欧州型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 05:17 UTC 版)
欧州では、フランスやイタリアを筆頭に、2トン積み(GVW3,500 kg未満)クラスにいたるまでFFが一般的であり、フレームもはしご型ではなく、ホイールベースを非常に大きくとったプラットフォーム型とする(トラックには別途はしごフレームを設定している)など、その構造は乗用車派生のミニバンに近い。その中で、かつてのメルセデス・ベンツ T2(en:T2)には、前席にスライドドアを持つモデルがあった。 運転席や荷室の床が低く、座席は一般的な深く腰掛ける形状、フロントドアも一般的なヒンジ式で、外観もワンモーションスタイルとなっているなど、ミニバンの発展形ともいえる特徴を持つ。そのため、次で述べる集配に特化した米国型などと比べると、頻繁な乗降や荷役性でやや劣る面もある。 その一方、操縦安定性と乗り心地に優れ、自然な運転姿勢と十分な室内高を持つことから、ピープルムーバー(乗用車)やコンビ(貨客兼用車)の設定があり、救急車やミニバスとしても利用されている。 なお、近年では、車体設計を共通とする乗用・貨客兼用で運転性と後席のウオークスルーが可能な車種でも、貨物用では衝突時の乗員保護の観点から、座席と荷室の間にしっかりとした隔壁を持つようになり、前後のウオークスルーが不可能となっている。よって、欧州車の場合、「ウオークスルーバン」ではなく、「ウオークインバン」が呼称として妥当となる。車内での移動は不可能になったが、欧州の商用車の多くは荷室の床面が低いため、車外からのアクセスでの利便性低下は少ない。 過去のモデルの中で合理的な設計で特筆されるのはシトロエン・タイプHで、エンジンとトランスミッション(トランスアクスル)を前輪より前に納め、強靭ながら凹凸の無いプラットフォームフレームと、後輪にフルトレーリングアームサスペンションを用いることで、ウォークスルーと驚異的な荷室の床の低さを実現した。 また、3代目までのフォルクスワーゲン・タイプ2はリアエンジンのため、荷室後部をエンジンルームに占領されるが、運転席と荷室の床は非常に低く、かつ平らにつながっており、前席を二人掛けとしたウォークスルータイプにハイルーフを組み合わせたモデルのウォークスルー性はシトロエン・Hトラック以上である。 メルセデス・ベンツは、長らく大型のFF車を生産してこなかったことや、キャブオーバー型のマイクロバスを大型バンとしても販売していた経緯から、貨物車も、スペイン製の一部車種を除き、現在に至るまで一貫してフロントエンジンリアドライブを採用し続けている。そのため、スプリンターは、FFやRR勢に比べ、床の高さ、ボンネット長、全高がやや大きく、ロングボディー車はリアオーバーハングも長い。また、その上のクラスにはヴァリオ(en:Vario)がある。 乗用車に比べ生産台数が少ないため、各メーカーともに共同開発やバッジエンジニアリングによるOEMなどでコストの低減に努めており、プジョー・ボクサー、シトロエン・ジャンパー(en:Jumper)、フィアット・デュカートの3車をはじめ、ルノー・マスターと日産・インタースター、メルセデス・ベンツ スプリンターとダッジ・スプリンターなどが共通化されているほか、韓国の大宇もイギリスのLDV(en:LDV Group Limited))やポーランドのFSCとジョイントしている。また欧州フォードのトランジット(en:Transit)は、トルコ生産に切り替えられている。 欧州型の例 - 近年の車種では前席と荷室の行き来ができなくなったため、「ウォークインバン」として紹介する。 フランスルノー・マスター フランスシトロエン・ジャンパー イギリスLDV・マクサス(ロイヤルメール) イギリス/ドイツフォード・トランジット イタリアフィアット・デュカート ドイツメルセデス・ベンツスプリンター ドイツメルセデス・ベンツヴァリオ(デンマーク陸軍)
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