多目的ダム化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/18 01:36 UTC 版)
ところが1989年(平成元年)8月、裏磐梯一体を集中豪雨が襲った。この時秋元湖を始め小野川湖・桧原湖は異常増水を来たし、流域に多大な被害を及ぼした。秋元湖はダム中央部に排水機場を設けており、余剰な湖水を放流していたが、この豪雨の際には放流機能を大きく上回る流入量を記録しており、有効な水量調節が不可能となっていた。このため水利使用規則を超える放流を余儀無くされ(参考:ただし書き操作)、大幅に増水した長瀬川が氾濫し、流域に被害をもたらす結果となった。 事態を重視した河川管理者の福島県は、裏磐梯三湖の治水対策に取り掛かった。付近一帯は磐梯朝日国立公園内にあり、自然環境の保護という観点から堤防の建設や護岸工事は不可能であった。このため桧原湖・小野川湖・秋元湖に洪水調節容量を持たせるためダムを建設して容量を確保し、併せて長瀬川の正常な流量維持を図る不特定利水と発電を目的とした多目的ダムとして、裏磐梯三湖の河川総合開発事業を1997年(平成9年)より着手した。 自然湖をダム化して治水や利水に利用するのは全国でも実施されているが、特に代表的なものとして国土交通省直轄では琵琶湖と瀬田川洗堰、霞ヶ浦と常陸川水門があり、県営事業では中禅寺湖と中禅寺ダム(栃木県)、余呉湖と余呉湖ダム(滋賀県)がある。福島県では猪苗代湖と十六橋水門でも行われている。桧原湖には高さ3.4メートルの重力式コンクリートダム、小野川湖には高さ4.9メートルのフィルダムを建設し、秋元湖は既設のアースダムに加え左岸に非常用洪水吐5門を備える重力式コンクリートダムを新設し、コンバインダムとした。このように天然の湖沼にダムや堰、水門を建設して治水や利水に利用する天然湖沼を専門的には「湖沼水位調整施設」と呼ぶ。天然湖沼ではあるものの河川関連法規的にはダムと見なされる。 何れも高さ15メートル以下であるため河川法上では堰となるが、この多目的ダム化によって秋元湖を始め裏磐梯三湖は長瀬川流域の治水と水力発電に寄与する存在となった。1999年(平成11年)に事業は完成し、従来東京電力に委託していた水位調節は湖を管理する福島県喜多方建設事務所が直接実施している。
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