かし‐かり【貸し借り】
貸し借り
『日本霊異記』中-30 河内の国の某女が産んだ子供は、10余歳になるまで歩けず、たえまなく泣きわめいては、乳を飲み、物をむさぼり食って、母親(=女)を苦しめた。女がその子供を淵に捨てると(*→〔子捨て〕2)、子供は「あと3年苦しめてやりたかったのに」と悔しがった。この者は、前世で女に物を貸したが、女はそれを返済しなかった。そこでこの者は、今世で女の子供として生まれ、さんざん飲み食いして、前世の貸しを取り戻したのだった。
『聊斎志異』巻1-32「四十千」 裕福な男の夢に、ある夜何者かが現れ、「4万の負債を返せ」と言って奥の部屋へ姿を消した。まもなく妻が子供を産んだので、男は「前世での負債を取りに来たのだ」と悟り、4万の金銭(かね)を一室に置いて、子供の衣類・食物・薬代などを、ここから出した。3~4年後、金銭の残りが7百ほどになった時、男は「4万の金銭もそろそろ終わりだ。お前は往くが良い」と子供に言う。すると子供は死んだ。男は残りの金銭で子供の葬儀をした→〔申し子〕4。
『妙好人』(鈴木大拙)「付録」3 石見国の妙好人・善太郎の家へ、ある夜、米盗人が入った。盗人は、近所から帰りがけの善太郎と庭先で出くわし、米俵を捨てて逃走した。善太郎は米俵をそのまま庭に放置し、家に入り仏前に灯明をあげて、「前世で借りた米を、今返させてもらうのだ。ありがたい、ありがたい」と念仏を唱えた。畑の大根を盗まれた時も、同じようにした。
『ナスレッディン・ホジャ物語』「ホジャの商法」 学者風の2人がホジャの店で飲み食いしたあげく、「人間は輪廻転生するから、2~3百年後に、われわれはまたこの世に生まれてくるだろう。今日の勘定はその時に払おう」と言った。ホジャは「お前らは、3百年前にも同じことを言ったじゃないか。その時の分も合わせて、今払え」と言い返した。
『貸し椀』(昔話) 昔、嫁どりや法事で御膳がたくさんいる時には、白こべ山の神様の所へ行き、穴場の前にお供え物をして、「御膳を百枚、お椀を3百貸しておくれ」というふうに頼んだ。すると翌日、お供え物の代わりに、御膳百枚、お椀3百が出してあった。使った後は、きれいに洗って穴場の前へ返しておいた。ところが欲の深い人がいて、御膳を1枚隠して返さなかったことがある。それからは、誰が頼みに行っても、貸してもらえないようになった(石川県小松市下八里町)。
『百椀とどろ』(松谷みよ子『日本の伝説』) 日向の国に百椀とどろという淵がある。嫁取りや葬式の時に淵まで行って、「何月何日、何人前の膳椀を貸してくり」と頼んでおくと、当日には膳椀が岩の上に並んでいた。ある時、馬鹿もんが「淵から膳椀が出るところを見たい」と思い、「急な客で、今すぐ膳椀10人前いる」と叫んだ。白い小さな手が椀を1つ持って水面から出たので、馬鹿もんはその手をつかんだが、逆に引っ張られて、馬鹿もんは淵へ転げ落ちた。それ以後は、何も貸してくれなくなった(宮崎県)。
『酉陽雑俎』巻10-403 倶振提国(=西域の国)の城北の、真珠江を隔てて20里のところに、神がいる。春秋2回、国王が祭りを行なう時、必要な道具、金銀の器は、神の厨(くりや)から自然に出てくる。祭祀が終わると、消滅する。天后(=武則天)が人をやって試させたが、嘘ではなかった。
『シャルロッテ・フォン・クノープロッホ嬢への手紙』(カント) オランダ公使が、銀製食器セットを購入した後に死去し、未亡人が代金を請求された。未亡人は、「夫は代金を支払ったはずだ」と思うが、それを証拠立てる領収書がない。未亡人はスヴェーデンボリ(スウェーデンボルグ)氏に、「亡夫に会って、聞いてほしい」と頼む。3日後、スヴェーデンボリ氏は、「ご主人と話して、『領収書は上階の1室の戸棚にある』と聞きました」と報告する→〔霊界通信〕1。
『和漢三才図会』巻第69・大日本国「駿河」 熊谷蓮生房(直実)が、ある富家に1貫文の借銭を請うた。主人が質物を要求すると、蓮生房は「これが質物だ」と言って、念仏10遍を唱える。主人はその誠に感じて、銭1貫文を与えた。後に蓮生房は借銭を返しに訪れ、主人に「質物を返して下さい」と言う。主人はどうすればよいのかわからなかった。蓮生房は「難しいことはありません。あなたも念仏10遍を唱えればよいのです」と説く。主人は念仏を唱え、一向専修の法を聞いて、妻ともども剃髪した。彼らが結んだ庵が、今の蓮生寺(藤枝市)である。
「貸し借り」の例文・使い方・用例・文例
- 君の400ドルを返すよ.だから今はもう僕たちは貸し借りなしだ
- さらに、この貸し借り契約は、以下のような期間や状態つきで結ばれた。
- 彼は決して物の貸し借りはしない。
- ようやくその男と貸し借り無しになった。
- これで(我々は)貸し借りがなくなる.
- 貸し借りを清算しよう.
- これで君とはもう貸し借りなしだね.
- 金の貸し借りはしないというのが私の原則だ.
- これで貸し借りが無くなる
- 友人の間の貸し借りはなるべくせぬがよろし
- その家は、貸し借りできる状態ではなかった
- 貸し借りの条件を話あい返金もする事務所
- 金銭の貸し借りに関する会談
- 貸し借りなどを相殺すること
- 毎日少しずつ返していく約束で貸し借りする金銭
- 借地法という,土地の貸し借りに関する法律
- 企業間における貸し借り
品詞の分類
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