絞り加工
金属板をプレス機により変形加工すると、継ぎ目の無いくぼみを持つ製品が得られる。このくぼみを得る加工を絞り加工と呼ぶ。
深絞り加工は、たとえば、円板からコップ状の底付き円筒容器をつくる場合のように、所定の輪郭形状に剪断した平板素材を、ダイスおよびポンチとよばれるメス・オス一対の金型を用いて成形する作業である。深絞りと似た加工で、平板素材から、つばのついた帽子のように平面から曲面が張り出した形の容器を成形するのが張出し加工である。張出し加工はメス型なし、オス型のみでも可能であるが、製品曲面部の板厚は素材より薄くなり、ついには破断するので、深絞りほど深い容器の成形はできない。一般に、たとえば自動車のボディーのような複雑な曲面形の成形加工は、深絞り成形と張出し成形が複合されたプレス加工である。
へら絞り加工(spinning)は、円板素材から回転対称形の容器をつくる作業であり、ろくろ台に粘土をのせて回転しながら壺を成形するのと同じ原理の作業である。ただし、スピニング機の回転軸は通常の場合水平となっている。そして製品容器の内面形状にあわせた成形型を用い、その端面に素材円板を取り付けて回転させ、円板の外面側からロールによって圧力をかけ、素材を一部分ずつ塑性変形させ、成形型になじませていくのである。ロールではなく、へらを用いて成形することもあるので、へら絞りと呼ばれる。この加工法では、ダイスとポンチによる深絞りでは作れない、たとえば水筒のように口がすぼまった容器の製造も可能である。
適している分野・使用事例
絞り加工
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 02:57 UTC 版)
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絞り加工(しぼりかこう)とは金属工芸の一つである鍛造の中で板金の加工法で、金槌・木槌と当て金(あてがね、特殊な形状の金床)などを使い金属の板を叩いて圧縮させ、絞り込み凹状に加工し、容器形状にすることである[1]。鎚起(ついき)とも呼ばれる[2]。
伝統工芸の絞り加工では、成型品の形状に合わせ幾つもの金槌や「当て金」(鳥口[3]、からす口とも)が使われる[4]。イメージとしては陶芸でろくろの上の粘土を絞り上げるのと類似の作用を金属板に金槌と当て金を使い絞り上げ、鍋や花瓶などの3次元の形をつくる工法である。
類似した加工法に打出し加工があるが、こちらは窪んだ木臼や砂袋などを使い板を打ち出し(引き伸ばし)へこませる加工法である。 単純な比較をすると、直径30cmの板金を、「打出し加工」では直径30cmの皿や鍋に加工するのに対し、「絞り加工」では高さ15cm以上の花瓶を作る。 打出しの場合は「伸ばし」の加工であるので外周は元の板金と同じ厚さであるが内側ほど薄くなる。 絞りの場合は「圧縮」加工であるので容器の中心(底)の部分は元の板金と同じ厚さであるが、外周へ行くほど厚くなり、口の部分では数倍にもなる。
伝統工芸の絞り加工ではお椀程の大きさのものでも数千打、花瓶程であれば数万打以上と非常に多くの工数や日時を要する。
機械加工では「プレス絞り加工」や旋盤による「へら絞り加工」があり、プレス加工では絞り用のオス・メスの金型に板金を挟み込み数秒でプレス成形する。旋盤を用いた絞り加工ではオス型のみのへら絞り用金型を用い、へらで押え絞り込んていく[1]。いずれも金型製作や機械への大きな初期投資が必要になるが、手工芸の絞り職人の工数の数万分の1で安価で均一な製品の供給が可能になっている。
機械加工の「プレス絞り加工」や「へら絞り加工」では成形後に凸金型を抜き出す必要がある為、入れ子構造の割型で口の部分を胴の部分より小さくすることは可能であるが、右上の花瓶のように絞ることは難しい。(幾つかの部分に分けて成形し溶接やろう付けすることで似た形には出来る。)
脚注
関連項目
外部リンク
- 楽天 - 鎌倉清雅堂 「鎚起とは」 写真入りで工程の説明がある。
- 明日への扉_(テレビ番組)「#055 燕鎚起銅器職人 樋山 朗子」 YouTubeに工程説明の動画あり。
- Metal Recipes by Warren Townsend The Raising of Metal 英語のサイトであるが工具や手順などの分り易い図解や写真がある。
- Aurhelion An investigation of Anticlastic Forming in Sheet Metal 同上、図解あり。
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