2024-10-29

敗戦国日本における帰還兵の苦しみを伝える貴重な武田さんのお話を読みながら、私は一方の戦争の勝者であったエノラ・ゲイの機長・ポールティベッツ氏にインタビューしたことを思い出していた。

1945年8月6日広島市原子爆弾を投下したB-29爆撃機が「エノラ・ゲイである

2004年に自宅を訪れると、美しく装飾された立派なリビングの壁にあったのが、キノコ雲の写真だった。

私がこんなものを飾るのかと絶句していると、ティベッツ氏は「私の人生の最大の功績だからね」と言った。

彼の話には一縷の悔恨も出ない。

アメリカでよく聞く肯定派の論理を繰り返すだけだ。「あの時私が落とさなければ戦争は終わらず、何倍もの日本人が死ぬことになった」「最悪の状況を止めるにはそれしかなかった」「むしろ日本を救う選択だったと信じている」と。

当事者の話を冷静に聞くという目的で行なったインタビューだったが、正直私の心には嫌悪しかなかったし、今思い返しても後味が悪かった。

その3年後、彼は亡くなった。

聞けば原爆投下批判的な人々の抗議運動を常に懸念して、死後は葬式を行ったり墓石を造ったりしないよう頼んでいたという。

今思えば、ティベッツ氏も人間性を捨て、異常なまでに自己正当化することでしか人生家族も守ることができなかったのか。

戦争は勝ち負けにかかわらず関わったすべての人間尊厳破壊し、人生を踏みにじる。

市井の民にとって良いこと・正しいことなど何一つない。

私たちが彼らから学ぶべきことはこのことに尽きる。

長野智子(キャスタージャーナリスト)

ソース: naganotomoko.com

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