研究・解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 05:54 UTC 版)
下敷きとなっている「人虎伝」と比較すると、李徴が虎へ変身した理由に中島の創作が大きく入っている。「人虎伝」では、李徴は寡婦との逢瀬をある一家に妨げられ、その妨げてきた一家を焼き殺した因果応報で変身したとされているのに対し、中島は変身の理由を純粋な内因性に求め、芸術家の実存の内面(芸術家の運命の悲哀や狂気)を告白的に描いている。 瀬沼茂樹は、「人虎伝」から中島独自の作品になった過程には、中島の変身譚に対する嗜好があるとし、中島が愛読していたカフカの『窖』や、ガーネットの『狐になった夫人』の影響が垣間見られるとしている。 また、李徴が語る虎へ変身した理由の告白が自己劇化された語りであるとする蓼沼正美の解釈もある、山下真史も、虎に変身した理由を語る李徴の挫折の嘆きに自己劇化が見られるとして、そうしたナルシシズムを含めリアルな人間像が描かれていると評価している。
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