通常の気温
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 23:38 UTC 版)
気温の標準的な観測の方法は、空気中で、地面から1.5メートル (4 ft 11 in)の高さで、直射日光が当たらない場所で計測するというものである。世界気象機関によれば、公認された地球上での観測史上最高気温は1913年7月10日にアメリカ合衆国カリフォルニア州の砂漠地帯にあるデスバレーのファーニスクリーク(グリーンランドランチ)で記録された56.7 °C (134.1 °F)であるが、この記録の信頼性には、記録された当時から問題があると指摘されてきた。それらの問題の1つは早くも1949年に博士のアルノルド・コートによって指摘された。コートは、ファーニスクリークでの56.7 °C (134.1 °F)の記録には、当時発生していた砂嵐が影響していたかもしれないとの結論に達した。コートは「このような嵐が強熱された地面の土砂を巻き上げ、観測機器の表面に衝突したことで、観測機器の中の温度が上がり、この記録が生み出されたのかもしれない」と述べた。クリストファー・C・バートやウィリアム・タイラー・レイドらのような気象史学者もまた、1913年のファーニスクリークでの記録は「神話」であり、実際の気温はこれより少なくとも2.2から2.8 °C (4から5 °F)低かったと主張している。これは1931年にチュニジアのケビリで記録された55 °C (131 °F)よりも低く、1942年にイスラエルのティラートズビ(英語版)で記録された54 °C (129 °F)に並ぶものである。2010年代後半にイランで記録された気温も2013年のファーニスクリークの記録に並んでいる。世界気象機関は1913年の記録を、将来何らかの調査が行われるまで保留したままにすると表明している。なお、2020年8月16日には、ファーニスクリークにおいて、これらの記録を上回る54.4 °C (129.9 °F)の最高気温が観測されており、ケビリと1913年のファーニスクリークの記録が取り消された場合は、これが世界の観測史上最高気温となる見込みだった。さらに、明くる2021年7月9日には同じファーニスクリークにおいてさらにこれを上回る130.0 °F (54.4 °C)が記録されたため、ケビリと1913年のファーニスクリークの記録が取り消された場合は、これが世界の観測史上最高気温となる見込みである。 現在の記録をどのようにみなすかというこれらの問題は90年間維持されてきた以前の記録とも関わってくる。1922年から2012年まで、世界気象機関が認める世界の観測史上最高気温の公式記録は、1922年9月13日にリビアのアジージーヤで記録した57.8 °C (136.0 °F)であった。しかし、2010年から2012年まで、専門家により行われた調査の結果、この気温を記録してからちょうど90年となる2012年9月13日に、世界気象機関は、1922年の記録は未熟な観測者が誤って温度計を読んだときの誤差によるものだという説得力のある根拠を示し、1922年の記録の公認を取り消した。世界気象機関は現在の記録を支持し始めたうえで、「私たちはデスバレーの気温の極値を認める。もし何か新しい材料が見つかれば、私たちは必ず調査を開始する。しかし、現在のところは、全ての入手可能な証拠がこの記録の信頼性を裏付けている。」と述べた。日本では、欧米の文献には見られない、1921年7月8日、イラクのバスラにおける58.8 °C (137.8 °F)という記録が戦後数十年にわたって、『気象年鑑』にも掲載されるなど、世界の最高気温記録として知られていた。しかし、2013年1月の研究では、日本国外での「7月15日と7月17日に129 °F (54 °C)が観測された」という報告が1934年の日本の文献に誤って「58.8 °C (137.8 °F)」と引用され、1950年代以降にこれが広まった可能性が高いことが明らかになった。
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