産業組織論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/19 09:11 UTC 版)
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2013年6月) |
経済学 |
---|
理論 |
ミクロ経済学 マクロ経済学 数理経済学 |
実証 |
計量経済学 実験経済学 経済史 |
応用 |
公共 医療 環境 天然資源 農業 開発 国際 都市 空間 地域 地理 労働 教育 人口 人事 産業 法 文化 金融 行動 |
一覧 |
経済学者 学術雑誌 重要書籍 カテゴリ 索引 概要 |
経済 |
Portal:経済学 |
産業組織論(さんぎょうそしきろん、英: industrial organization)とは、財・サービスの供給主体である企業および企業のグループとしての産業を考察対象とするミクロ経済学の応用分野である。経済の中心的主体である企業を扱っていることもあり、経済学の発展と共に大きく変容を遂げている。古典的な産業組織論 (Old I.O.) の他、ゲーム理論や最近の計量経済学の手法を取り入れた新しい産業組織論 (New I.O.) があり、またNew I.O.の中には理論的分析を主とするTheoretical I.O.および実証的研究を主とするEmpirical I.O.という分野に分けることができる。
産業組織論の扱う問題
古くから、競争形態から市場構造を分類し、企業の行動および社会的最適性の検討を行うSCPパラダイムという考え方が中心を占めていた。市場構造の分類としては、独占、寡占、独占的競争および完全競争となり、これらが主な問題となっている。また価格差別化、合併、買収、製品差別化なども研究対象である。
ただし、新しい産業組織論の中では、これらの問題の他に、組織の経済学に見られるような、企業内組織(コーポレートガバナンス)の分析、流通の分析、資金調達の問題など、企業に関わることを中心とした幅広い主題を持ち始めている。
また、産業組織論は、競争政策(独占禁止政策)、経済的規制、産業政策などの形で社会に応用されている。
産業組織論の各分野
- (古典的)産業組織論 (Old I.O.)
- 独占、寡占などのモデルを用いて、SCPパラダイムを基礎に、実証的研究(理論的なものもあるが主に実証研究が中心)を行う分野である。基礎にするモデルは、ゲーム理論や契約理論などの最近の発展というよりは、クールノー競争やベルトラン競争などの古典的なものを用いることが多い。その上で、実証研究により、市場の特徴を導き出していく。例えば、市場がどれだけ独占的であるか、弾力性はどの程度であるかなどを導き出し、最適な政策はどうあるべきかを検討する。
- 新しい産業組織論 (New I.O.)
- ゲーム理論、契約理論の理論的研究をふんだんに取り入れ、寡占はもちろん、その他の企業に関する分析を積極的に行うものであり、主に理論的研究が中心となる。1970年代にはじまった[1]。
- また、研究対象は古典的産業組織論が主な対象としたものだけではなく、企業内部の組織のありように関する研究も行われ、新古典派ではブラックボックスとされた企業の生産過程の理論化が試みられた。
この流れから、主に産業組織論は二つの分野に分けることができる。
- 理論的産業組織論(Theoretical I.O.)
- 基本的には新しい産業組織論を指すが、時に契約理論の代名詞として使われることがある。また、組織の経済学、企業理論などとも呼ばれることがある。基本的には、次に述べるEmpirical I.O.の登場により、区別するためにこのように呼ばれる事になったと考えられる。
- 実証的産業組織論 (Empirical I.O.)
