バラの祝福
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最古のバラは祝福を与えられていなかった。それよりもむしろ、祝福は儀式をより厳粛なものにし受取人の大きな威厳を引きだすために導入された。ペトラ枢機卿の記録 (Comment. in Constit. Apostolicas, III, 2, col. 1) によると、インノケンティウス4世が最初に祝福を与えたとされる。これには他の主張もあり、インノケンティウス3世、アレクサンデル3世、レオ9世などが始まりだったとの説もある。別の説では、1951年にレオ9世がフランケンのバンベルクの女子修道院に恩恵を施したもので、祝福されるように黄金のバラを与え、毎年のバラの主日に運ばせた、とテオフィル・レイノーは主張した (De rosa mediana a pontifice consecrata, IV, 413)。また、ベネディクトゥス14世は祝福の儀式は14世紀または15世紀の始め頃にはじまったものと宣言しているし、カタラヌス(英語版)は初期のバラたちにはムスクとバルサムが塗られていたが、祈祷者による香や聖水を伴う祝福はもっと古くからのもので、ユリウス2世が教皇を務めていた時期よりも以前のいつかだろうと考えていた。 現在は、教皇が毎年バラを祝福するが、いつも新しい別のバラを用意するわけではなく、古いバラは授与されるまでそのまま使い続けられる。 元々は(アヴィニョン捕囚以前は)、教皇がいた宮殿の(広いホールのような)聖具室で祝福されていたが、厳粛なミサとバラの寄贈ではサンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ聖堂(この聖堂はインノケンティウス3世に天のエルサレムとも称された)が使われた。祝福に続いて、厳粛なミサ曲が歌われる。これはどちらも教皇自身、もしくは首席の司祭枢機卿によって行われる。前者の場合、バラは豪華な金の刺繍の入ったバラ色の絹のヴェールの中に置かれ、後者の場合、跪くときまたは、入祭、回心の祈り、聖体奉挙のときと、『主を讃えよ』を歌うとき、教皇の手に抱えられる。手の中のバラと教皇はラテラノ宮殿へと祈りながら列を組んで戻り、ローマ長官は手綱を持って教皇の馬を導き、下馬を補助する。到着次第、教皇はこれらの行為の報酬と敬意の証としてバラを長官に渡す。1305年より前、バラは皇帝の戴冠式を除いてローマ外の人物には与えられていなかったが、アヴィニョンに仮の居を定めていた間(1305年 - 1375年)はローマの教会や聖堂を訪れることは出来なかったため、自らの宮殿にある彼らの教会堂で、バラの祝福を含む多くの宗教的な儀式が行われた(これがアカペラの起源である)。この慣習はローマに帰還した後にも続けられることとなった(シクストゥス5世は除く)。 現在のバラの祝福は、教皇の礼拝所(英語版)の聖具室 (camera dei parimenti) で厳粛なミサと共に行われる。バラは灯されたろうそくと共にテーブルに置かれ、アルバとバラ色のストラにカッパ、美しく尊いミトラを被った教皇が、定型の唱和の短句と韻文の祈りとともに典礼を始める。この祈りの中でもバラを信仰の証とし、イザヤ書(11:1)を引用している。 "O God! by Whose word and power all things have been created, by Whose will all things are directed, ...(中略)... as the fruit of good works, may unite in giving forth the perfume of the ointment of that flower sprung from the root of Jesse and which is the mystical flower of the field and lily of the valleys, and remain happy without end in eternal glory together with all the saints." —Golden Rose - New Advent,the Catholic Encyclopedia 祈りが終わると、教皇は(助祭枢機卿に手渡される)お香を振り香炉に入れ、バルサム、次にムスクの順で焚く。その後、バルサムと粉末状のムスクを重要なバラの中心(に作られている)の小さなカップに注ぐ。次に、バラを焚いて振り、煙を撒き散らす。これは聖水と共に行われる。その後、バラは部屋付きのもっとも若い聖職者に渡されて、教皇の前から教会堂へと運ばれ、教会堂の十字架の下に置かれた祭壇の、豊かに刺繍されたシルクのベールの上に置かれる。首席司祭枢機卿によるミサ曲が歌われる間はその場所に置かれたままであり、ミサが終わった後、バラは行列により教皇の下から聖具室に運ばれ(それに相応しい)立派な人々に授けられるまで専用の場所で慎重に保管される。
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