原理・方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 15:41 UTC 版)
陸上基地もしくは海中の潜水艦などから発射され、ロケット噴射の加速により数百kmの高度まで上昇し、その間に速度、飛行の角度などを調整して目標地点へのコースが決められる。燃焼を終えたロケットエンジンは随時切り離され、弾頭だけが慣性により無誘導のまま飛行する。即ち、大砲の砲弾を撃つ場合に、目標を狙うために発射時の砲の仰角や発射薬量を調整して、砲弾そのものは自力で進路や速度を変えることがないのと基本的には同じで、ICBMもロケット式の超巨大な大砲と考えることもでき、「大陸間弾道弾」の名称も多く用いられる。中距離弾道ミサイル(IRBM)、準中距離弾道ミサイル(MRBM)など他の弾道ミサイル(弾道弾)も同様である。 ICBMなどは、目標への誘導は発射から燃焼終了までの、ロケットの制御が可能な短時間になされなければならない。当初の弾道ミサイルは無線誘導を行なっていたため、液体燃料の使用とあいまって(後述)即時多数発射が不可能であった。1960年代に入ってアメリカのミニットマンは慣性誘導方式を用いるようになったため、短時間に同時発射ができるようになった。 ICBMの軌道は、他の弾道ミサイル(弾道弾)と同じく、全体的に見ると地球中心を焦点の一つとする楕円軌道を描いており、超長距離を飛行するため弾道の頂点高度は1,000-1,500kmにもなる。[要出典]通常、その射程は8,000-10,000kmに達するので、命中精度の関係から全て核弾頭を搭載している。初期のICBMは単弾頭であったが、弾頭のMIRV化により、一基のミサイルに複数弾頭を搭載し、個別目標を攻撃できるようになった。 核弾頭は、当初のICBMの命中精度が劣り、平均誤差半径が大きかった(3km前後)ため、メガトン級の大威力のものが採用された。大威力の核弾頭は重く、搭載するロケットも大型にしなければならないなど問題が多かった。その後、アメリカを先頭に急速に改良が進み、平均誤差半径は0.1km程度に改良され、核弾頭も小型軽量化されている。MIRVの実現も、一つにはそうした小型軽量化の成果であると言える。大威力単弾頭より小型複数弾頭を用いた方が、破壊効率がよいため、弾頭核出力もキロトン程度に抑えられてきている。 ロケットエンジンの推進剤には液体燃料方式と固体燃料方式の2種類がある。弾道ミサイルの先駆けとなったドイツのV2ロケットが液体燃料を使用していたこともあり、初期のICBMも液体燃料方式であった。これは、出力の調整ができる上に大きな力が出せる長所があるため、現在でも宇宙ロケットはほとんどこの方式である。一方で、構造が複雑で機体も大型になりやすい。特に液体酸素や液体水素を酸化剤・燃料に用いる方式は、燃料をミサイルに充填したまま保管ができず、発射直前に充填する必要があるため、即時性が低かった。そのため1960年代にアメリカでは固体燃料方式のICBMが実用化された。固体燃料方式は出力の調整ができず大きな力が出せない欠点はあるが、構造が簡単で小型かつ安価であり、安全性も高く、即時発射が可能であるので、アメリカではこれが主流を占めた。一方、ソ連では液体燃料方式を改良し、ミサイル内に燃料を入れたままミサイルサイロ内で保管できる貯蔵式液体燃料のICBMを多数配備した。
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