走り装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 04:44 UTC 版)
詳細は「鉄道車両の台車」および「二軸車 (鉄道)」を参照 走り装置あるいは走行装置は、鉄道車両がレール上を走行するために必要な車輪、車軸、軸受といった構造の総称である。車体と荷重を支え、レールに沿って車体を案内し、駆動装置や制動装置が発生させる駆動力・制動力を車輪と車体の間で伝達する役割を果たす。 鉄道車両では、軸受が車体に固定されていてカーブに沿って向きを変えることができないものと、台車に軸受が取り付けられていて車体に対して台車が回転することでカーブに沿って向きを変えられるようになっているものがある。前者を、1両あたりの車軸が2軸の場合を二軸車、3軸の場合を三軸車といい、後者をボギー車という。ボギー車の台車にも、2軸台車、3軸台車などがある。 ボギー車と二軸車の概念を図で示す。図の上がボギー車で、下が二軸車である。ボギー車では、台車に車軸が取り付けられているので、台車が車体に対して回転することでカーブで車輪がカーブの方向を向くことができる。一方、二軸車は車軸が車体に直接取り付けられているので回転することはない。 ボギー車では、多少の軌道の不整があっても滑らかに走行することができるという長所がある。走行性能の差から、二軸車では最高速度が低く留められており、日本では75 km/hに制限されているが、ボギー車はこれよりずっと速く走ることができる。また脱線への安全性という面で見てもボギー車の方が有利である。一方、2軸ボギー台車2つを備えた4軸の車両と二軸車では、同じ軸重での搭載量はボギー車が二軸車の2倍にできるが、車体が長くなる分車体強度を向上する必要があること、台車そのものの構造が複雑で重量がかさむことなどから、総合的な積載効率には大きな差はない。かつては、商取引の単位が小さくボギー車では輸送力が過剰であることを理由に、日本やヨーロッパの貨車は二軸車が主流であったが、輸送単位の問題はコンテナの採用で解決し、走行性能を重視して貨車でもボギー車を採用するようになってきている。 蒸気機関車では、シリンダーからコネクティングロッドで動輪を駆動する関係で、動軸は車体に固定されていて曲線に沿って回転させることができないものが普通である。曲線での走行性能を改善するために、若干の横方向の移動を許容したり、一部の車輪のフランジを削ったりしている。一方蒸気機関車でも先輪や従輪などの動力のない車輪については台車構造が標準である。 二軸車では、車軸同士の間隔のことを固定軸距(ホイールベース)という。これに対してボギー車では、台車における車軸の間隔を固定軸距といい、台車同士の距離は台車中心間距離(ボギーセンター間距離)という。固定軸距が長くし台車の回転抵抗を大きくすると直線での直進性能がよくなるが、曲線での操向性能が悪化する。このため、両者の特性の調和を図る必要がある。 二軸車のほかに三軸車というものも存在する。三軸車は曲線通過時の問題が大きく走行性能が悪いが、車両の費用や工数、消費する資材に比べて荷重を大きくできることから採用された例がある。その際には中央の軸に横動を許容するなどの対策が必要となる。またボギー車においても、ボギー台車に3つの車軸を備えた三軸台車というものが存在し、さらに四軸のものも見られる。逆に一軸台車というものもある。 通常の構造では1つの車体の下にボギー台車を2つずつ備えているが、2つの車体を連結する部分の下に台車を取り付けて車体同士の連結構造と一体化した台車もあり、連接台車と呼ばれる。曲線通過が容易になり車体の重心を下げられる、台車から車体がオーバーハングした部分がなく乗り心地がよいなどの利点があるが、車端部の構造が複雑になり1台車で支持する荷重が増大する、車両を切り離すことが容易ではないなどの問題もある。また連接車は、台車中心間隔に制約が設けられている関係で、車体長が短いものが多い。 路面電車などでは、その車体に全く車輪・車軸構造を持たずに、両側の車体によって支えられているだけの構造のものもある。これも連接車の一種とみなされる。低床式路面電車などでは、車体を下げつつ客室空間を確保する目的で、左右の車輪を車軸でつながずに独立した車輪としているものもある。 日本独自の珍しい方式としては、車体の片方にはボギー台車を装備している一方で、もう片方は固定車軸を備えている車両があり、片ボギー車(半ボギー車)と呼ばれる。
※この「走り装置」の解説は、「鉄道車両」の解説の一部です。
「走り装置」を含む「鉄道車両」の記事については、「鉄道車両」の概要を参照ください。
走り装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/18 00:36 UTC 版)
「国鉄キハニ5000形気動車」の記事における「走り装置」の解説
重ね板ばねを用いた軸箱支持方式の二軸車で、車輪径は860mm、軸距は4,500mm、車軸は10t長軸を採用している。また、軸受はコロ軸受ではなく平軸受であったが、これはコロ軸受と比較して起動抵抗が約7倍、走行抵抗も約1.5倍以上であり、性能面での悪影響はかなり大きかった。
※この「走り装置」の解説は、「国鉄キハニ5000形気動車」の解説の一部です。
「走り装置」を含む「国鉄キハニ5000形気動車」の記事については、「国鉄キハニ5000形気動車」の概要を参照ください。