- Micro-structureを用いた実証研究などともいわれる。従来の実証研究より理論を重視し、ある特定の理論(寡占理論、参入退出の理論など)を基礎にしてのパラメータの推定を目的とする。データが基本的に総量のものしかない場合でも、個々の財に関するデータをもとにシミュレーションなどを通して企業や個人の「選択」を描き出す。
学術雑誌
- Rand Journal of Economics
- Journal of Industrial Economics
- International Journal of Industrial Organization
- Journal of Economics and Management Strategy
- Review of Industrial Organization
脚注
関連項目
外部リンク
産業組織論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 17:01 UTC 版)
戦後先進諸国の独占禁止政策に大きな足跡を遺した経済学は「伝統的産業組織論(英: Old Industrial Organization Theory)」と呼ばれ、その内部では「ハーバード学派(英: Harvard School)」と「シカゴ学派(英: Chicago School)」が互いに拮抗していた。 ハーバード学派は1930年代のチェンバリン(英: E.H.Chamberlin)とメイスン(英: E.S.Mason)の先駆的研究によって誕生し、60年代から60年代にかけてのベイン(英: J.S.Bain)やケイブス(英: R.E.Caves)らの研究によって体系的に完成され、その後ケイセン(英: C.Kaysen)、ターナー(英: D.F.Turner)、シェラー(英: F.M.Scherer)らに受け継がれた一群の経済理論・政策思想集団を指す。彼らは、「SCPパラダイム」や「集中度・利潤率仮説」と呼ばれる立場から、厳格な独占禁止政策を主張した。「SCPパラダイム」とは、産業組織を「市場構造」(市場競争および価格設定に影響を与える市場組織上の特徴)、「市場行動」(各企業が市場の需給条件や他の企業の戦略を考慮して行う行動)、「市場成果」(資源配分効率性や経済権力の分散化)という三要素に類型化して、「市場構造(英: Structure)→市場行動(英: Conduct)→市場成果(英: Performance)」という因果関係があると考えるアプローチである。また、「集中度・利潤率仮説」とは、「寡占的・独占的産業における企業間の共謀や協調的行動」や「高い参入障壁に守られた競争制限的行為のため、超過利潤が発生する」という理由から、競争的市場における市場集中度と利潤率とが相関関係を持つという仮説である。 このように厳しい独占規制を主張した「ハーバード学派」に対して、「シカゴ学派」とはノーベル賞経済学者スティグラー(英: G.J.Stigler)に道を切り拓かれ、デムゼッツ (英: H.Demsetz)、ブローゼン (英: Y.Brozen)、ディレクター(英: A.Director)、ポズナー(英: R.Pozner)らによって発展された一群の経済理論・政策思想集団を指す。その特徴は、「強固な事前均衡」と呼ばれる市場メカニズムへの強い信頼から、「価格理論のレンズ」を産業組織の分析に厳密に適用することである。そこで、彼らは市場の「自然淘汰」をくぐり抜けた企業こそ「適者生存」の具現であり、「ハーバード学派」が主張するような裁量的な政府介入は効率性を損なうので、原則的には自由市場経済が望ましいと考える。シカゴ学派は、集中度と利潤率の間の正相関は一時的不均衡にすぎず、あるにしても大企業の優れた効率性を反映するものであると反論した。 これらに対して、1970年代にハーバード学派でもシカゴ学派でもない産業組織論の第三の潮流である「新しい産業組織論(英: New Industrial Organization Theory)」が誕生した。伝統的産業組織論は完全競争モデルと独占モデルの域を出ない素朴な理論的枠組みを用いていたのに対して、新産業組織論は「ゲーム理論の静かな革命」の中で完成されたゲーム理論的手法を駆使することによって寡占市場をミクロ経済学的に分析することを可能にした。 非協力ゲーム理論を取り入れた新産業組織論は産業分析を飛躍的に発展させ、「産業経済学の理論的発展の黄金時代」とも称された。新産業組織論の主要な成果としてはコンテスタビリティ理論(英: Contestability Theory)と戦略的参入阻止価格理論(英: Strategic Limit-Pricing Theory)が挙げられる。
※この「産業組織論」の解説は、「ゲーム理論」の解説の一部です。
「産業組織論」を含む「ゲーム理論」の記事については、「ゲーム理論」の概要を参照ください。
産業組織論と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 産業組織論のページへのリンク