目の順応(ヒト)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 22:30 UTC 版)
眼球の虹彩を収縮して瞳孔を広げ、水晶体を通る光量を増やすよう調整する作用のこと。周囲の明るさに応じて桿体細胞と錐体細胞の切り替えにより、網膜の感度が変わること。 角膜、水晶体、硝子体を通過した光は、網膜にある視細胞で化学反応を経て電気信号に変換される。視細胞には、明暗のみに反応する約1億2000万個の桿体細胞と、概ね3種とされる色彩(波長)に反応する約600万個の錐体細胞がある。光量が多い環境では主として錐体細胞の作用が卓越し、逆に光量が少ない環境では、桿体の作用が卓越する。夜間などに色の識別が困難になり明暗のみに見えるのは、反応する桿体の特性である。 桿体、錐体ともに一度化学反応をすると、再び反応可能な状態に復帰するまでにはある程度の時間が必要である。視界中の光量が急減した場合に一時的に視覚が減退するのは、明所視中において桿体細胞内のロドプシンのほとんどが分解消費してしまっており、桿体細胞が速やかな反応のできない状態になっているからである。暗い環境の中で時間が経過すると、ロドプシンが合成されて桿体細胞が再び反応できるようになり、視覚が働くようになる。明順応に対し、暗順応に時間がかかるのは、ロドプシン合成の方がロドプシン分解に比べて長い時間を要するためである。 なお、人種間で輝度や色彩の知覚に関して違いがあると言われている。桿体・錐体の反応する主波長が異なる為だとされ、これはそれぞれの人種を対象とした研究論文間の比較や、国際的に出荷される工業製品の開発現場での経験的知見である。しかしながら、人種ごとの依存性を統計的・臨床的に調査し、その内容に適切な査読と追試が行われ認められたものは存在しないとされる。
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