吹浦の伝承とは? わかりやすく解説

吹浦の伝承

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 13:46 UTC 版)

鳥海山大物忌神社」の記事における「吹浦の伝承」の解説

吹浦の社については、元禄16年1703年)に芹沢貞運が記した大物忌小物縁起』において、景行天皇のとき出羽国に神が現れ欽明天皇25年564年) に飽海郡山上に鎮まり、大同元年806年) に吹浦村遷座したとある記述があり、現在の社伝はこの吹浦創建についての伝承踏襲しているとされる。なお、大同元年空海が唐から帰国したにあたり東北多く寺社創建の年とされているという。 『日本三代実録貞観13年871年5月16日の条にある出羽国司の報告から、飽海郡山上大物忌神社があったことが確認できるが、大物忌神社鎮座地飽海郡にある山の上とあるのみで、上記吹浦についての言及はない。 創建に関する吹浦の伝承として、他に、吹浦信徒岡の勢力対抗して宝永2年1705年)に寺社奉行所に提出した「乍恐口上書を以申上候事」という文書に、慈覚大師円仁)が開基したとの記載がある。この記載は、岡に伝わる縁起対抗する意味合い強かった思われるが、現在も吹浦には慈覚大師直筆とされる天台智顗図像と金両界曼荼羅図保管されている。 その他、吹浦の「大日本国大物忌大明神縁起」(成立年代不明)には、地元の他の伝承融合した思われる卵生神話」が記されており、「天地混沌とした中から両所大菩薩月氏霊神百済明神現れ大鳥の翼に乗って天竺から百済経て日本渡来した左翼にあった二つの卵から両所大菩薩が、右翼にあった一つの卵から丸子元祖生まれ北峰の池に沈んだ景行天皇のとき、二神出羽国現れ仲哀天皇のとき、三韓征伐功績をたてたので、正一位授かり勲一等得た用明天皇のとき、師安元6月15日に、二神飽海郡飛沢鎮まった」という。なお、丸子氏は、遊佐町丸子住み鳥海山信仰大きな影響与えた一族である可能性があるとされるその後貞観6年864年)、慈覚大師円仁)が鳥海山から五色の光が放たれているのに気づいて、登ろうとすると、青鬼赤鬼妨害したので、火生三昧の法で対抗したところ、鬼は観念して今後般恭王として大師従い仏法守護する誓ったという。そして、円融院の代(969年から984年)に朝廷から両所大菩薩命名されたという。 上記の「卵生神話」は朝鮮の「三国遺事」や「三国史記」にも記載があり、外来伝承存在したことが推測されるが、先祖とするトーテミズム的な発想は、中世成立した鳥海山」の名称と関連していて、現在も地元に伝わる霊鳥伝説ともつながり持っており、中世から近世にかけて成立した伝承である可能性が高いとされる永正7年1510年)の『羽黒山年代記』では、鳥海山は飽海嶽呼ばれていたとして、欽明天皇7年546年)に神が出現した後、貞観2年860年)に、慈覚大師円仁)が青鬼赤鬼退治した後、山の外観が龍に似ているとして、龍の頭にみえる箇所龍頭)に権現堂を建て、寺号龍頭寺りゅうとうじ)として、さらに、鳥の海因んで山号鳥海山としたとされており、卵生神話記載はないものの、上記の「大日本国大物忌大明神縁」と共通する内容となっている。なお、現在の龍頭寺大同2年807年) に慈照上人が開いたとされており、上述空海帰国の年に合わせられているほか、慈照上人の実在確認されておらず、慈覚大師円仁)の錯誤である可能性もあるが、『羽黒山年代記』の貞観2年開かれたとする記述とは年代離れている。

※この「吹浦の伝承」の解説は、「鳥海山大物忌神社」の解説の一部です。
「吹浦の伝承」を含む「鳥海山大物忌神社」の記事については、「鳥海山大物忌神社」の概要を参照ください。

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