[図版を更改、註記追加しました 25日 10.00 ]
先に、「日本家屋構造」所載の敷居・鴨居と柱の仕口を紹介しました。
2009年9月に、江戸期の武家住宅「信州・松代『横田家』」を「重要文化財 横田家住宅 修理工事報告書」(長野県)を基に紹介いたしましたが(下記)、同報告書では、架構から造作まで、各部がきわめて詳細に調べられています。
「信州・松代『横田家』-1」
「信州・松代『横田家』-2」
「信州・松代『横田家』-3」
「信州・松代『横田家』-4」
理由は分りませんが、「横田家」では、敷居の仕口に、簡単な方法から手の込んだ方法まで、各種の方法が採られています。
そこで、上記「信州・松代『横田家』-4」から、敷居の仕口と柱の刻みの部分を再構成したのが下図です。
この図の左側:「柱の刻み」は「修理工事報告書」から転載し、文字を加筆してあります。
右側の敷居の各種仕口図は、報告書の解説を基に筆者が作成した図です。
詳しくは、前記「信州・松代『横田家』-4」をご覧ください。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ところで、最近建てられる住宅では、外部の開口の姿がかつての姿とはまったくと言ってよいほど変ってきています。
最も一般的になっているのは、「掃出し窓」では、「内法高さ2m、欄間なし+シャッター」。当然、「腰付き窓」でも欄間はなく、時にはシャッターが付いています。
最近まで、住宅用アルミサッシの規格は、従前の開口部の「規格」に準じていましたが、
近年、「専門家」の手に拠って、少なくとも私にはその訳が分らない《規格》になってしまいました。
そこで一般的なのが高さ2mの掃出し窓なのです。
内法高5尺7寸~6尺では、頭をぶつける人が増えたから、だそうです。
茶室のにじり口は、なぜ低いのでしょう?
開口部とは、いったい何なのでしょう?
かつての木製建具の規格については、下記に概略を書いています。
「建物づくりと寸法-1・・・・1間は6尺ではなかった」」[註記追加 25日 10.00]
その一方で、かつての姿と変っていない開口:窓があります。
便所、風呂場の窓です(ときに台所の窓も)。ほとんど、格子が付けられるのです。もちろんアルミ製。それゆえ、何処が便所、風呂場であるか、たちどころに分る。
なぜなのでしょう?
たしかに、かつては、便所や風呂場、台所の窓には格子が付きものでした。
その格子は、何のために設けたのか。
町家などの場合は視線の制御も役割の一つでしたが、一般には、格子は防犯の意味が強かった、と考えてよいでしょう。
他の開口部にはたいてい雨戸が設けることができましたが、便所、風呂場、台所などには雨戸が設けにくかったのです。出し入れも面倒。そこで、格子を付けた。格子を外すのは面倒、ゆえに設ける。
余談ですが、アルミ製の格子は、いわゆるジャロジーと同じで、取外しが木製よりも簡単とのこと。
ビスを静かに外せばよいからです・・・。
その「習慣」が、現在も引継がれているのでしょう。
私はシャッター付きの住居の経験はありませんのでまったく知らないのですが、
たとえば、シャッターを閉めた部屋で寝ていて、朝が来たことをどういう手立てで知るのでしょう?
春や秋の気持ちのよい天気のとき、少しばかり外の風を部屋に入れたい、などというとき、どうしているのでしょう?そんな「余計な」ことは考えないのかな・・・。
雨戸を閉めた時代、少し外気を入れたいと思うときは、雨戸を少し開けて過ごしたものです。第一、雨戸の上は、欄間で、欄間の開閉は自由、という例も多くありました。
内法:5尺7~8寸までが雨戸、そこから上が欄間で雨戸はなく、
かつては無双窓、新しくはガラス戸が入っていました。
おそらく、現在の欄間なし、シャッターという姿は、エアコン全面依存型の暮らし方が前提になっているのではないか、と思えます。
《効率的なエアコン使用》のためには、たしかに欄間なし・シャッターは《模範的省エネ》なのかもしれません。
しかし、それでほんとによいのでしょうか?私の感覚では、それは省エネの範疇には入らないのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下に、日本の建物で、開口装置がどのような過程をたどってきたか、その概略をまとめてみました。
これは、茨城県建築士事務所協会主催の「建築設計講座」のテキストからの抜粋です(「伝統を語る前に」の講習会テキストでも使っています)。
日本でも、当初は、開き戸が主流でした。その「不便」さから「引戸」に変化してきたのです。
「不便」とは、「日本の環境で暮すには不便」、ということです。
「建具」についての解説がこれに続くのですが、長くなりますので今回はやめ、いずれあらためて紹介させていただきます。
