保存性
保存性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 19:34 UTC 版)
フィルムが作るのは一次画像であり、これは撮影レンズを通った情報を含んでいる。オルソクロマチックのように特定の周波数領域に限られた感度またはパンクロマチックの幅広い感度といった違いはあっても、色(波長)によって対象をとらえる点は同様である。現像方法の違いにより最終的なネガやポジに差は出るが、現像が終われば画像はほとんど変化しない。理想的な状態で処理・保存されたフィルムは実質的に100年以上変わらず性能を発揮する。プラチナの化合物によって発色するプリントは基本的にベースの寿命に制限されるのみであり、数百年ほどは持つ。高い保存性を欲するならば調色が必須であるという因襲があった。調色されたプリントの保存性は高い。しかし現在では、調色せずとも保存性を高める薬品が販売されている。 2007年時点で、コンピュータを中心としたデジタル媒体が登場してから50年程しか経っていないため、デジタル写真の保存性はフィルムほどには分かっていない。しかし保存に関して乗り越えなければならない点が少なくとも3つ存在する。記録媒体の物理的耐久性、記録媒体の将来的な可読性、保存に使ったファイルフォーマットの将来的な可読性である。 多くのデジタル媒体は長期的にデータを保管する能力はほぼない。たとえば、多くのフラッシュメモリは10年から数十年でデータを失うし、一般的な光ディスクは長いものでも100年程度である(例外あり)。MOなどの光磁気ディスクは保存性の高い記録媒体であるが、将来的な可読性という面で劣る。近年はGoogle フォトなどのクラウドストレージなどで管理する方法もある。 さらに、記録媒体が長期間データを保持できたとしても、デジタル技術のライフスパンは短いため、メディアを読み取るドライブがなくなることがある。たとえば5.25インチフロッピーディスクは1976年に初めて発売されたものであるが、それを読めるドライブは、30年も経たない1990年代後半にはすでに珍品となっていた。後継の3.5インチフロッピーディスクも、2012年現在、ドライブを装備するパソコンは少ない。Zipは1994年の発売開始後数年で売れ行きが落ち、2007年時点ではメディア・ドライブとも入手困難になっている。 データをデコードできるソフトウェアの存続も関係する。たとえば現代のデジタルカメラの多くは画像をJPEGフォーマットで保存するが、このフォーマットは1990年代初頭に登場した(国際標準化機構(ISO)・国際電気標準会議(IEC)で規格化されたのが1994年)ものである。現在、膨大な数のJPEG画像が生み出されているが、遠い未来においてもJPEGフォーマットを読むことができるかという問題がある。また、複数が並立し、互換性に乏しいRAWフォーマットの将来も不確定である。これらのフォーマットの一部は暗号化されたデータまたは特許で保護された専用データが含まれているが、突然メーカーがフォーマットを放棄する可能性がある。メーカーがRAWフォーマットの情報を開示しないならば、この状況は今後も続く。 デジタル写真におけるこれらのデメリットにも対策がうてる。たとえば、ビットマップ形式、JPG形式、PNG形式など、汎用性の高いファイルフォーマットを選ぶことによって、ソフトウェアがそのファイルを読解できる将来の可能性が増す。また、将来読めなくなるかサポートされなくなる可能性がある記録媒体にデータを保存していたものを、品質を低下させることなく新しいメディアにコピーすることが可能である。このことはデジタルメディアの大きな特徴の一つである。
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