原生地域とは? わかりやすく解説

原生地域

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/17 06:02 UTC 版)

カナダカナディアンロッキーWhite Goat Wilderness Area英語版

原生地域(げんせいちいき、: wilderness)は、地球上で、人間によって手が加えられていない自然環境である。原始地域(げんしちいき)などとも呼ばれる。

概要

原生地域として最もよく知られているのは、原生林であろう。しかしながら、原生林は原生地域の代表的な例ではあるが、森林に限らず平原湖沼などのあらゆる自然地形が原生地域に含まれうる。

コンサベーション・インターナショナル(Conservation International)による"Wilderness: Earth's Last Wild Places"という書籍では、原生地域を、本来の植生が70%以上の地域で残っており、10,000 km2以上の広さがあり、人口密度が5人/km2以下の地域と定義している。そして、この定義によれば、地球上の46%が原生地域にあたるとされる。

英語の「wilderness」は聖書におけるアラビアの砂漠地域を語源としており、ヨーロッパから北アメリカ大陸への植民と開拓において自然環境の表現に使われた。西部開拓時代にはアメリカ先住民の土地を未開拓の地として定義し、侵略を正当化する概念としてもウィルダネスが利用された。アメリカ合衆国では原生自然法英語版(1964年)が制定され、「風景に人や人工物が介在せず、大地と生命のコミュニティが人によって拘束されていない地域」と定義された[1]法律に基づいて原生地域が指定され、国立公園など保護の対象となっている。

芸術におけるウィルダネス

初期のアメリカ文学においてウィルダネスは重要な概念とされ、ネイチャーライティングなどのジャンルではウィルダネスに着目した作品がある[2]ラルフ・ウォルドー・エマーソンは著作の「自然論英語版」(1836年)や「アメリカの学者英語版」(1837年)で、アメリカ大陸の自然を独自の文芸素材だと解釈した。ジョン・ミューアはカリフォルニア州のヨセミテ渓谷を踏破して自然空間の貴重さを論じた。アルド・レオポルドは生態学的・倫理的な面からウィルダネスを解釈し、著作『野生のうたが聞こえる』(1949年)では自然環境も共同体に含まれるとする土地倫理を提唱した。エドワード・アビー英語版は『砂の楽園英語版』(1968年)において、ウィルダネスが失われたものであると共に保存すべきものであるとして両義的な性質を表現した[3]

脚注

出典

  1. ^ 小谷ほか編 2014, pp. 261–262.
  2. ^ 小谷ほか編 2014, pp. 307–308.
  3. ^ 小谷ほか編 2014, p. 262.

参考文献

  • 小谷一明, 巴山岳人, 結城正美, 豊里真弓, 喜納育 編『文学から環境を考える エコクリティシズムガイドブック』勉誠出版、2014年。 

関連項目

外部リンク


原生地域

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 17:13 UTC 版)

「自然」の記事における「原生地域」の解説

詳細は「原生地域」を参照 原生地域とは、一般に人間の手がほとんど入っていない地域を指す。The WILD Foundation はもっと具体的に「我々の惑星残された最も手付かず平穏な野生自然地域道路パイプライン他の産業基盤とも無縁で、人間制御下にない本当野生の場所」としている。原生地域は、自然保護地域原生林国立公園、川の周囲渓谷未開発地域などにある。原生地域や自然公園一部種の保護生態学的研究生息地保全といった面で重要である。一部作家は原生地域が人間精神創造性にとっても重要だ信じており、一部生態学者は原生地域がこの地球自立した自然な生態系生物圏)の重要な一部だと考えている。原生地域はまた歴史的な遺伝形質保持し動物園植物園研究室では再現困難な野生植物相動物相生息地にもなる。

※この「原生地域」の解説は、「自然」の解説の一部です。
「原生地域」を含む「自然」の記事については、「自然」の概要を参照ください。

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