けいりょう‐けいざいがく〔ケイリヤウ‐〕【計量経済学】
計量経済学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 09:12 UTC 版)
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計量経済学(けいりょうけいざいがく、英: econometrics)とは、経済学の理論に基づいて経済モデルを作成し、統計学の方法によってその経済モデルの妥当性に関する実証分析を行う学問である。
古典的計量経済学
系列
分析の対象となる経済系列は、次の3種類に大別される。
- 交差系列 (Cross section Data) :同一時点での様々なデータ。例えば、ある時点で47都道府県の人口、人口密度、男女比などを調べたもの。
- 時系列 (Time series Data) :同一種類のデータを様々な時点で取ったもの。例えば、ある都道府県の人口を時間を追って調べたもの。
- 交差時系列 (Panel Data) :交差系列 (Cross section Data) で時系列 (Time series Data) である系列。例えば、47都道府県の人口を時間を追って調べたもの。パネルデータ分析と呼ぶことが多い。
最小二乗法
単回帰
推定量の導出
実証分析は、多くの場合回帰分析を通じて行われる。回帰式の推定方法には様々なものがあり、最も基本的なものがOLS (Ordinary Least Squares) 、最小二乗法である。被説明変数
データ拡張法
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メトロポリス=ヘイスティング・アルゴリズム
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ベイズ分析の課題と展望
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ベイズであるが故に生涯付きまとう問題は、確率を主観的に扱っているという批判である。古典的計量分析は頻度論的確率に依拠しているため、確率については客観的に振舞うことが可能である。
しかし、いかなる分析において主観が介在しないものはない。例えば線形回帰モデルを例にとっても、なぜ線形模型を構築したのか、なぜその変数群を選択したのか、こういう点に分析者の主観が大いに入り込んでくる。ベイズではその主観がただ確率に混入しているに過ぎない。それをあげつらって批判するのは、何の実りもない。
情報の有効利用という観点では、ベイズ統計学分析がはるかに優れている。それは分析者の持っている情報を事前確率という形で定式化し、それに尤度をかけることによって事後確率を導出できるからだ。つまり情報の更新という視点をベイズは積極的に使っていることになる。
これに対し古典的計量分析では、既存の分析方法の精緻化以外に進歩する余地がないのが実情である。ノーベル賞級の業績と言われているGMMも、かつてのモーメント法を改良しただけに過ぎない。確かに既存の方法論を特殊形として含んでいる点では、科学哲学(とりわけ素朴ベーコン主義)の観点からもパラダイム転換に近い影響を与えたことは間違いない。しかし、その後は理論の精緻化以外に得られるものはなかった。
ベイズ分析も、基本はベイズの定理の応用でしかない。しかし、MCMCの発展・導入により分析方法が飛躍的に拡充した。これまで解析的に不可能であったものが、数値的に簡単に分析できるようになり、同時に理論面でも整備が進んでいる。実際の応用という点においても、その有用性をベイズは物語っている。
いまだに計量経済学の世界では、標本理論とベイズ理論とが対峙しているままである。またベイジアンの不利な点は、ベイズを学ぶためには標本理論をある程度理解していることが前提であるところにある。したがって、計量経済学におけるベイジアンの人口は、標本理論に比べてはるかに少ない。しかし、昨今の応用事例の幾何級数的な増加、および教科書・専門書の体系化もあいまって、今後ますますベイジアンは増えていくものと思われる。
米国や日本では、確率に関する哲学的議論がいまだ残っているために、ベイジアンを導入するのに消極的な研究機関が多い。そうすることによって、分析手法や視野を狭めている可能性がある。
今後の展望
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1970年以降は、時系列分析・ミクロ計量経済学が流行である。時系列分析で、2003年のノーベル経済学賞は、単位根、共和分という概念を提唱したロバート・エングルとクライヴ・グレンジャーが受賞した。ミクロ計量経済学で、2000年のノーベル経済学賞は、離散選択・Treatment effectの推定方法を提唱したダニエル・マクファデンとジェームズ・ヘックマンが受賞した。
計量経済学は、経済モデルの実証研究を行う学問であり、近代経済学の発展に大いに貢献してきた。現代ではマクロ経済分析にとどまらず、ミクロ経済学の分野である財政学や労働経済学などにおいても必要不可欠な分析手法となっている。特に最近ではマイクロデータの整備が進んできたこともあって、とりわけパネルデータや離散選択等を利用するミクロ計量経済学が盛んである。また、時系列分析は、金融工学という学問体系にまで発達を遂げた。ただ単に経済モデルの検定にとどまらず、工学分野への応用によって更に計量経済学を活かすことのできる可能性が広まっている。
実際の実証分析では、小標本理論よりも漸近理論が重視されており、推定量の一致性を確保することが大前提になっている。かつては、一致性の次には小標本特性や効率性を追求していたが、近年ではそれよりも仮説検定に関する一致性を重視している。今後、データが増えることが予想されるので、漸近理論を適用することの正当性が高まるという観測が、このような流れを生んだ一因と言える。
経済学者のディアドラ・N・マクロスキーは、ほとんどの計量経済学の教科書は有意と実体的重要性が異なるということを述べていない、有意性検定はそもそも尺度ではない、と指摘している[4]。
学術雑誌
- Journal of Econometrics
- Quantitative Economics
- Econometric Theory
- Journal of Business and Economic Statistics
- Journal of Applied Econometrics
- Econometric Reviews
- Econometrics Journal
脚注
注釈
出典
- ^ Cox, D. R. (1961). “Tests of Separate Families of Hypotheses”. Proceedings of the Fourth Berkeley Symposium on Mathematical Statistics and Probability (University of California Press) 1: 105-123 .
- ^ Pesaran, M H (1974). “On the General Problem of Model Selection”. Review of Economic Studies 41 (2). doi:10.2307/2296710.
- ^ Davidson, Russell; MacKinnon, James G (1981). “Several Tests for Model Specification in the Presence of Alternative Hypotheses”. Econometrica 49 (3): 781-793. doi:10.2307/1911522.
- ^ ディアドラ・N・マクロスキー 赤羽隆夫訳 『ノーベル賞経済学者の大罪』 筑摩書房 2002年 pp. 54-55、57
関連項目
- 経済成長
- 金融工学
- 経済統計
- Gretl
- Maxima
- 数値解析ソフトの比較
- Eviews
外部リンク
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