古代エジプト人、骨肉腫の治療は出来ず…? だが頭部損傷の治療はしていたらしい

ケンブリッジ大学に保管されている 別々の時代の2つの頭蓋骨を調べたら、骨に発生するガン、いわゆる悪性腫瘍が見つかったという話。
このガン治療については、医療パピルスにおいては「治療不可なもの」として分類されており、この頭蓋の人物もおそらく病変が元で亡くなっている。ただし、片方については病変部分に死後の切り込みがあるなど、何か医学的な知見を得ようとしていた痕跡もあるそうだ。

古代エジプトの医療パピルスと医療技術についての資料は、以前、以下にまとめたのとで参考までに。

古代エジプト人の医療技術と「何が出来て、何が出来なかったのか」についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/501943967.html


で、今回分析された2体の骨については、ガンの痕跡があるのだけは共通しているが、かなり年代が異なっている。

元論文
Case report: Boundaries of oncological and traumatological medical care in ancient Egypt: new palaeopathological insights from two human skulls
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2024.1371645/full

※中の人は医療単語は専門外すぎてよくわかっていないのでかなり読み飛ばしている
※病変の具体的な内容について詳しく知りたい人は元論文を見て欲しい
※元論文には頭蓋骨のクリアな画像あり

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●E236

紀元前2687 年~2345年の間のもので、死亡時年齢は30~35歳の男性。
エジプトのギザで発見されたとのことで、おそらくピラミッド建造に関わった古王国時代の人物。癌と一致する大きな病変と、30 個のより小さな転移病変がある。病変の周囲には死後の切り傷があり、病気の理由を探求しようとしたためでは、とされている。

●E270

紀元前663年~343年、末期王朝時代に生きていたと思われる、脂肪年齢は50歳以上の女性
癌と一致する骨損傷が見つかり、頭部の傷が治癒した証拠も2つあった。治癒した傷は、正面から鋭利な刃物で切りつけられたなどの事件にまつわるものと考えられ、女性にしては珍しい刃状沙汰を経験していることになる。ただし、治癒していることから、その傷は死因ではない。
骨のガンについては除去されておらず、おそらくそれが死因。


古代エジプトの医療パピルスにおいて、癌とされる記述は、既に中王国時代のものに登場する。そして「治癒不可」で、呪文などに頼るしかないと分類されているものになる。
E270の女性の骨のように、対人外傷による頭部損傷は治療されているが、癌のほうはほぼ何もされていないところを見ると、やはり古代エジプトの医療は、外傷の治療レベルは高いものの、体内に原因のある病気などへの対応は、まだ未知の部分が多かったのだと思う。

そして、より古い時代の頭蓋に認められるように、死後の解剖のような試行錯誤は、時代を通じて行われていたのかもしれない。