対矢倉戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 16:03 UTC 版)
相矢倉の出だしから、先手の▲6六歩や後手の△4四歩が早く、一目散に矢倉囲いを完成させて入玉する場合に有効である。特に無理矢理矢倉の場合振り飛車含みでの指し方で指す場合もあるためどうしても▲6六歩や後手の△4四歩が早くなるので、狙われることが多い。 △ なし ▲ なし第5-1a図 先手番右四間飛車の駒組みの例1 △ なし ▲ なし第5-1b図 先手番右四間飛車の駒組みの例2 第5-1a図の先手のように銀矢倉の要領で陣形を組み、相手の玉の入場をみて角道を通しているのを活かして、▲2五桂~▲4五歩、の攻撃を仕掛けるスタイルが一般的。相手は玉をすぐに囲ってしまうと、先に示した手順から潰されてしまう。 現代では無理筋、若しくはやや不利と言われる急戦矢倉が多いなか、有力な手段が多くあり、プロ棋戦でも一定の頻度で指されている。 1838年(天保九年)刊の『将棊自在』にこの矢倉崩しの定跡が載っている。同書では矢倉崩し側が後手番であるが、第5-1b図は先後を入れ替えている。復刻版の解説によると1791年(寛政三年)刊の『象戯指南車』の改題であるという。図以下は▲2五桂△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛▲7七角△8二飛▲4五歩△3七角▲3三桂成△同金寄▲4四歩とし、後手から△4八角成▲同金△2九飛▲6八玉△3九飛成▲5九金△8八歩となり、以下▲8三歩△同飛▲6一角△8五飛▲4三銀と続いて矢倉崩し側が勝勢になるまでの手順を示してある。 △ なし ▲ なし第5-1c図 後手番右四間飛車に対する駒組みの例 △ 清水 なし ▲ 矢内 なし第5-1d図 後手番での右四間飛車の速攻例 △ なし ▲ なし第5-1e図 後手番での右四間飛車の駒組例 対策としては第5-1c図先手番のように角を8八に留め▲7九玉・▲7八金・▲6七金・▲6八銀・▲5七銀型での構えが知られる。これは6筋を守りつつ飛車先を伸ばして▲3六歩から▲3五歩△同歩▲4六銀と攻めに転じる狙いがある。これに対しては後手も銀矢倉に組んで持久戦にもシフトできる。また、中川大輔考案の中川流△4二金などの居玉急戦策は有力で、いずれも力戦調の将棋になる。 矢倉に対する右四間飛車で6筋からの急戦は羽生善治や森内俊之、谷川浩司なども時たま指したことがあっても男性棋士間では2000年代には頻繁には指されていなかったが、女流棋士やアマチュア強豪にはこの戦法のスペシャリストも多い。以前から後手番でも主導権が握れる積極的戦法として、第5-1d図の後手番のように清水市代女流が得意としていた。『イメージと読みの将棋観』(2010年、日本将棋連盟)によると、平成以降から2010年までに公式棋戦で第5-1d図での出だし局面は101局あり、後手右四間飛車側の52勝49敗となっており、実際に指すとそれなりの成果があるという。2009年当時の棋士の見解によると、第5-1d図の局面ではまだ先手は矢倉かどうかはわからないが、羽生や谷川、佐藤康光や渡辺明らは先手が普通の矢倉志向ならば▲7八金とする手で1局としている。これに対して森内は▲6八銀がどうかという手であり、しかたなく▲7八金とするが、後手は△8四歩を省略できているのでこの時点で先手の得がなくなっているとしている。 藤井猛によると、矢倉にするなら▲6六歩に▲6八銀ではなく△6四歩に対応しやすい▲5八金右とするべきであるとし、第5-1e図のようになってしまったら、先手は▲5六歩△6三銀▲5七銀△5四歩▲6八飛といった▲5七銀型四間飛車で対抗するのが自然であるとしている。この構えは羽生や佐藤も有力策として挙げており、羽生はこの局面なら一番指してみたいという。右四間飛車に対する▲5七銀型四間飛車の利点は藤井によると、6筋の攻めが受けやすいほかに相腰掛け銀よりも柔軟であることや、後手右四間飛車側が持久戦にきた場合に先手が▲4六銀と進出して後手の駒組をけん制することができるとしている。 △ なし ▲ なし第5-2a図 先手番右四間飛車5七銀型の例 △ なし ▲ なし第5-2b図 先手番居角左美濃急戦の例 矢倉崩しの戦型は腰掛け銀型の他に第5-2a図のような▲5七銀(△5三銀)型の右四間飛車もあり、右四間飛車戦法で攻める。5七銀型の場合の攻め方として、連盟サイトのコラムでも紹介されている。この先手陣の形は以前から角落ちの上手が下手の矢倉戦に対して用いられていた戦型であるが、平手の場合はさらに角行が攻撃に参加している格好になる。 また2015年以降は第5-2b図のような居角左美濃が主流となっている。左美濃#居角左美濃急戦を参照。
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