走り装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 03:42 UTC 版)
「国鉄キハ01系気動車」の記事における「走り装置」の解説
足回りは当時の二軸貨車に準じた構造の二段リンク式板ばね軸箱支持で、旅客用ゆえにばね定数は柔らかく設定されていたが、それ以外は貨車同様の設計であった。 制動装置には重量のかさむ鋳鉄制輪子による踏面ブレーキを止め、自動車同様のドラムブレーキを各車輪の外側に装備した。
※この「走り装置」の解説は、「国鉄キハ01系気動車」の解説の一部です。
「走り装置」を含む「国鉄キハ01系気動車」の記事については、「国鉄キハ01系気動車」の概要を参照ください。
走り装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 09:04 UTC 版)
黎明期の小型車や路面電車では、単車とも呼ばれる二軸式が普及したが、現在の高速電車では、連接式を含め、ほとんどが二軸のボギー式である。 バリアフリー化を目的とした超低床電車では、通しの車軸を持たない左右独立車輪で首を振らない台車や、一軸台車なども使われる。 直流電動機の直並列制御を用いるのが一般的な電車においては、電動機が偶数個である必要があり、動軸も偶数である。また駆動システムでモノモーター方式を採用する場合にも、空転を防ぐため二軸駆動とすることが求められる。このため、軽便鉄道の気動車などに見られる片ボギー式の採用例は、過去に栃尾電鉄で見られたように、気動車のエンジンを撤去し、そこに電動機を装架する、といった特殊なケースを除くと事実上皆無である。
※この「走り装置」の解説は、「電車」の解説の一部です。
「走り装置」を含む「電車」の記事については、「電車」の概要を参照ください。
走り装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/06 06:24 UTC 版)
「国鉄D50形蒸気機関車」の記事における「走り装置」の解説
先台車は1軸心向(リンク)式、従台車は18900形での実績を踏まえて改良が施されたコール式を採用し、動輪径は高速貨物列車牽引を念頭に置いて9600形の1,250mmから1,400mmに拡大された。 動軸の支持は当初、担いばねを欧米と同様、下ばね(アンダースラング)式としていたが、9922以降は検査時の動輪の着脱(車抜き・車入れ)の簡略化を狙って上ばね(オーバースラング)式に設計変更され、これに伴い干渉する部品の位置関係を順番に修正していった結果、火室を支える後台枠を延長し、ボイラーそのものも後退させるという大がかりな設計変更を強いられた。そのため、後述するロッドの材質変更もあって、D50形乗務経験のある乗務員の乗り心地に関する評価では、「前期車の方が格段に良かった」とする意見が残されており、運動部品の慣性質量の増加と上ばね化によるロールセンターの上昇が、走行中の車体振動に直接影響を与えていたことを示している。 また、新設計が導入されたリンク式の先台車は、心向棒と軸箱の結合や案内装置の設計が適切でなかったことから脱線事故や第1動輪のフランジ偏摩耗が多発し、さらに炭水車と機関車本体の連結装置の設計が適切でなかったことから、側線などで用いられる8番分岐の通過時に脱線を頻発させた。これについては機関車本体のみで8番分岐器を通過させたところ脱線が発生せず、炭水車連結時に限って脱線したことなどから、機関車本体と炭水車を連結する連結装置を両側式から中央式に変更し、先台車心向棒を短縮して機関車全体としての曲線通過性能を引き上げることで対処された。また、先台車そのものについてはD50 364 - 369・376 - 380でC10形にて好成績を収めていたコロ式に変更することで最終的な解決が図られた。 台枠は八八艦隊計画がワシントン海軍軍縮条約締結により中止となったことで大量に余剰となった肉厚の圧延鋼板を活用することで、日本で製造された鉄道院(鉄道省)制式機としては初となる、90mm厚鋼板を刳りぬき加工した部材による棒台枠構造となった。 鉄道院制式機では既に、1912年(明治45年)に製造された8850形や4100形で棒台枠が採用されていたが、これらはいずれもドイツからの輸入機であり、日本の粗鋼生産量の多くを占めていた官営八幡製鐵所が未だ第2期拡張工事(鋼材生産年間量30万トン目標)の途上にあって国内市場で適切な板厚の圧延鋼板が調達できなかったことから、前者の川崎造船所によるスケッチ生産機では鋳鋼製台枠が、後者の模倣改良型に当たる4110形では板台枠が、それぞれ代用設計として採用される状況であった。そのような事情から、八幡製鐵所の第3期拡張工事(鋼材生産年間量65万トン目標)が完成した1917年(大正6年)以降の設計となる本形式についても、戦艦・巡洋戦艦だけで八幡製鐵所の年間生産目標量を超える、膨大な量の粗鋼を消費する予定であった八八艦隊計画の中止がなければ、棒台枠の採用は困難であったと見られている。
※この「走り装置」の解説は、「国鉄D50形蒸気機関車」の解説の一部です。
「走り装置」を含む「国鉄D50形蒸気機関車」の記事については、「国鉄D50形蒸気機関車」の概要を参照ください。
- 走り装置のページへのリンク