておき、
 ・専用の券をコンビニに買いに行き、
 ・その紙に手書きで番号を書いて、
 ・その番号を貼付して引取日に出す

という。

まあちょっとした大仕事である。

昭和の御代には粗大ゴミの日というのがあって、無制限にバンバン出していた。
あれはあれで限界だったのだろうが、現状の手順ももうちょっと簡素化できないか。
コンビニで券を発行するときにもう通し番号が入っているとか、端末から申請が出来るとかすれば良い。
そのコンビニのそばにゴミを出すのであればそれでOKなのではないか。
家からネットで申請させるのであればプリンターでシールを出せるようにして欲しい。
カード精算であればそれも可能なのではないだろうか。

というか、この面倒くささに、できれば引き取りたくない、可能な限りゴミは出さずに住民がめいめい苦心して行政の負担を減らすべきだという「ウラの意図」を感じるのである。
であれば市区町村も、違法な「廃品回収車」を跳梁させている共犯者である。

パソコンやモニターの場合、さらに粗大ゴミでは引き取ってもらえない。
それは専用のリサイクル業者に頼めという。
リサイクルで環境に負荷を掛けないという、その理念は立派だし大切なことだとぼくも思う。
しかしなぜエンドユーザーにばかり負担が行くようになっているのだろうか。
これは「人間は苦しむほど偉い」、「手間を惜しむ人は横着者だ」という、日本人の「自己犠牲礼賛」の精神につけ込んだ、俗な言い方をすれば行政や大企業が弱者に負担を押し付けている構図ではないか。

もっと簡単に、たとえば電化製品のシリアルナンバーを言えばメーカーが引き取りに来るとか、電気屋さんは引取り義務を負うとか、そういう仕組みを作れば良い。
製品を作ったメーカーであれば、有益なリサイクル法も知悉しているはずだ。
上にも書いたが、メーカーも最初からリサイクルを考えた製品作り、流通機構を考えればいいのである。
廃棄するところまでが製品づくりである、ということにすべきだ。
昔のコーラの瓶や、使い捨てカメラのようなビジネスモデルにすればいい。

昔はコーラの瓶をお店に持っていけばお金を出して買ってもらえた。
子供がコーラの瓶を拾って小遣い銭にしていたのである。
それで街のコーラの瓶はきれいに拾われてなくなっていたのだ。
いまはペットボトルは皮を剥いて、皮とキャップはプラごみの日に、ボトルは水洗いしてつぶして(!)ペットボトルの日に出せという。
正気か!
なぜちゃんと働いている一般市民が貴重な時間を費やしてペットボトルを剥いて洗ってつぶさないといけないのだろうか。
そんなヒマがあったら楽しく談笑したりDVDを見たりしたい。
で、横着な人はそんなことしないで、適当にその辺にポイ捨てする。
街にはペットボトルが転がっているのである。

ゴミの分別などはプロにまかせれば、いくらでも機械化、自動化でき、そこから利益を生むことが出来るという。
(という趣旨の記事をWebで見たが、探し方がわからなくなってしまった。スミマセン)
なぜそうしないか。
大企業はトリッキーな製品を出し放題、行政が一方的にゴミの廃棄方法を天の声で決め、労力と負担は真面目な一般市民が一手に引き受けるというゴミ処理のあり方は、明らかに不公平であり、社会の質を低下させているのではないか。
この考えがぼくだけの突飛な異見ではない証拠に、街にはペットボトルが転がっていて、違法な「廃品回収車」が跋扈しているのである。
不法行為は世の中の歪みを映す鏡だ。