先に、「日本家屋構造」所載の敷居・鴨居と柱の仕口を紹介しました。
2009年9月に、江戸期の武家住宅「信州・松代『横田家』」を「重要文化財 横田家住宅 修理工事報告書」(長野県)を基に紹介いたしましたが(下記)、同報告書では、架構から造作まで、各部がきわめて詳細に調べられています。
「信州・松代『横田家』-1」
「信州・松代『横田家』-2」
「信州・松代『横田家』-3」
「信州・松代『横田家』-4」
理由は分りませんが、「横田家」では、敷居の仕口に、簡単な方法から手の込んだ方法まで、各種の方法が採られています。
そこで、上記「信州・松代『横田家』-4」から、敷居の仕口と柱の刻みの部分を再構成したのが下図です。
この図の左側:「柱の刻み」は「修理工事報告書」から転載し、文字を加筆してあります。
右側の敷居の各種仕口図は、報告書の解説を基に筆者が作成した図です。
詳しくは、前記「信州・松代『横田家』-4」をご覧ください。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ところで、最近建てられる住宅では、外部の開口の姿がかつての姿とはまったくと言ってよいほど変ってきています。
最も一般的になっているのは、「掃出し窓」では、「内法高さ2m、欄間なし+シャッター」。当然、「腰付き窓」でも欄間はなく、時にはシャッターが付いています。
最近まで、住宅用アルミサッシの規格は、従前の開口部の「規格」に準じていましたが、
近年、「専門家」の手に拠って、少なくとも私にはその訳が分らない《規格》になってしまいました。
そこで一般的なのが高さ2mの掃出し窓なのです。
内法高5尺7寸~6尺では、頭をぶつける人が増えたから、だそうです。
茶室のにじり口は、なぜ低いのでしょう?
開口部とは、いったい何なのでしょう?
かつての木製建具の規格については、下記に概略を書いています。
「建物づくりと寸法-1・・・・1間は6尺ではなかった」」[註記追加 25日 10.00]
その一方で、かつての姿と変っていない開口:窓があります。
便所、風呂場の窓です(ときに台所の窓も)。ほとんど、格子が付けられるのです。もちろんアルミ製。それゆえ、何処が便所、風呂場であるか、たちどころに分る。
なぜなのでしょう?
たしかに、かつては、便所や風呂場、台所の窓には格子が付きものでした。
その格子は、何のために設けたのか。
町家などの場合は視線の制御も役割の一つでしたが、一般には、格子は防犯の意味が強かった、と考えてよいでしょう。
他の開口部にはたいてい雨戸が設けることができましたが、便所、風呂場、台所などには雨戸が設けにくかったのです。出し入れも面倒。そこで、格子を付けた。格子を外すのは面倒、ゆえに設ける。
余談ですが、アルミ製の格子は、いわゆるジャロジーと同じで、取外しが木製よりも簡単とのこと。
ビスを静かに外せばよいからです・・・。
その「習慣」が、現在も引継がれているのでしょう。
私はシャッター付きの住居の経験はありませんのでまったく知らないのですが、
たとえば、シャッターを閉めた部屋で寝ていて、朝が来たことをどういう手立てで知るのでしょう?
春や秋の気持ちのよい天気のとき、少しばかり外の風を部屋に入れたい、などというとき、どうしているのでしょう?そんな「余計な」ことは考えないのかな・・・。
雨戸を閉めた時代、少し外気を入れたいと思うときは、雨戸を少し開けて過ごしたものです。第一、雨戸の上は、欄間で、欄間の開閉は自由、という例も多くありました。
内法:5尺7~8寸までが雨戸、そこから上が欄間で雨戸はなく、
かつては無双窓、新しくはガラス戸が入っていました。
おそらく、現在の欄間なし、シャッターという姿は、エアコン全面依存型の暮らし方が前提になっているのではないか、と思えます。
《効率的なエアコン使用》のためには、たしかに欄間なし・シャッターは《模範的省エネ》なのかもしれません。
しかし、それでほんとによいのでしょうか?私の感覚では、それは省エネの範疇には入らないのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下に、日本の建物で、開口装置がどのような過程をたどってきたか、その概略をまとめてみました。
これは、茨城県建築士事務所協会主催の「建築設計講座」のテキストからの抜粋です(「伝統を語る前に」の講習会テキストでも使っています)。
日本でも、当初は、開き戸が主流でした。その「不便」さから「引戸」に変化してきたのです。
「不便」とは、「日本の環境で暮すには不便」、ということです。
「建具」についての解説がこれに続くのですが、長くなりますので今回はやめ、いずれあらためて紹介させていただきます。